ほめられるのはつらいこと?自己肯定感と幼児教育の重要さ

ほめられるのはつらい
皆さんはほめられることは好きですか?嫌いですと答える人は少ないかもしれません。
ではこの一言を付け加えた場合はいかがですか。皆さんは「人前で」ほめられることは好きですか?
小学校の時はうれしかったかもしれません。しかし、中高校生の時はどうだったでしょうか。学校イベントの片づけを一人黙々と行い、後日ホームルーム中に指名され皆の前で先生から褒められる。大学の講義中にレポートが素晴らしかったと言って皆の前でほめられる。ましてや「みなさん、頑張った彼女に拍手を送りましょう」と言われた日には、無理やり作った笑顔もさらにゆがむことでしょう。その光景を想像しただけで、顔を覆いたくなる方もいるかもしれません。
私自身もどちらかというとほめらることが得意ではありませんが、現在の若者は特にひどくその気持ちを感じるそうです。大学の教授に人前で当てられること、ましてや褒められる。「やめてくれ・・・」と,後で大学側にクレームを入れるくらいに嫌みたいです。
謙虚ともとれる性格ですが、実はかなり大きな問題点も含んでいます。
本日は人前で褒められたくない気持ちの背景と問題点、そしてそれに対する幼児教育との関連性をお伝えしたます。
中学生時代の嫌な思い出
私は中学生の時、英語がかなりうまかったと思っています。しかも、ただテストの成績がよいのではなく、英語の発音が格別によく、英語の教科書の本文はほぼ丸暗記していました。今でも「平家物語」のように思い出して暗唱することもできます。
これは私が帰国子女というわけではなく、才能があったからでもなく、英語が好きでいつも勉強していたからでもありません。
私が中学校入学とともに始めた英語塾が相当厳しかったことが理由です。高齢の元中学校教師の先生が3人ほどの少数の生徒に対して授業を行うという塾に通っていました。そこは先生が発音を一人ひとり厳しくチェックし、毎回教科書を暗唱させ、発音、暗唱などできていないと厳しく叱るという非常にスパルタな塾でした。英語塾は毎週嫌で仕方なく、行く前に恐怖で緊張して、直前まで体調が悪くならないか祈っていました。ただ、その先生の名誉ためにいっておくと、授業中は厳しい先生でしたが、授業が終わると、あるいは街中で出会うととても気がよい先生で、強情で恥ずかしがりやなところはありましたが、子どものことをよく想っている先生でした。
その先生のおかげで、英語のテストの成績は悪くなかったのですが(内申点は私の問題でとても悪かったです)、問題は学校の授業での「発音」でした。英語の授業中にあてられると、私はいわゆる外国人が話すような発音で、大きな抑揚をつけて、教科書を読んでいました。私の出身地はど田舎で、周りに帰国子女など考えられない場所です。完全に浮きます。「本当にあなたはうまいねー。ねぇ、みんな」と、英語教師もとどめを刺しにきます。授業後、私の英語の発音の仕方を真似する子もいれば、冷めた感じで指摘する子もいます。結局、私はクラスメイトと同じようないわゆる日本語的英語になり、中高と皆と変わらない英語の発音で過ごすこととなりました。
これを聞くと「日本の田舎の同調圧力って・・・」と思う方もいるかもしれません。確かに、その問題もあると思います。しかし、私はこの空間が悪いというか、少なくともこの空間に責任があると思っていません。この圧力に屈して、発音を安易な方向に向けるという判断をしたのは私自身です。その圧力を意に介さず、英語を勉強し続けていれば、もっと英語に自信をもち、それを強力な武器として、ひとつとびぬけた存在になっていたかもしれません。その圧力に屈してしまった自分に100%の責任があります。
話がずれましたが、今回はこの同調に屈する、言い換えると「皆と同じでありたい願望」について考えます。
まず、みなの前で褒められるのがいや、みな(身の回りの社会)と乖離してしまうのがいや、というのはどんな心理状態なのでしょうか。
人前でほめられたくない・同調してしまう心理の原因
学生の間で(日本で)同調が働きやすいことに関して、人間のモチベーションについて研究をしている金沢大学の金間大介先生によると2つの心理状態が関係しているとのことです。
1つ目は自己肯定感が低く、いわゆる能力面において基本的に自分はだめだと思っているという点です。その心理状態のまま人前でほめられることは、ダメな自分に対する大きなプレッシャーにつながり、ほめられることはそのまま自分への「圧」につながるということです。「ほめ」=「圧」になっているという図式です。
2つ目はほめられた直後に、それを聞いた他人の中の自分像が変化したり、自分という存在の印象が強くなったりするのをものすごく怖がる、という心理もあるとのことです。
これは以前私がほめをお伝えした記事にもつながります。「能力をほめるほめ方」は子どもが大人が抱いているイメージを壊したくないとプレッシャーに感じ、成績をよくみせるために点数をごまかしたりするようになるとお伝えしました。その心理と似ているのかもしれません。
https://lycopo.com/子どもを伸ばす正しい「ほめ方」―才能ではなく/
つまり、自分の成長する芽を摘んでまで同調してしまう背景には、自己肯定感の低さが一つの原因になっているようです。
自己肯定感が低い日本の子ども
「自己肯定感が低い」日本は世界と比べてもこの傾向はかなり強いみたいです。下記のデータを見ると「自分はダメな人間だと思うことがある」は80%以上と、圧倒的に高い。やはり日本の子どもたちの自信のなさがうかがえます。
他国と比べても、自分はダメな人間で、価値がなく、今の自分が好きではない。「自信がなく、臆病」という傾向が強く出ています。

