「イヤイヤ期」の乗り越え方 ― 心を育てる親の関わりと対処法 ―

昨日に続き、イヤイヤ期についてです。本日はイヤイヤ期の対処方法や、子どもとも向かい合い方を書きます。
※前回(前半)の記事です。「イヤイヤ期」はなぜ起こるの?―心の発達に欠かせない大切な時期―
昨日までできていたことが突然「イヤ!」になり、何を言っても泣き叫ぶ。食事もお風呂も着替えもスムーズにいかず、親の方が「イヤイヤ期」に疲れてしまうこともあります。しかし、この時期の子どもの“反抗”には、心の成長の芽がたくさん隠れています。今回は、発達心理学に基づいた「イヤイヤ期」の理解と、家庭で実践できる対応法をお伝えします。
イヤイヤ期のおさらい ― 「反抗」ではなく「成長のプロセス」
イヤイヤ期は、1歳半から3歳頃に多く見られる「自我の芽生え」の時期です。
「自分でやりたい」「自分の思いを通したい」という気持ちが強まり、
それをまだ言葉で表現できないために、「イヤ!」という拒否の形で出てきます。
第1回でも触れたように、この時期の子どもは脳の前頭前野が発達し始め、
「自分」と「他者」を区別し始める大切な段階にいます。
つまり、イヤイヤ期は「自分を発見している時期」なのです。
親にとってはストレスの多い時期ですが、
子どもにとっては“心の筋トレ期間”であり、自立の第一歩でもあります。
発達心理学からひもとく「イヤイヤ期」の役割(hugkum)
小学館のサイトです。イヤイヤ期を発達心理学の視点で整理してくれています。

イヤイヤ期の具体的な対処法
(1)「選択肢」を与えて自己決定を促す
子どもは「命令される」よりも「自分で選ぶ」ことで落ち着く傾向があります。
たとえば――
- 「靴は青と赤、どっちにする?」
- 「スプーンとフォーク、どっちで食べたい?」
このように、“自分で決めた”という感覚を与えることで、
「イヤ!」のエネルギーが「やってみたい!」へと変わります。
教育心理学ではこれを「自己決定理論」と呼び、
「自分で選ぶ」経験がモチベーションと自律性を高めるとされています。
(2)気持ちを「言葉」で代弁してあげる
イヤイヤの裏には、必ず感情のサインがあります。
「イヤ」と言えたのは、“気持ちを表現する力”の芽生え。
そんな時こそ、親が代わりに言葉にしてあげましょう。
例:
- 「おもちゃを取られて悲しかったんだね」
- 「自分でやりたかったんだよね」
こうして気持ちを“翻訳”してもらうことで、
子どもは「自分の感情を認めてもらえた」と感じ、安心します。
これは心理学的にいう情動のメタ認知を育てるプロセスであり、
非認知能力(共感性・自己理解)の発達にもつながります。
(3)感情が高ぶっている時は“言葉より環境”で落ち着かせる
大人でも、感情が高ぶっている時に諭されると余計に反発したくなります。
子どもも同じです。
まずは一緒に深呼吸をしたり、抱きしめて静かな環境に移動したりして、
「安心できる場」をつくりましょう。
落ち着いた状態でしか、学びも対話も成立しません。
心理学ではこれを「安全基地」と呼び、
アタッチメント理論でも最重要視されています。
※アタッチメントに関する記事です。参考にしてください。
教育におけるアタッチメントとは? 大切にしたい心の安全基地
(4)「できた!」体験を小さく積み重ねる
イヤイヤ期の子どもは「自分でやりたい」気持ちが強い反面、
「うまくできない」ことで挫折を感じやすくもあります。
そんな時は、「途中まで手伝って成功させる」工夫が効果的です。
たとえば:
- ボタンを半分留めて、残りを子どもに任せる
- 食器を一緒に片づける
- 「ここまでできたね!」と具体的に褒める
これはヴィゴツキーの最近接発達領域(ZPD)の考え方にも通じます。
「ちょっと背伸びすれば届く課題」を、親が適度に支援することで、
子どもは成功体験を積み、次の挑戦意欲が生まれます。
ヴィゴツキーの記事です。こちらも参考してください。
【個別教育の力】「最近接領域」に働きかけるベビーシッターの強み
発達心理学に基づくイヤイヤ期の理解と関わり方
エリクソンの「自律性 vs 恥・疑惑」
エリクソンはこの時期を「自律性を育む段階」と位置づけました。
「自分でできた!」という経験を多く積むことで、
子どもは自信と自立心を得ます。
