子どもの「嘘」や「汚い言葉」成長のサインと親の向き合い方

保育園や幼稚園に子どもを預けている方もいらっしゃる方も多いと思います。子どもを預けている間、ふと不安に思うことは何でしょうか。
「子どもが、家庭で教えたこともないような汚い、強い言葉を使い出した」という悩みは結構あるみたいです。
また、幼稚園や保育園とは関係ないですが、最近「嘘や、ごまかしを言うようになった」という声をよく聞きます。棚に置いておいたお菓子がない。子どもに尋ねると明らかに口元や手が汚れているのに食べていない。知らないと言う。ごまかす。今まで素直で、何でも言うことを聞いてくれていた子どもが自分の知らないところで変わってきた。
一体子どもは保育園で何をして、どんな子たちと付き合っているんだと、自分がいないところでの人間関係や、子どもの変化に不安になったこともあるかと思います。
しかし、嘘やごまかし、汚い言葉の使用は子どもの成長の証であり、とてもうれしい反面もあるのです。また、親と子の関係を深めるチャンスでもあります。
今日は子ども嘘やごまかし、汚い言葉の使用への考え方、対処をお伝えします。
嘘や汚い言葉は悪いことだけじゃない
心理学者ティモシー・ジェイ氏(MCLA・マサチューセッツカレッジオブリベラルアーツ)は、「汚い言葉を一切使わない子にしようと思わないでください。そんな目論見は必ず失敗します」と述べています。
ただ、学者の言葉や研究うんぬんの前に、そもそも皆さんは「汚い」「強い」言葉をどこで覚えたのでしょうか。皆さんは汚い言葉の意味を知っているはずです。使うべきではないことも知っています。
また、皆さんは嘘を本当についていないですか。友人が食事に誘ってくれた。でも招待してくれたお店の料理は美味しくなかった。申し訳なさそうにしている友人に「本当にまずかったね」と正直に言いますか。何かいいところを見つけたり、あるいは「そんなに悪くなかったよ」と何とかごまかすはずです。
汚い言葉を使うことは語彙の積み重ねの一つとも言えますし、嘘は相手のことを考えての思いやりにもつながります。
重要なのは、嘘や汚い言葉を使用したことに悲観的になるのではなく、使用してはいけない言葉、使ってはいけない嘘をしっかり教えていくことです。
嘘の3つの種類
嘘といってもいろいろあります。心理学・発達心理学・社会心理学の分野でよく下記の3つに分類しています。https://en.wikipedia.org/wiki/Child_lying? (下記の嘘を詳しく書いたwikipepediaの記事です。)
※ちなみに日本語訳にしたら「横たわる子ども」。lyingを正しく訳せていません。おそらく「嘘をつく子ども」と訳すべきなのでしょう。全然関係のない話ですが、中学生の子たちにlie(嘘をつく・自動詞) lie – lied – lied – lying。 lie(横になる・自動詞) lie – lay – lain – lying。 lay(〜を置く、横たえる・他動詞) lay – laid – laid – layingを何度も説明した記憶がよみがえりました。
・「防御の嘘」
自分を守るためにつく嘘です。罰や恥から逃れるために多くの子どもが使います。2歳くらいから始まり、小学校低学年に非常に多い嘘です。
・「利己的な嘘」
自分の利益を得るための嘘。金銭・評価・賞賛などを狙う場合に使います。「私はお年玉に10万円もらった」と自慢する友達に「私は30万もらった」と嘘を言う子どもを想像してみてください。「背伸びの嘘」とも言われます。5歳以降に表れる場合が多いようです。
・「白い嘘」
他人を傷つけないため、または相手を思いやってつく嘘のことです。
私は子どもの頃、祖母からクリスマスプレゼントとしてお菓子の詰め合わせをもらったことがあります。しかし私はゲームのソフトなどもう少し高価なものを期待していたため、内心がっかりしていました。けれど、その気持ちを祖母の前で見せることはなく「ありがとう。うれしい」と伝えました。8歳くらいでしたが、私はこの「白い嘘」をつきました。
