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エリクソンの発達段階理論と発達心理学、幼児教育との関係

エリクソンの発達段階理論と発達心理学、幼児教育との関係

「この時期に、何をどう教えればいいんだろう?」という問いに対して、今まで発達教育や、社会教育の観点からお伝えしてきましたが、今回は発達心理学の観点からお伝えします。「心の成長のためには幼児期には何を意識すればよいのか」ということです。実は人間の「心の成長」に根本的なプロセスがあります。
今日ピックアップするのは心理学者エリク・エリクソンです。彼は人の一生を8つの段階に分け、それぞれに心の課題(心理社会的危機)があると唱えました。

この理論は、現代の「発達心理学」や「幼児教育」の基礎にもなっており、子どもへの関わり方を深く理解するヒントになります。
この記事では、エリクソンの発達段階理論をわかりやすく解説し、そこから見える幼児期に育てたい力と家庭でできる関わり方を考えます。


発達心理学とは?

まずは、土台となる「発達心理学」についてです。
発達心理学とは「人間が、生涯を通じてどのように心・知能・人格を発達させていくか」を科学的に研究する学問です。

乳児から高齢期まで、

  • 感情の発達
  • 言語や思考の発達
  • 社会性や道徳の発達
    などを追いながら、「なぜこの時期にこの行動をとるのか?」を明らかにしていきます。

フロイトやピアジェ、ヴィゴツキー、そしてエリクソンなど、多くの理論家がこの分野で重要な理論を提唱しました。特にエリクソンは、「発達は一生続くもの」であり、社会との関わりの中で人格が形づくられると考えた点で画期的でした。

  • フロイト:内面の衝動に注目
  • ピアジェ:知的発達の構造を重視
  • ヴィゴツキー:社会的関わりを通じた発達
  • エリクソン:生涯にわたる人格形成と社会的課題

今日はエリクソンに焦点を当てます。

ちなみにヴィゴツキーに関してはこちらを参考にしてください。彼の最近接領域の考えも幼児教育にとても重要です。
【個別教育の力】「最近接領域」に働きかけるベビーシッターの強み

最近接領域の画像

エリクソンの発達段階理論とは

エリクソンは、人間の一生を8つの発達段階に分け、それぞれの時期に「心理社会的危機」と呼ばれる葛藤があるとしました。
この危機をうまく乗り越えると、その人の中に新しい力(徳)が生まれると考えました。

段階年齢発達課題(心理社会的危機)得られる力(徳)主なテーマ
① 乳児期0〜1歳基本的信頼 vs 不信希望(Hope)「世界は安全だ」と感じる
② 幼児前期1〜3歳自律性 vs 恥・疑惑意志(Will)「自分でできた」という自信
③ 幼児後期3〜6歳主導性 vs 罪悪感目的(Purpose)「自分で考えて行動する力」
④ 児童期6〜12歳勤勉性 vs 劣等感有能感(Competence)努力の価値を知る
⑤ 青年期12〜18歳同一性 vs 役割混乱忠誠(Fidelity)「自分は何者か」を模索
⑥ 成人期前期18〜40歳親密性 vs 孤立愛(Love)他者と深く結びつく力
⑦ 壮年期40〜65歳生産性 vs 停滞世話(Care)次世代を支える責任感
⑧ 老年期65歳〜死統合 vs 絶望英知(Wisdom)自らの人生を受け入れる力

幼児期のハイライト:人生の“心の基礎工事期”

上記のリストから分かるように、0〜6歳までの「乳児期」「幼児期前期」「幼児期後期」は、人間の心の基礎工事の時期です。それではこの基礎工事に関して周囲はどのように関わるのかご説明します。

① 乳児期(0〜1歳)

課題:基本的信頼 vs 不信
母親や保育者の温かい関わりを通して「この世界は安心できる」と感じることが大切です。
この時期に信頼感が育つと、将来の人間関係の土台ができます。
→抱っこ・スキンシップ・一貫した対応が鍵。


② 幼児前期(1〜3歳)

課題:自律性 vs 恥・疑惑
「自分でやってみたい!」という気持ちが強くなる時期。
大人が急いで手を出すと、「自分にはできない」という疑念が生まれます。
→ 失敗しても責めず、「やってみよう」「できたね」と認めることが自立心を育てます。


③ 幼児後期(3〜6歳)

