子どもの自己肯定感を育てるために大切なこと

~失敗と挑戦が「本当の自信」をつくる~
「自己肯定感」の重要性が昨今よく提唱されています。確かに、自己肯定感は子どもの幸福度や学力、さらには将来の収入にも関わると研究で示され、一方で自己肯定感の低い10代の子どもは、うつ発症率、飲酒率、犯罪率が高いのも事実です。
しかし、自己肯定感が高ければ、必ず人間性や学習面で必ずいい影響を及ぼすというわけではありません。自己肯定感も育て方次第では逆効果を生むものもあります。
自己肯定感は“ただ褒めれば育つもの”ではなく、挑戦や失敗を通して「自分でできた」という経験を積むことで根づいていきます。
本記事では、自己肯定感とは何か、その育み方、そして注意すべき落とし穴について、最新の研究や幼児教育の現場の視点から解説します。
自己肯定感とは
自己肯定感とは「自分自身に対する自信・自己評価。自尊心とほぼ同義」と定義づけられます。前述したとおり、劇的な効果はないものの、やはり重要で、健全な自己肯定感を持つと心の病のリスクは減るとされています。
- 自己肯定感が高い子ども:新しいことに挑戦し、失敗しても立ち直りが早い
- 自己肯定感が低い子ども:自分に自信がなく、人と比べて落ち込みやすい
自己肯定感は「心の免疫力」ともいえます。
日本の子どもは自己肯定感が低い
内閣府の「子ども・若者白書」(2022年)によると、中学2年生を対象に「自分に満足しているか」を尋ねた国際比較調査では、
- 日本の子ども: 45.8%
- アメリカ: 86.0%
- 韓国: 71.5%
- 中国: 83.8%
と、日本は主要国の中で最も低い水準でした。https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d0d674d3-bf0a-4552-847c-e9af2c596d4e/3b48b9f7/20240620_policies_kodomo-research_02.pdf(22枚目あたりです)
日本は例えばOECD生徒の学習到達度調査(PISA)では学力は非常に高い水準にあるのに、一方で自己評価が低いという特徴が浮かび上がっています。
なぜ日本の子どもは自己肯定感が低いのか
いくつかの要因が指摘されています。
- 他人と比較する教育スタイル(テストの順位、偏差値など)
- 間違いに対する寛容度が低い
- 「ほめる文化」が少なく、結果を求める価値観が強い
これらが、子どもの「自分を認める力」を弱めている可能性があります。
今回は「間違いに対する寛容度が低い」と「ほめる文化が少なく、結果を求める価値観が強い」この2点に注目して「よい自己肯定感を育む方法」を考えてみたいと思います。
自己肯定感とうぬぼれ
まずは自己肯定感とうぬぼれはしっかり区別しなければなりません。私が思うに、
・よい自己肯定感は今の自分自身を素直に認められる度量があり、能力が不足している自己を含めて認め、愛することだと思います。
・うぬぼれとは自分は他人より優れていると考え、やたらと自分が優れていることを周囲に証明しようとすることではないでしょうか。
これは子どもの世界だけではなく、大人の世界でもよく見られます。
「よい自己肯定感」をもつ子どもは、自分の能力不足を認められるから成長していきます。自分が成長して伸びていける自信があるから、今の能力力不足の自分を受け入れることができます。
一方、単にうぬぼれている人は自分の能力不足を受け入れられません。受け入れられないから、能力はあると勘違いし成長にもつながりません。
アムステルダム大学で自己肯定感の研究を行う心理学者エディー・ブルメン氏はうぬぼれの強い子は問題行動を起こす傾向があり、優越感を得るため、いじめの加害者になりやすく、他人から拒否されたり、批判されたりすると、怒りや攻撃性を表す傾向があるとしています。

プレッシャーが自己肯定感を下げ、うぬぼれを生む
何が分けてまうのでしょうか。本人資質もあるかもしれません。しかし、ここは教育に目を向けます。
「プレッシャーは子どもの自己肯定感に悪影響を及ぼす」ということがあります。
専門家によると、親が成果ばかりを重視すると、子どもは自分の本質や価値は、成果によって決まると考えるようになるそうです。
例えば、子どもの失敗や悪い結果に対してあからさまにがっかりした反応をしたり、怒ったりする姿を見せることは、子どもはいい結果を残さなければと強いプレッシャーを感じてしまいます。
「常に良い成績を出し、他人より優秀であれ」というプレッシャーは、自己肯定感を育てるのではなく、心の不調を生み出します。
自己肯定感を育む褒め方
褒めることは大切ですが、内容を工夫する必要があります。
良い褒め方の例
- 行動を褒める:「最後まで頑張ったね」「工夫したね」
- 過程を褒める:「挑戦できたことがすごいよ」
避けたい褒め方
- 結果だけを褒める:「100点で偉いね」「頭がいいね」
- 他人と比較する:「〇〇ちゃんより上手」
- 過剰にほめる ※過剰に、大げさにほめる行為は良い結果を出し続けろというプレッシャーとして捉えらるようで、自己肯定感を下げ、難しい課題への挑戦を避けるようになるそうです。
ほめ方にかんしては以前の記事でも触れています。参考にしてください。
https://lycopo.com/子どもを伸ばす正しい「ほめ方」―才能ではなく/
https://lycopo.com/「子どもの努力をほめる」その一言が未来を変え/
挑戦と失敗は最高の教材
失敗体験は重要です。実際に失敗し、失敗しても大丈夫だと感じる経験をすることが「よい自己肯定感」を育てます。
私が小学生の頃、ローラーブレードがはやったことがあります。私は父に誕生日プレゼントを買ってもらうことになりました。私はおもちゃ屋までの道程で「何がほしい?」と聞く父に「ローラーブレードが欲しい」と答えました。「そんな危ないものを買わない」と父は怒り、足を止めました。
今でもよく覚えいている思い出で、私はそれ以来父に「〇〇に挑戦したい」といったことは話さなくなりました。「挑戦しても否定される」「面倒くさい。無駄」といった感情がまず湧くようになりました。
もちろん、実際に危険の伴うおもちゃだと思います。
しかし「どこで遊ぶか」「歩行者がたくさんいるところでは使用しない」といったルールを話し合ったうえで、挑戦を肯定してほしかったと思います。
子どもの能力を過小評価して、試練や困難から子どもを遠ざけると「あなたは能力がなく、信頼に値しない」というメッセージになってしまいます。
試練の乗り越え方を一緒に考え、失敗を恐れない環境を作ってあげることが大事です。
難しい課題を克服すると、自分の能力に自信を持ちます。こうした経験はよい自己肯定感を育てるのに不可欠です。
まとめ 保護者ができるサポート
最後に、家庭でできる自己肯定感を高めるサポートをまとめます。
- 結果より過程を褒める
- 挑戦を危険視するのではなく、肯定的に捉える
- 失敗を恐れない環境をつくる
- 「できた」という実感を積ませる
こうした日々の積み重ねが、子どもの未来を大きく変えていきます。
参考資料『子育ての新常識』メリンダ・ウェナー・モイヤー