【子どもの記憶の土台】学習に不可欠なワーキングメモリ
「覚えたはずなのにすぐ忘れちゃう」「話を聞いても途中で内容が抜けてしまう」──
そんな子どもの様子に、心配を覚えたことはありませんか?
実は、これらの背後には“ワーキングメモリ(作動記憶)”という見えない力が関係しています。
ワーキングメモリは、学習・会話・思考のすべてを支える「脳の作業机」のような存在です。
本記事では、このワーキングメモリの仕組みや発達の時期、幼児教育で育てる方法までを分かりやすく解説します。
記憶には3つの種類がある:感覚記憶・短期記憶・長期記憶
記憶は大きく「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3つに分けられます。
- 感覚記憶:目や耳などで感じた情報を、一瞬だけ保持する記憶。たとえば、聞いた言葉の響きや、見た映像の残像がこれにあたります。保持時間は1秒未満ほど。
- 短期記憶:感覚記憶から選ばれた情報を、数秒〜十数秒ほど保つ記憶。電話番号を一時的に覚えるなどが代表例です。
- 長期記憶:繰り返しや理解によって、長期間保持される記憶。語彙、知識、経験などがここに蓄えられます。
この中で、「短期記憶」と「長期記憶」をつなぐ架け橋がワーキングメモリです。
ワーキングメモリとは? 〜「脳の作業机」〜
ワーキングメモリ(作動記憶)とは、「一時的に情報を保持しながら、同時に処理を行う」能力です。
たとえば、
- 「2+3=?」を頭の中で考えるとき
- 読み聞かせを聞きながら内容を理解する
- 先生の指示を聞いて次の行動を判断する
──こうした“考えながら覚える”行為を支えているのがワーキングメモリです。
イギリスの心理学者アラン・バデリーが提唱したモデルでは、
- 音韻ループ(言葉の保持)
- 視空間スケッチパッド(見た情報の保持)
- 中央実行系(情報の整理・操作)
の3つから構成されています。
つまりワーキングメモリは、「聞く・見る・考える・判断する」という認知活動の中心的役割を担っています。
アラン・バデリーについて(Wikipedia)。
学習とワーキングメモリの関係
ワーキングメモリは、学習の基盤能力です。
なぜなら、学習は「情報を覚え、保持し、使う」過程の連続だからです。
例:算数の文章題
「りんごを3個持っています。さらに2個もらいました。全部で何個になりましたか?」
──この文章を理解するためには、
- 文を聞く(感覚記憶)
- 数字を保持する(ワーキングメモリ)
- 計算する(処理)
という一連のステップを同時進行で行う必要があります。
もしワーキングメモリが弱いと、途中で「3個」「2個」という情報が抜け落ち、計算にたどり着けません。
つまり、「聞いて理解する力」「問題文を読む集中力」「思考の持続」など、学習の土台が崩れてしまうのです。
ワーキングメモリが育つ時期
研究によると、ワーキングメモリの基礎は3〜6歳頃に急速に発達し、小学校中学年ごろにかけて伸びていきます。
この時期に「記憶を使った遊び」や「聞いて考える体験」を多く積むことが、後の学習能力に大きな影響を与えます。
たとえば、
- しりとり:言葉を覚え、ルールに従ってつなげる
- 間違い探し:視覚的ワーキングメモリを刺激
- 指示ゲーム(例:「赤いブロックを2個取って右に置こう」):聞いた内容を保持し、行動に移す
こうした遊びの中に、実は“記憶を使いながら考える”訓練が詰まっています。
発達障害とワーキングメモリの関係
発達障害(特にADHDやLDなど)のある子どもは、ワーキングメモリの容量が少ない場合があります。
つまり、「覚える」「処理する」「切り替える」といった認知操作が苦手で、
- 話を最後まで聞けない
- 作業の手順を忘れる
- 書き写しに時間がかかる
といった行動が見られることがあります。
