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子どもの“ひとりごと”は成長の宝?〜乳幼児期の呟きについて

子どもの“ひとりごと”は成長の宝?〜乳幼児期の呟きについて

「うちの子、ひとりでずっとしゃべってるんです……」
「誰と話してるの?と思うくらい、おもちゃに語りかけていて。」

乳幼児を育てるご家庭では、こんな光景をよく目にしますよね。
一見“意味のないおしゃべり”のようですが、実はこの 「ひとりごと」こそが、子どもの思考と社会性を育てる大切なプロセス なんです。

心理学者ピアジェとヴィゴツキーも、この“ひとりごと”をめぐって熱い議論を交わしました。
今日は、教育心理の観点から「子どものひとりごと」をやさしく解説します。


子どもがひとりごとを言うのはなぜ?

● よくある場面

  • おもちゃを積みながら「こっちかな?」「あ、崩れちゃった!」
  • 絵本をめくりながら「これネコさんだね」
  • 一人遊び中に「お母さん、いまね〜」と空想の相手に話しかける

こうした行動は、自分の中の考えを整理するための“声に出す思考” です。
言葉を使って「次はこうしよう」「これは違う」と確認しながら、思考を組み立てているのです。


ひとりごと=社会性の始まり

一見「孤立してる」ように見えて、実はその逆。
ひとりごとは、社会性の芽が出はじめた証拠 です。

なぜなら――

  • 言葉はもともと「他者との関わり」から育つ
  • その関わりを“自分の中で再現”しているのがひとりごと

つまり、社会的な対話が内側で続いている状態 なんです。
子どもは、ママやパパとの会話をまねて、ひとりでも対話を繰り返しています。
「自分との会話」ができる=他者との会話ができる基礎になる。これが“社会性の土台”です。

子どもの「ひとり言」止めなくて大丈夫「嘘」は成長の証拠(2024年/講談社コクリコ)
ひとり言を「止めなくて良い」「成長の証」と捉える視点がわかりやすく書かれています。


ピアジェの考え:「ひとりごとは未熟な言葉」

スイスの心理学者 ジャン・ピアジェ は、子どもの“ひとりごと”を「自我中心的言語(egocentric speech)」と呼びました。

ピアジェの見方では――

  • 子どもは他人の立場をまだ理解できず
  • 自分の世界でしか考えられない
  • だから“自分にだけ通じる言葉”を使う

とされました。
つまり、「社会的に未熟な段階の言語」 とみなされていたのです。

ピアジェにとって、ひとりごとは成長とともに“消える”もの。
他者との会話が増えるほど、自然と減っていくと考えられていました。

※ピアジェの発達教育についての記事です。ピアジェは教育学についてとても重要な人物です。
子どもは“小さな科学者” ピアジェの発達段階理論と幼児教育の関係


それに異を唱えたヴィゴツキー

ソビエトの心理学者 レフ・ヴィゴツキー は、ピアジェとは真逆の立場をとります。

「ひとりごとは、成長の途中で生まれる“考えるための言葉”である。」
 ヴィゴツキーは、言葉が次のように発達すると考えました。

  1. 社会的言語(他者との会話)
     ↓
  2. ひとりごと(プライベートスピーチ)
     ↓
  3. 内言(声にならない思考)

この流れを 「言語の内化」 と呼びます。
つまり、他人との会話が内面に取り込まれ、自分自身への“内なる対話”に変化していくということです。

※ヴィゴツキーもまた現代教育学の始祖であり、権威でもあります。ヴィゴツキーの最近接領域の考え
 は幼児教育において重要なキーワードです。その最近接領域の記事です。
【個別教育の力】「最近接領域」に働きかけるベビーシッターの強み

最近接領域 ヴィゴツキー

実験が示す「ひとりごとの力」

ヴィゴツキーの弟子たちは、子どもが難しい課題に取り組むときの様子を観察しました。
すると――

  • 難しい場面になるほど、子どもはひとりごとを増やす
  • 問題を解けるようになると、声を出さずに考えるようになる

この結果は、「ひとりごとが思考を助けている」ことを示しています。
つまり、声に出すこと=考えること なのです。


「外言」と「内言」ってなに?

種類内容特徴
外言(がいげん)声に出して話す言葉子どもが今考えていることを“音”にして整理する段階
内言(ないげん)頭の中で話す言葉声に出さず、思考や行動を自分でコントロールできる段階

ヴィゴツキーは「外言(ひとりごと)」が「内言」へ変わることこそ、人の思考の成長だ
と述べました。つまり、外言→ひとりごと→内言 の過程を経て成長していくということです。

ですから、ひとりごとは「静かな思考」への第一歩
むしろ、「考える力が育っている」と見るべきなのです。


見守る大人ができること

● 1. 否定せず、まず観察

「またひとりごとを言ってる」ではなく、
→「今どんなことを考えてるのかな?」と見守りましょう。

子どもが言葉を使って考えている最中かもしれません。
その瞬間に「静かにして!」と止めてしまうと、思考の流れを断ち切ることになります。

● 2. 優しく共感する

子どもの言葉に耳を傾け、「そうなんだね」「上手に考えてるね」
と一言添えるだけで、“自分の声を大切にしてもらえた”という安心感につながります。

この安心が、自己表現力と社会性の育ち を支えます。

● 3. 遊びに取り入れる

  • 絵本の登場人物の「ひとりごと」を想像してみる
  • お片づけをしながら「おもちゃさんも『おうちに帰るね〜』って言ってるね」
  • ごっこ遊びで「お医者さん、今なに考えてる?」と話を広げる

こうした工夫で、言葉を“楽しむ”時間 が増えます。

子どものひとりごとは――

  • 思考を整理する「声に出す思考」
  • 感情を整理する「心のリハーサル」
  • 社会性を育てる「対話の練習」

ピアジェは「未熟」と見ましたが、
ヴィゴツキーは「発達の証」と捉えました。

現代の教育心理学では、ヴィゴツキーの考えが広く支持されています。
つまり、ひとりごとが多い=よく考えている証拠 なのです。


今日のおさらいQ&A3問

Q1. うちの子、よくひとりでブツブツ言ってるけど大丈夫?

A.まったく問題ありません。それは“考える練習”をしている証拠です。子どもは言葉を使って、自分の気持ちや行動を整理しているんです。むしろ、思考力や社会性が伸びているサインです。

Q2. ひとりごとが多いと「友達と遊べてないのかな?」って心配になります。

A.実はその逆。ひとりごとは、友達との関わりや会話を自分の中で再現している時間なんです。遊びで経験したやり取りを“ひとりごと”として整理しているだけ。社会性の芽がしっかり育っている証です。

Q3. ピアジェとかヴィゴツキーの考えは、なにが違うの?

A.ピアジェは「ひとりごとはまだ未熟」と考え、ヴィゴツキーは「成長の途中で大事なステップ」と考えました。今ではヴィゴツキーの“発達の証”という考え方が主流です。


☆リコポ幼児教育では、子どもの成長に寄り添うために
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ご家庭に合った解決策を一緒に考えましょう。

執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)
株式会社リコポの理念や運営体制については「創業者の想い」をご覧ください。

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