【幼児期から育てる論理的思考力】“考える力”の伸ばし方
ものごとを論理的に考えることは、数学や国語などの学習にも欠かせませんが、大人になったからもとても重要です。大人になっても、ロジカルに考え、説明する必要があるからです。
この商品はいい、私がいいと思っているから・使用したらよかったと個人的主観を訴えても、他人には伝わりません。なぜよいのか、なぜそのような想いにいたったのか、これを相手に伝わるように言語化しなければ相手につたわりません。良いプレゼンを行うにも重要な能力です。この「論理力」は子どもの頃からの教育で育てていく必要があります。
「このコップのほうが水が多い!」
同じ量の水を、形の違うコップに移しただけなのに、そう言って自信満々に答える子どもがいます。
これは、心理学者ピアジェの有名な「保存課題」で見られる典型的な反応です。
子どもはまだ“見かけ”に大きく影響される段階にあるのです。
けれど、ある時期を境に、子どもはこう言い始めます。
「同じ量だよ。だって移しただけだもん。」
──この変化こそが、「論理的に考える力」の芽生えです。
ピアジェの発達理論の中の「具体的操作期」という時期がありますが、この前の「前操作期」を含めて、論理力を構成するのに、これらの時期とても大事な時期です。
幼児がどのようにして“筋道を立てて考える”ようになるのか、そして親がどう支えられるのかを詳しく解説します。
論理的に考えることの重要さ
論理的思考とは、感情や印象に流されず、原因と結果を筋道立てて考える力のことです。
これは学力だけでなく、人生のさまざまな場面で必要とされます。
たとえば──
- 「友達が怒ったのは、ぼくが先におもちゃを取ったからだ」と原因を考える。
- 「雨だから公園に行けない。じゃあお家で工作をしよう」と代替案を思いつく。
このように、論理的に考えられる子は感情のコントロールが上手で、社会性も高くなります。
つまり、論理的思考は「生きる力」と言い換えても過言ではありません。
ピアジェの具体的操作期のおさらい──前操作期からの飛躍
発達心理学者ジャン・ピアジェは、子どもの思考を以下の4段階に分類しました。
| 発達段階 | 年齢の目安 | 思考の特徴 |
|---|---|---|
| 感覚運動期 | 0〜2歳 | 五感と身体の動きで世界を理解する |
| 前操作期 | 2〜6歳 | 言葉や想像力が発達するが、思考は自己中心的 |
| 具体的操作期 | 7〜11歳 | 見かけに惑わされず、論理的に考えられる |
| 形式的操作期 | 12歳以降 | 抽象的・仮説的な思考が可能になる |
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
子どもは“小さな科学者” ピアジェの発達段階理論と幼児教育の関係
前操作期の特徴──直感で動く「感覚の世界」
前操作期(2〜6歳)の子どもは、言葉やイメージを使えるようになりますが、まだ思考は直感的で主観的です。
「自己中心性」が強く、「自分が見えているもの=相手も見えている」と考えます。
また、「中心化」と呼ばれる傾向があり、状況の一部にしか注意を向けられません。
たとえば、コップの形が変わると「量も変わった」と判断してしまうのです。
このような感覚的な世界での思考は、まだ論理的ではありませんが、思考の基礎を育む準備段階でもあります。
前操作期についてはこちらをどうぞ!
ピアジェの発達段階理論「前操作期」:言葉と想像力が花開く時期とは

具体的操作期への移行──“見かけ”から“構造”へ
やがて7歳前後になると、子どもの思考は大きく変化します。
前操作期では「見た目」を重視していたのに対し、具体的操作期では頭の中で物事を操作し、関係性を理解することができるようになります。
「形が変わっても中身は同じ」
「広げても数は変わらない」
──こうした“保存の概念”を理解できるようになるのです。
この変化は、単に知識が増えたというよりも、思考そのものの構造が進化したことを意味します。
ピアジェはこの時期を、「感覚に頼らず、論理で理解する力が芽生える時期」と呼びました。
具体的操作期はこちらの方を!