しかし、これは“能力の低さ”ではなく、“情報処理の方法が異なる”だけです。
そのため、支援の仕方を工夫することで、大きく力を伸ばすことができます。
具体的な支援の工夫
- 一度に出す指示は短く、具体的にする
- 視覚的なサポート(絵・写真・チェックリスト)を併用する
- 「できたこと」を小さくても言葉でフィードバックする
これにより、脳内の「処理と記憶の負担」を減らし、安心して学びに集中できる環境をつくれます。
ちなみに私もワーキングメモリに対してはあまり自信がありません。つねにメモし、スケジュールを書き写し、上にあげている「作業の手順を忘れる」などの弱点を何とか補っています。メモは手放せません(しっかり生活はできています!)。
幼児教育とワーキングメモリ:家庭でできる育て方
幼児期の教育では、「覚えさせる」よりも「考えながら行動させる」ことが大切です。
ワーキングメモリを育てるためには、以下のような家庭での関わりが効果的です。
(1)会話で「思い出す」練習をする
「さっき読んだお話、どんなお話だった?」
「昨日の公園で何して遊んだ?」
──過去の出来事を言葉にすることで、記憶を呼び起こし、整理する力が養われます。
(2)ルールのある遊びを取り入れる
すごろく、カードゲーム、しりとりなどは、順番やルールを覚えて実行する必要があり、
自然とワーキングメモリを使う練習になります。
(3)マルチステップ指示を意識する
「お皿を片付けて、そのあとハンカチを持ってきてね」
──このように複数の指示を少しずつ増やしていくことで、“聞いて覚えて行動する”力が育ちます。
ワーキングメモリは、学習の「隠れた主役」です。
覚える力、考える力、集中する力──そのすべての基盤をつくるこの能力は、幼児期にこそ豊かに育てたいもの。
リコポ幼児教育の視点から:見えない「記憶の力」を育てるサポート
リコポ幼児教育では、単に“知識を教える”のではなく、思考を支えるワーキングメモリを鍛える遊びと関わりを重視しています。
お子さま一人ひとりの発達段階を見極め、
- どの程度の指示を理解できるか
- 聴覚記憶と視覚記憶のどちらが得意か
- 注意の持続がどれくらい続くか
を観察しながら、遊びを通じた認知発達支援を行います。
保護者の方にも、お子さまの「記憶・集中・思考の発達」を見える形でフィードバックし、
家庭でも無理なく続けられるアプローチをご提案しています。
☆専門アドバイザーの鈴木は国公立大学で、発達教育を研究していたので、この方面に関してもよいアドバイスや教育プランを提示できます。
幼児教育重視のベビーシッター 子育て・教育相談も重視します
リコポ幼児教育の頼れる教育アドバイザー アトム先生をご紹介

パパママからよくある質問3つ
Q1. ワーキングメモリを鍛えるおもちゃはありますか?
A. ブロック遊び、カード記憶ゲーム、パズルなどが効果的です。重要なのは「考えながら覚える」こと。たとえば「次に何を置くか考えてみよう」と声をかけると、記憶と思考を同時に使う練習になります。子どもの資質によっても違いますので、ぜひ相談してください。
Q2. 忘れっぽいのは性格ですか?
A. いいえ、性格ではなく“発達の途中”です。3〜6歳はワーキングメモリが大きく成長する時期。焦らず、少しずつ記憶を使う経験を積ませましょう。
Q3. ワーキングメモリが弱い子どもは勉強が苦手になりますか?
A. 早期に「聞く→考える→行動する」の経験を重ねれば問題ありません。苦手意識を持たせず、成功体験を積むことが何よりのサポートになります。
☆リコポ幼児教育では、子どもの「考える力」を支える記憶の発達を重視しています。
遊びや日常の中で伸ばせるワーキングメモリ支援を、教育プランに盛り込み保護者様と一緒に考えま す。会員様には365日いつでも子育て相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。