逆に「どうせできない」「怒られる」と感じる体験が続くと、
「自分はダメだ」という“恥と疑惑”が心に根付きやすくなります。
つまり、親が「待つ」「見守る」「手伝いすぎない」姿勢を取ることが、
長期的には子どもの心の安定を育てる鍵なのです。
※エリクソンについての説明です。
エリクソンの発達段階理論と発達心理学、幼児教育との関係
(2)ピアジェの「前操作期」における自己中心性
2〜4歳頃の子どもは、まだ他者の立場を理解することが難しい「自己中心的思考」の段階です。
そのため、「ママが忙しい」「今はダメ」という社会的視点を理解できません。
この時期に大切なのは、
**「わがままではなく、理解できる力がまだ育っていない」**という視点を持つこと。
その上で、「こういう時はこうするんだね」と具体的な行動を見せて学ばせていくことが、教育的に有効です。
※ピアジェの前操作期についての記事です。
ピアジェの発達段階理論「前操作期」:言葉と想像力が花開く時期とは
親の心構え ― 「叱る」よりも「認める」
イヤイヤ期の対応で最も大切なのは、親の感情の安定です。
子どもは親の表情や声色に非常に敏感。
「怒られた」よりも「ママが怖い顔をしてる」という感覚の方が心に残ります。
心構えのポイント
- “嵐”は長く続かないと知る
イヤイヤ期は成長過程の一部であり、やがて必ず落ち着きます。 - 完璧を目指さない
毎回冷静でいようとするのは無理です。感情をリセットできれば十分。 - 「イヤイヤ」も成長の証と捉える
反抗=挑戦意欲の裏返しです。成長のエネルギーとして受け止めましょう。
親が笑顔でいられることが、何よりの教育です。
子どもは「正論」ではなく「安心」から学びます。
イヤイヤ期は、子どもの「自立への第一歩」。反抗や泣きは“成長のサイン”であり、正しいサポートによって豊かな心が育ちます。親が「困った」ではなく「育っている」と視点を変えることで、親子関係はより深く、あたたかく変化していきます。
リコポのサポート ― 365日、心の伴走者として
リコポでは、お子さまを持つご家庭に対して、
月会員様には365日いつでもLINE・メールで相談できるサポート体制を整えています。
「朝から泣いてばかり」「叱りすぎてしまった」「どう接すればいいかわからない」――
そんな日常の小さな不安に、教育心理学を学んだスタッフが寄り添い、家庭での関わり方や遊びを通した心の成長支援を行っています。☆なるべく早い返事を心がけます。
私たちの役割は、「子どもを変えること」ではなく、「親と子が共に成長していく環境」を整えることを目指します。
イヤイヤ期という嵐の中で、リコポは親の心の“安全基地”でありたいと考えています。
Q&A(まとめ)
Q1. 子どもの「イヤイヤ」が続いて、親が疲れてしまいます。どうしたらいいですか?
A. 親の心を休ませることも“しつけ”の一部です。
イヤイヤ期は長期戦です。親が我慢大会のように頑張り続けると、子どもも不安を感じ取ります。
疲れた時は一度深呼吸をして、「今日はこのくらいでいい」と自分を許してあげましょう。
また、第三者に相談するのも大切です。
リコポではLINEやメールで365日いつでも相談が可能。
「少し話を聞いてほしい」という時でも、教育心理学を学んだスタッフが丁寧にお話を伺います。
Q2. 「泣いたらすぐ抱っこ」してもいい?甘やかしになりませんか?
A. 甘やかしではなく“安心を与えること”です。
感情が爆発している時、子どもは「ママの愛情が離れないか」を無意識に確かめています。
この時に抱きしめることで、脳内のストレスホルモンが減り、安心感が戻ります。
落ち着いた後で「どうしたかったの?」と気持ちを言葉にしてあげると、
感情を言葉で表す力が育ちます。
安心→理解→言葉化という順序を意識するのがコツです。
Q3. イヤイヤ期を通して、どんな力が育つのですか?
A. 「自分をコントロールする力」と「自信」です。
イヤイヤ期は、自立への第一歩。
自分の意志を持ち、それをコントロールする練習をしている時期です。
この経験が、将来の「我慢する力」「挑戦する力」「やり抜く力(GRIT)」の基礎になります。
親が「今この子は成長している」と視点を変えることで、
反抗期を「育ちのチャンス」に変えることができます。