ピアジェの理論「具体的操作期」に見られる子どもの成長と幼児教育
具体的操作期と保存概念
具体的操作期の代表的な特徴が「保存概念」です。
これは、「形や見た目が変わっても、中身の量や性質は変わらない」と理解する力を指します。
例として次のような課題があります。
- 水を広い皿から細長いコップに移しても「量は同じ」と理解できる。
- 粘土を丸めても伸ばしても「重さは変わらない」と説明できる。
- 同じ数のビーズを広げても「数は変わらない」と気づく。
この「保存の理解」ができるようになると、子どもは“目に見える情報”よりも、“論理的関係”を優先して判断できるようになります。
つまり、ここで初めて「論理的思考の芽」が本格的に開花するのです。
ピアジェの保存課題──思考の進化を測る鏡
ピアジェは「保存課題」を通して、子どもがどの段階の思考にあるかを観察しました。
- 液体の保存課題
同じ量の水を2つのコップに入れ、片方を細長いコップに移す。
→ 幼児期は「細い方が多い」と答えるが、具体的操作期では「同じ」と答える。 - 数の保存課題
同じ数のビーズを広げる。
→ 幼児期は「広がってる方が多い」と思うが、具体的操作期では「数は同じ」と理解。 - 質量・体積の保存課題
粘土を丸めたり伸ばしたりしても、「重さは同じ」と理解できる。
これらの課題を通して、子どもが“見かけ”から“論理”へと移行する瞬間を確認できます。
身体化された行動は子供の認知能力を向上させるピアジェの保全課題に基づく研究からの証拠(PMC)
ー子どもが実際に保存課題(液量・数・質量など)を体験したときの認知理解について、実証研究として示された論文です。
見かけに騙される幼児と、騙されない幼児
前操作期の子どもは、視覚的な印象に強く影響を受け、「見たまま」を信じます。
一方で、具体的操作期に入ると、**心の中で操作する力**が働き始めます。
つまり、「もし元に戻したら?」と仮定を立て、結果を頭の中でシミュレーションできるのです。
これは、論理的思考の本質であり、のちの“仮説思考”の土台になります。
幼児教育と論理的に考えること
幼児教育では、「教え込む」よりも「考える体験を積む」ことが重要です。
次のような遊びが論理的思考の基礎を育てます。
- 積み木遊び:高さ・バランス・因果関係を理解する。
- ごっこ遊び:他者の立場を想像し、因果関係を再現する。
- 分類や比較遊び:「大きい」「少ない」などの概念整理。
- パズル・順番ゲーム:筋道を立てて物事を考える。
リコポ幼児教育でも、こうした「思考の筋トレ」を意識した遊びや対話を大切にしています。
シッティング中には「どうしてそう思うの?」「もし○○だったら?」といった問いかけを通して、考える喜びを育てています。
親ができるサポート
家庭でも、論理的思考を促す関わり方はたくさんあります。
①「なぜ?」「どうして?」を一緒に考える
子どもの質問に「そうだね」で終わらせず、原因や理由を一緒に探します。
②見かけに騙されない遊びをする
水をコップに移したり、積み木の形を変えたりして、観察と比較を促すと理解が深まります。
③日常会話で比較・分類を使う
「今日は昨日より寒いね」「りんごとバナナ、どっちが重い?」などの会話が、自然な論理訓練になります。
④感情も“論理的に整理”する
「どうして悲しかったの?」と感情を言葉にして整理することも、立派な論理的思考の練習です。
今日のおさらいQ&A3問
Q1. 論理的思考は何歳から育つの?
7歳前後の具体的操作期から本格的に発達しますが、基礎は前操作期の体験から育ちます。
Q2. 家でできる論理的思考の遊びは?
積み木、パズル、料理、比較ごっこなど、順序立てて考える活動が効果的です。
Q3. 感情的な子は論理的思考が苦手?
感情豊かなことは長所です。感情を言葉で整理することで、思考の構造が整っていきます。
☆リコポ幼児教育では、子どもの成長に寄り添うために
会員様には365日いつでも子育て相談を受け付けています。日常的なことから、こいった教育論的なことまでどんな相談にも対応いたします。ご家庭に合った解決策を一緒に考えましょう。