ジョンとメアリー課題でわかる!二次の心の理論と子どもの成長

昨日の「サリー・アン課題」では、子どもが他人の心を読む力=一次の心の理論を身につけていく姿を見ました。
しかし、人間の社会はもっと複雑です。
人は他人の考えだけでなく、「他人が他人をどう思っているか」まで理解して行動することがあります。
昨日はサリーとアンの課題でしたが、本日はジョンとメアリーが登場します。
以下のような状況で、質問者は皆さんに問いかけます。
「ジョンは、メアリーがアイスクリーム屋さんに行ったと思っている。でも、実はメアリーは図書館にいる。」
さて、ジョンはどこにメアリーがいると思うでしょう?
そして、メアリーはジョンがどこにいると思っていると考えるでしょう?
詳細なものは下記に記します。
こうした“入れ子構造の心の理解”を問うのが、「二次の心の理論」です。
今回はこの「ジョンとメアリーのアイスクリーム屋課題」をもとに、子どもの発達と心の成長を解説します。
サリー・アン課題のおさらい──「他人の心を読む」最初の一歩
まずは前提となる「サリー・アン課題」から振り返りましょう。
サリーはカゴにおはじきを入れて部屋を出ます。
その間にアンが、おはじきをカゴから箱に移してしまいました。
サリーが戻ってきたとき、子どもに「サリーはおはじきをどこにあると思う?」と尋ねる実験です。
結果の違い
- 3歳児:「箱の中!」(現実だけを見て判断)
- 4歳児以降:「カゴの中!」(サリーの立場を想像)
この課題で正答できるようになると、他人の信念が自分と異なることを理解できる=一次の心の理論を獲得したとされます。
※詳しくはこちらをご覧ください。
サリー・アン課題でわかる「他人の心を読む力」子どもの“心の理論”

ジョンとメアリーのアイスクリーム屋課題とは?
この課題は、1988年に心理学者ペルナーとウィマーによって提案されたもので、サリー・アン課題の“発展版”といえるものです。
登場人物はジョンとメアリー。子どもの「二次の心の理論」を測定するために作られました。
ストーリーの概要
- ジョンとメアリーは一緒にアイスクリームを買いに行く計画を立てます。
- ふたりは「公園のアイスクリーム屋さん」で会う約束をします。
- しかし、途中でメアリーが情報を聞きます。
> 「アイスクリーム屋さんは図書館の前に移動したんだって!」
メアリーはその情報を聞いて図書館へ向かいます。 - 一方ジョンはメアリーが新しい場所を知っていることを知りません。
- そこで質問です。
> 「ジョンは、メアリーがどこにアイスクリームを買いに行ったと思っているでしょう?」
子どもたちの一般的な答えと発達段階
正直、大人でも読み返さなければならないほど、そもそも読解自体が少し難しい問いですが、子どもの心理にとってもこの質問はかなり複雑です。
なぜなら、子どもは「ジョンがメアリーの心をどう考えているか」を理解しなければならないからです。
一般的な回答傾向
- 5歳以下の子ども:「図書館!」
→ 現実を基準に判断しており、“入れ子構造の思考”ができない。 - 6〜7歳頃の子ども:「公園!」
→ ジョンはメアリーがまだ古い情報を信じていると思っていると理解。
この「他人が他人をどう思っているか」を理解する力が、二次の心の理論です。
アイスクリーム課題とは?心の理論と二次的誤信念課題(Senwisdoms)
二次の心の理論としてアイスクリーム課題の説明・課題内容・解説を日本語で丁寧にまとめてくれています。
ジョンとメアリー課題からわかること──社会的推論の複雑化
この課題が示すのは、子どもが単に「他人の立場に立つ」だけでなく、複数の視点を同時に保持して推論する能力が育つことです。
つまりこういう力です
- 「AさんはBさんがこう考えていると思っている」と推測できる
- 状況によって他人の誤解を予測できる
- 嘘・秘密・冗談・皮肉などの社会的文脈を理解する力につながる
この段階に達することで、子どもは人との関係性をより深く読み取り、思いやり・協調性・説得力などの社会的スキルを発揮できるようになります。