課題:主導性 vs 罪悪感
想像力と探究心が広がる時期。
「してはいけない」より「してみよう」という環境が、創造性を育てます。
→遊びの中で自分でルールを作ったり、役割を演じたりする経験が大切です。


幼児教育とのつながり

エリクソンの理論は、現代の幼児教育の核にある「非認知能力」や「ZPD(最近接発達領域)」の考え方とも密接につながっています。

幼児教育で育てたい力は「知識」よりも「心の力」

  • 自分を信じる力(自己効力感)
  • 他者を信頼する力
  • 失敗を恐れず挑戦する力
  • 想像し、考え、行動する力

これらはすべて、エリクソンが説いた希望・意志・目的の育成に対応しています。
エリクソンの発達段階理論は、子どもの行動を「良い・悪い」で判断するのではなく、
「その時期に必要な心の成長のプロセス」として理解する視点を与えてくれます。

※共感性いついての記事です。参考にしてください。
「共感性」を養う幼児教育 「思いやりのある子ども」は幸福度が高い


親と教育者ができる関わり方

1. 「安心の土台」をつくる

  • スキンシップや共感的な声かけ
  • 否定ではなく受け入れる対応
  • 「泣いても大丈夫」「失敗しても大丈夫」と伝える

→ これが基本的信頼の形成につながります。


2. 「自分でできた!」を尊重する

  • 靴を履く、片づける、手伝うなどを任せる
  • 「まだ無理」ではなく「やってみよう」
  • 結果よりプロセス(挑戦)を褒める

→ 自律性を育てるカギです。


3. 「自分で考えたい!」を支える

  • ままごと・ごっこ遊び・ルールのある遊び
  • 「どうしたらうまくいくと思う?」と問いかける
  • 叱るときも人格を否定せず、行動に焦点を当てる

→ 主導性を伸ばし、思考力と責任感を養います。


エリクソン理論から見た「教育の目的」

エリクソンはこう語ります。

“The more you know yourself, the more patience you have for what you see in others.”
(自分をよく知るほど、他者に対して寛容になれる。)

幼児教育の目的とは、知識を詰め込むことではなく、「自分を知る力」を育てることとなります。
信頼 → 自律 → 主導性という3つの心の柱が、後の人生の「生きる力」となります。

※エリクソンの理論は医療の世界でも学ばれています。
看護師の用語辞典「エリクソンの漸成的発達理論」
 → 各発達段階の特徴を簡潔にまとめており、医療/福祉・教育領域でも参照される記事です


英語ですが分かりやすくまとめてくれています。日本語訳にしてご覧ください。
エリック・エリクソンの心理社会的発達段階


Q&A(まとめ)

Q1. 幼児期に「信頼感」を育てるには、家庭でどんな関わりが大切ですか?

A.エリクソンが最初に挙げた発達課題は「基本的信頼 vs 不信」です。
乳児期〜幼児期にかけて、子どもが「自分は愛されている」「困っても助けてもらえる」と感じられることが、人格形成の土台になります。
抱っこ・共感・スキンシップ・日々の声かけ——こうした日常の積み重ねが、「世界は安全だ」「自分は大切な存在だ」という感覚につながります。親の落ち着いた対応が、子どもの“心の安全基地”をつくります。

Q2. 「自律性」と「わがまま」はどう違うのですか?

A.よく混同されますが、「自律性」は自分で考えて行動しようとする力、一方「わがまま」は他者の気持ちを考えずに欲求を通そうとする行動です。エリクソンが言う「自律性」は、決して自由奔放ではなく、“自分で決める責任”を学ぶ段階を言います。親が「ダメ!」と抑えすぎると「恥・疑惑」の感情が強まり、逆に何でも許すと他者を尊重する力が育ちません。理想は、「自分でやってみることを応援しつつ、社会的なルールを少しずつ伝える」ことです。少し難しいですが、とにかく決めつけと一方的である判断はしないようにということです。

Q3. エリクソンの理論を、家庭教育にどう生かせますか?

A.
家庭での教育は、“小さな体験”を通して発達課題を支援する場です。
たとえば

  • 信頼を育む:共感的に話を聴く、一貫した態度を保つ。
  • 自律を支える:自分で選ばせる、「やってみよう」と促す。
  • 主導性を伸ばす:遊びやお手伝いで、子どもが役割をもてる場をつくる。

大人の安心したまなざしこそ、子どもの発達を最も力強く後押しします

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