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他者視点で物事を考えられる子どもへ

他者視点で物事を考えられる子どもへ

「なんでわかってくれないの?」と言葉にする子どもの心理に今日は迫りたいと思います。
子どもたちは、成長のある時期までは“自分の視点”しか持てないのが自然な姿です。しかし、やがて他人の気持ちを想像し、相手の立場で考えられるようになると、人間関係も学びも大きく変わります。

今回は、ピアジェの有名な「三つ山課題」を手がかりに、子どもがどのように自己中心性から脱中心化へ進んでいくのか、そしてそれを支える「空間的視点取得能力」と幼児教育・家庭での関わり方について詳しく解説します。


自己中心性から脱中心化へ

発達心理学者ジャン・ピアジェは、子どもの思考を「自己中心的」と表現しました。
ここで言う“自己中心的”とは、わがままという意味ではなく、「他者の視点を想像できない」状態を指します。

たとえば、かくれんぼで「自分が見えなければ相手からも見えない」と思い込む幼児。これこそ、典型的な自己中心的思考の例です。
しかし成長とともに、子どもは「自分と他人は異なる視点をもつ」ということに気づき始めます。この変化をピアジェは「脱中心化」と呼びました。

脱中心化とは、

  • 他者の立場で考えられるようになること
  • 状況を多面的に理解できるようになること
    を意味します。
    この能力が芽生えると、社会性・共感性・論理的思考の基礎が形成されていきます。

※ピアジェに関して詳しくはこちらをご覧ください。
 子どもは“小さな科学者” ピアジェの発達段階理論と幼児教育の関係


ピアジェの三つ山課題とは

ピアジェが自己中心性の研究で用いた代表的な実験が「三つ山課題」です。

実験内容

机の上に高低の異なる三つの山の模型を置き、子どもの前に座らせます。
その反対側には「人形(他者)」を置き、子どもにこう尋ねます。

「人形からは、どんな景色が見えると思う?」

結果

  • **前操作期(約2〜7歳)**の子どもは、自分の視点から見える景色を答えます。
    →「自分には大きい山が右にある」なら、人形にも同じように見えると思う。
  • **具体的操作期(約7〜11歳)**の子どもは、人形の位置からの視点を想像し、正しく答えることができるようになります。

つまり、三つ山課題は「他者視点の理解力=空間的視点取得能力」を測るテストなのです。
三つ山問題(Wikipedia)


※ピアジェの前操作期に関してはこちらをご覧ください
 ピアジェの発達段階理論「前操作期」:言葉と想像力が花開く時期とは
 具体的操作期はこちらを!
 ピアジェの理論「具体的操作期」に見られる子どもの成長と幼児教育


三つ山課題から分かること

この課題からわかることは、子どもが「他者の立場を想像する力」は突然身につくのではなく、発達段階を経て育つということです。

  • 幼児期の初期では「見え方はみんな同じ」と考える
  • 幼児期の後半になると「人によって見え方が違う」と気づき始める
  • 学童期でようやく「他人の視点を具体的に再現できる」ようになる

このように、視点取得の発達は社会性・共感性・コミュニケーション能力の基盤を形づくります。
つまり、他者視点を育てることは「思いやりを育てること」と同義なのです。

※共感性に関しての記事です。参考にどうぞ。
 「共感性」を養う幼児教育 「思いやりのある子ども」は幸福度が高い


空間的視点取得能力とは

「空間的視点取得能力」とは、自分とは異なる位置に立つ他者の視点を空間的に想像する能力を指します。
これは単に「地図を読む力」や「位置関係を理解する力」だけではなく、他者の視点で物事を見るための脳の働きを意味します。

たとえば、

  • 「相手がどう見えているか」
  • 「自分が動くと相手の見え方がどう変わるか」
    を考えられることが、空間的視点取得能力の特徴です。

この能力が発達することで、子どもは次のような力を身につけます。

  • 他人の立場を想像し、思いやる力
  • 物事を多面的に捉える思考力
  • 状況を俯瞰して判断する力

空間的視点取得能力の重要性

現代社会では「共感力」「コミュニケーション力」「チームワーク力」が求められます。
そのすべての基礎にあるのが、まさにこの“他者視点”です。

教育面での重要性

  • 算数・図形・地理など、空間認知を要する教科に影響
  • 相手の考えを理解するディスカッション力・読解力にも直結
  • 「自分と他人の意見の違い」を受け入れる柔軟性を育む

また心理学の研究では、空間的視点取得能力の高い子ほど、共感性・社会的適応力が高い傾向があることが報告されています。

思いやりのある子どもに

空間的視点取得能力を得るためには

幼児教育でできること

幼児教育の現場では、この力を遊びの中で自然に育むことが可能です。
以下のような活動が効果的です。

  • ごっこ遊び:他人の役を演じ、他者の立場を体験する
  • パズル・積み木:空間認知と位置関係の理解を促す
  • 協同作業:友だちの意見を聞きながら進める経験
  • 絵本の読み聞かせ:登場人物の気持ちを想像する

特にごっこ遊びは、「自分ではない誰かになりきる」ことで、他者視点の模擬体験ができる貴重な学びの時間です。

リコポ幼児教育でも、このような“視点を切り替える遊び”を積極的に取り入れています。
一人ひとりの発達段階に合わせた関わりで、「見方を変えられる力」=思考の柔軟性を育てることが私たちの使命です。

ピアジェの三つ山課題が示すように、他者視点を持つ力は、思いやり・論理的思考・社会性の基盤。
親や教育者が子どもの視点を理解しながら、日常の中で少しずつ“視点を切り替える体験”を積み重ねることで、子どもは自らの世界を広げ、より豊かな人間関係を築いていくことができます。


今日のおさらいQ&A3問

Q1. ピアジェの三つ山課題とは何ですか?

A. 子どもが他者の視点を想像できるかを調べる実験です。机上の三つの山を使い、「人形にはどのように見えるか」を問うことで、自己中心性から脱中心化の発達段階を確認します。

Q2. 空間的視点取得能力とは?

A. 他人の立場や位置から物事を見る能力です。共感力や論理的思考、空間認知力の基礎となり、社会性の発達にも深く関わります。

Q3. 親が家庭でできることは?

A. 子どもに「相手の気持ちを想像させる会話」や「視点を変える体験」を多く与えることです。日常の中で他者の立場を考える練習を重ねることが鍵です。

☆リコポ幼児教育では、子どもの成長に寄り添うために
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