実は嘘をつくことはすごく技術がいります。計画力、作業記憶、相手につじつまが合うように架空の設定を作り上げる能力などが必要になります。
白い嘘に関しては、つまらないという姿を見せたら、おばあちゃんが悲しむかもしれないという思いやり、共感力さえ駆使しています(人間性はせこいですが)。つまり嘘をつくことは子どもの認知能力の発達の表れなんです。
すぐに否定するのではなく、まずはこの嘘を冷静に受け止めましょう。
※共感力の重要性はこちらの記事でもお伝えしています。こちらも参考にしてください。https://lycopo.com/「共感性」を養う幼児教育%e3%80%80「思いやりのある子/
子どもの嘘にどう向き合うか
自分自身がお手本になる
子どもは大人が嘘をつく姿を見ると、嘘をつきやすくなること実証されています。しかし、子どもの前で全く嘘をつかないのは不可能です。話の長くなってしまうママ友に対して、急いでいないけど、急いでいまして、ということはありうることと思います。
子どもには「白い嘘(相手を気遣う嘘)はいいけど、利己的な嘘はいけない」としっかり伝えていきましょう。
利己的な嘘は、例えばビュッフェや交通料金などで、子どもの年齢をごまかす行為などが当たります。。子どもの前で当たり前のようにごまかすと、やはり子どもは嘘をつくことの抵抗をなくしてしまいます。
正直であることの重要性を伝える
例えば子どもが遊んでいてソファーを破いてしまうとしましょう。そして、ソファーを破いたことを問い詰めても知らないと嘘をついたとします。
この一連の行為を「おかした過ち」と「嘘をついたこと」を二つに分けて考えます。つまり「ソファーを破いたこと」と「嘘をついたこと」両方の問題を個別に対処します。
もし正直にソファーを破ったことを伝えていたら、破いたことはしっかり叱っても、一方で正直に話した部分はしっかりほめてあげます。正直に話すことのメリットをしっかり伝えれば、嘘をつくことのデメリットと、正直であることのメリットを学びます。
モントリオール大学の研究によれば、罰を与えて嘘を防ぐのではなく、道徳的理由で正直であることを促すことが効果的である、という洞察が得られます。こちらも参考にしてください。https://time.com/3628783/lying-punishment-kids-lie-more-study/?utm_source=chatgpt.com
汚い言葉への対応
1. まずは大人が律する
親自身が不用意に強い言葉を使っていないか、振り返りましょう。
2. 冷静に受け止める
子どもが面白がって汚い言葉を使う場合、大人が騒ぎ立てると逆効果。強く反応すると、大人の気が引けると学習するからです。反応が薄いほうが抑制につながります。
3. ルールを決める
やみくもに汚い言葉や強い言葉を禁止するのは、実ははあまりよくありません。
皆さんも怒りの感情を抱いたときに、強い言葉を使用することはあるかもしれません。絶対禁止にしてしまったら、怒りの感情の行きどころがなくなってしまい、子どもが負の感情を抱えたままになってしうことがあります。感情の表し方や処理の仕方もしっかり教えなければなりません。
使用してもいい場所(例えば自分の部屋で、周りに誰もいなければいいけど、幼稚園では使ってはいけない)や、その言葉を使うと嫌な気持ちになる人がいることをしっかり伝えなければなりません。
また、差別的な言葉などいかなる場合でも使ってはいけない言葉があることも教えましょう。
まとめると
・園や公共の場では使ってはいけないこと。使う場所をしっかり決める
・差別的な言葉は決して許されないこと
・怒りの感情は健全に表現できる別の方法があること
ルールの設定をしっかり行いましょう。
まとめ
子どもが嘘をついたり、汚い言葉を口にするのは成長の一過程です。
重要なのは「頭ごなしに禁止すること」ではなく、親子で言葉の意味や嘘の種類を理解し、正しく向き合っていくことです。