二次の心の理論とは?──“他人の中の他人の心”を理解する力
一次の心の理論が「サリーはおはじきがカゴにあると思っている」と理解するレベルだとすれば、
二次の心の理論は、
「アンは、サリーが“カゴだと思っている”と知っている」
というように、他人の認知(心)を他人の中で想像する力を意味します。
この力が発達すると
- 相手の考えを予測しながら話せる
- 嘘や秘密を理解・使い分けられる
- 皮肉やジョークを理解できる
- 複雑な人間関係の調整ができる
つまり「社会的知性」の根幹をなすスキルなのです。
理論の段階 | 内容 | 典型的な課題 | 発達時期 |
---|---|---|---|
一次の心の理論 | 他人の信念を理解する | サリー・アン課題 | 約4歳前後 |
二次の心の理論 | 他人が他人をどう思っているかを理解する | ジョンとメアリーのアイスクリーム屋課題 | 約6〜7歳 |
幼児教育と二次の心の理論──「考える力」と「感じる力」の両立
二次の心の理論は、学習の中でも“共感的思考”の発達に直結します。
幼児教育においては、次のようなアプローチが効果的です。
1. 物語の多視点化
絵本や物語を読むときに、
「Aちゃんはこう思ったけど、Bちゃんはどう思ったかな?」
と問いかけることで、複数の視点を意識する習慣を育てます。
2. ごっこ遊びでの社会的ロールプレイ
店員さん・お客さん・先生・友達など、役割を変えて遊ぶことで、
子どもは自然と他者の思考や感情を推測する練習をします。
3. 感情と言葉をつなぐ声かけ
「○○くんは怒ってたけど、悲しかったのかもしれないね」と、
行動の裏にある気持ちを言語化してあげることで、
他人の心を“感じる力”が養われます。
親の心の持ちよう──「考える心」を信じて待つ
二次の心の理論は、早ければ6歳前後から芽生えますが、発達のスピードには大きな個人差があります。
焦る必要はありません。
親ができることは、
- 子どもの思考を急かさない
- 感情や考えを言葉にできる時間を大切にする
- 「あなたはどう思う?」と尋ねる習慣を持つ
この3つだけでも、子どもの内面の推論力は確実に育ちます。
そして何よりも大切なのは、「心を理解してもらえる体験」を親自身が与えることです。
理解される経験があってこそ、人は他者の心を理解しようとするのです。
“他人の心の中にある他人の心”を理解する――
それは単なる知的成長ではなく、「人と共に生きる知恵」の芽です。
リコポ幼児教育では、こうした思いやりと推論力を同時に育てる保育を、遊びや会話を通して実践しています。
Q&A(まとめ)
Q1. 二次の心の理論とは何ですか?
二次の心の理論とは、「他人が他人をどう思っているか」まで理解できる力のことです。
たとえば「ジョンは、メアリーがアイスクリーム屋に行ったと思っている」といったように、心の中に“入れ子構造の思考”を持つ力です。
この力は6〜7歳ごろに発達し、人間関係の理解・思いやり・嘘や皮肉の理解などにつながります。
Q2. ジョンとメアリーのアイスクリーム屋課題では何が分かるのですか?
この課題では、子どもが「他人の中の他人の心」をどの程度理解できるかを調べます。
5歳前後の子どもは「現実(図書館)」を答えますが、6歳を過ぎると「ジョンはメアリーがまだ公園にいると思っている」と答えるようになります。
つまり、社会的推論の複雑さを理解し始めたサインです。
Q3. 家庭でできる“心の理論”を育てる工夫はありますか?
はい。絵本や日常会話の中で「○○ちゃんはどう思った?」「○○くんは知らなかったのかな?」といった他者視点を促す質問を意識することが効果的です。
また、ごっこ遊びや物語のロールプレイもおすすめです。
親が「相手の気持ちを考える姿勢」を日常で見せることで、子どもも自然と“考える心”を学びます。
☆リコポ幼児教育では、子どもの成長に寄り添うために会員様には365日いつでも子育て相談を受け付けています。経験と教育理論に両輪で質問に対して、なるべく早く返答いたします。ご家庭に合った解決策を一緒に考えましょう。