国立青少年教育振興機構「高校生の留学に関する意識調査報告書」https://koueki.net/user/niye/110358330-2.pdf
「同調すること」の問題点
自己肯定感が低く、同調してしまうことの問題点は何でしょうか。同調は「同調圧力」など悪い言葉ととして使われがちですが、もちろんいいこともあります。皆さんは震災の時「日本人はパニックにならず、列を守り、落ちついている」という外国の報道を見たことがあるかもしれませんし、実際にそう感じた方もいるかもしれません。これは「周りに迷惑をかけたくない、変な目で見られたくない」という気持ちが働くからだと考えられます。これがまさに他と同じでありたいという「同調」の心理だと思います。この心理は日本の治安のよさにもつながります。日本の治安が良いことは誇るべきことですし、治安のよさは仕事でも、事業を行うでも、遊びでも大きなメリットに繋がります。
ただ、いいこともあれば悪いこともあります。それは挑戦する心を失わせてしまうことと、人より頑張ろうという競争意識、成功しようという想いをなくしてしまうことです。そう、私の英語のようにです。
そして、その挑戦心、向上心をなくしてしまうことは、外で通用する人材、企業の欲しがる人材とギャップを生んでしまいます。
※今の若い人は安定志向で、向上心がないと批判するつもりはありません。そもそも子どもや学生がそういう思考に育ったのは、100%大人の責任です。
企業が求める人材とのギャップ
皆さんは子どもに少しでも収入のよい企業、あるいは安定した企業に勤めてほしいと思うかもしれません。今、日本で安定している企を想像してみてください。例えばトヨタ、財閥系の商社などでしょうか。そして、そんな大企業が求めている力は、伝えたことをしっかり守り、無難に過ごしてもらうものではありません。
下記のグラフによると、企業が学生に求める資質・能力は、文系理系ともに断トツで「主体性」です。次いで「実行力」「課題設定・解決能力」です。学生が望む安定的、波風を立てない、皆と同じことをするという考えとは真逆にある能力です。日本の学生が抱えてしまっている心理的要因と企業のほしがる人材は大きなギャップを抱えていることになります。
そもそもみなさまが頭に浮かべる安定している企業、高収入や手厚い福利厚生が期待できる企業は、世界のマーケットを相手にしています。安定している企業とは、世界で戦える人材を欲している企業です。
さらに、高収入を得られるゴールドマンサックスやグーグルなど外資系、自分で事業を起こして成功したい、Youtuberで食べていきたいでも、主体性と実行力、そして、それらの力を生み出すよい「自己肯定感」は必須の能力です。

日本経済団体連合会「高等教育に関するアンケート結果(2018)https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/029_kekka.pdf
幼児教育で「よい」自己肯定感を育てよう
子どもの成長において「自己肯定感」を育てることは非常に重要です。自己肯定感とは「自分には価値がある」と思える感覚で、挑戦する意欲や人間関係の土台になります。本日のブログにも記したようにこれは大人になってからの重要な能力にもつながります。
(※詳しくはこちらの記事をごらんください。自己肯定感について詳細に説明しています。https://lycopo.com/子どもの自己肯定感を育てるために大切なこと/)
小さな成功体験を積み重ねること、そしてほめ方一つを意識するだけでも子どもの自己肯定感は積み重なってゆきます。「やればできる」という自信が芽生え、努力する大切さ、挑戦することの大切さも学んんでゆきます。幼児期からの丁寧な関わりが、子どもの未来を大きく左右するのです。
※子どもに努力する大切さを伝えるほめ方をお伝えしています。参考にしてみてください。
https://lycopo.com/子どもを伸ばす正しい「ほめ方」―才能ではなく/
https://lycopo.com/「子どもの努力をほめる」その一言が未来を変え/
参考資料『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』金間大介
※とても面白い本でした。興味のある方は参考にしてみてください。