1歳から広がる絵本の世界ー0歳との違いと成長を支える読み聞かせ

絵本年齢別紹介シリーズ第2弾、昨日の続きの記事です。「1歳になったら、どんな絵本を選べばいいのだろう?」ということで、今回は1歳児の特徴とおすすめの絵本をお伝えします。0歳のころは色や音を楽しむだけでよかった赤ちゃんも、1歳になると歩きはじめたり、簡単な言葉を口にしたりと、大きな成長を見せます。1歳児にとっても絵本はその成長を支える大切なツールです。0歳と1歳では発達段階が異なるため、絵本選びや読み方にもまた少し違った判断が必要です。本記事では0歳との違い、1歳児に養われる力、昨日と同じく感覚統合の観点、さらにおすすめ絵本と読み聞かせのポイントを、わかりやすく解説します。
(※前回の記事からの続きです 0歳から絵本を楽しもう!赤ちゃんの未来を育む読み聞かせの力)
0歳児と1歳児の違い ― 何ができるようになるのか
1歳児は、個人差も大きくありますが、成長や発達が著しく、0歳の赤ちゃんに比べてできることが格段に増えます。感情をぶつけ、好奇心も持ち始めます。
- 運動面:二本の足で立ち上がり、つかまり立ちから歩きを始める子も出てきます。体を動かす範囲も広がります。
- 言語面:意味のある単語を少しずつ発します(「ママ」「ワンワン」など)。言葉の正確な意味までは分からなくても、言葉のリズムやストーリーを理解できるようになります。
- 認知面:簡単な因果関係(ボールを投げると転がる等)を理解し始めます。
- 社会性:好奇心が生まれる時期です。親や周囲の人の反応を強く意識し、指差しやジェスチャーで伝えることを始めます。
0歳児は「感覚を受け取る」段階でしたが、1歳児は「体験を通して理解する」段階へと進みます。
1歳児で気をつけたいこと
1歳児は「自分でやりたい!」という気持ちが芽生える時期です。
- 集中時間が短い → 5分程度で十分。長い話はまだ早い。
- なんでも口に入れる → 絵本は厚紙・ボードブックも視野に。
- 破ったり投げたりする → 遊びの一環なので叱らず受け止める。
- 感情の起伏が激しい → 興味があるときだけ読めばOKです。無理は禁物。
1歳児において養われる能力・成長する能力
絵本を通して伸びる1歳児の力は以下のとおりです。
- ことばの理解力:簡単な単語や擬音語を覚える。
- 模倣力:登場人物の動きを真似る。
- 記憶力:同じ絵本を繰り返す中でフレーズを覚える。
- 非認知能力:好奇心・集中力・感情表現が育つ。
- 社会性:親子のやりとりを通して「人と関わる楽しさ」を学ぶ。
絵本と1歳児の発達への影響

感覚統合
絵本は「見る・聞く・触る」を同時に体験させ、脳が感覚を整理・統合する力を育みます。色や形を視覚で捉え、擬音語を聴覚で感じ、ページをめくる触覚体験が相互に結びつきます。
基礎感覚
- 視覚:登場人物や色彩を認識
- 聴覚:音の違いやリズムを区別
- 触覚:紙やボードブックを手で確かめる
身体調整(ボディコントロール)
- ページを自分でめくる → 手先の器用さ
- 親の膝で座る → 姿勢保持
- 登場人物をまねる → 体の動きの調整
高次機能(思考・記憶・社会性)
- 言語:単語や擬音語の習得
- 記憶:繰り返し読む中でフレーズを記憶
- 社会性:親とのやりとりで共感力を育成
- 想像力:「次はどうなる?」と予測する力
絵本の読み聞かせは1歳児の総合的な発達を支える学びの土台となります。
※感覚統合や基礎感覚などについて、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
幼児期に大切な感覚統合と発達ピラミッド〜小学校受験にも役立つ力〜
幼児教育は学びの土台づくり 基礎感覚・身体調整・高次機能を育む
1歳児に読ませる絵本の紹介 ― どんな絵本がよいのか
1歳児には「感覚だけで楽しむ」から一歩進んで、「まねっこ」「ことば」「生活とのつながり」を味わえる絵本が効果的です。
選び方のポイント
- 短い言葉やリズムを楽しみながら、簡単な意味を理解し始めます。
- 指差しや「自分でページをめくる」動作も増えるので、参加できる仕掛けのある絵本がおすすめです。
- 日常生活や身近なテーマ(食べ物、乗り物、どうぶつ)を題材にした絵本は、言葉と体験をつなげます。
おすすめのタイプ
- 繰り返し表現が多いもの
- 擬音語・リズムのある言葉
- 身近な生活や食べ物が登場するもの
- めくる・ひっぱるなどのしかけ絵本
- 厚紙やボードブックで破れにくいもの
具体的なおすすめ絵本
(出典:『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(磯崎園子/著、ほるぷ出版)より抜粋)
『したく』:字のない絵本。「したく」している絵の意味と自分の体験とつながる。
『おいし~い』:美味しいものを食べた時の表情と言葉。自分の気持ちを表現することの快感に繋がる。
『ママだいすき』:幸せな感情を共有できる。
『こちょこちょさん』:親子の直接的なコミュニケーションに大いに役立つ。
『きんぎょがにげた』:いわゆる「絵さがし絵本」。見つけたことを親に教えて、嬉しそうな顔を向けてくれます。
『こりゃ まてまて』:「自分の子の姿と重なる」「危なっかしい足取りをずっと見守っていたいような気持になる」などレビューサイトも好評。
「絵本ナビ」 絵本の通販サイト ※とても見やすいサイトで、年齢別におすすめの絵本を紹介してくれています。
親ができること
- 一緒に楽しむ姿勢を見せる:「読んであげる」より「一緒に遊ぶ」感覚で。
- 子どものペースに合わせる:最後まで読めなくても大丈夫。
- 同じ絵本を繰り返す:暗記してしまうほどの繰り返しが力になる。
- 日常とつなげる:「これおにぎりだね。今日も食べたね」と声をかける。
0歳児の時と同様に、絵本の読み聞かせは親子の絆を深めるコミュニケーションツールとなります。
読み聞かせをする際の注意点
- 無理に読ませない(嫌がったらすぐやめる)。
- 紙の絵本は破る可能性があるため、厚紙や布絵本を選ぶ。
- 時間は短く、回数は多くでOK。
- 読む場所は「安心できる空間」にする(膝の上など)。
1歳の絵本は、遊びと学びの境界をなくし、子どもの「生きる力」を育む最強のパートナーとなります。
Q&A(まとめ)
Q1:1歳児にはどんな絵本が向いていますか?
A1: 繰り返しのあるお話や擬音語を楽しめる絵本、めくる・ひっぱるなどのしかけ絵本がおすすめです。『ぞうくんのさんぽ』『へっこ ぷっと たれた』『あけて・あけてえほん』などは、1歳児の好奇心をぐっと引き出してくれます。
Q2:読み聞かせのとき、最後まで読めないのですが大丈夫でしょうか?
A2: 問題ありません。1歳児の集中力は短いため、数ページで飽きてしまうことも普通です。大切なのは「全部読むこと」ではなく、絵本を通じて楽しいやりとりをすることです。
Q3:1歳児への読み聞かせは、1日にどのくらいすればよいですか?
A3: 長時間は必要ありません。1回あたり3~5分程度で十分効果があります。短い時間を何度か繰り返すのが理想的です。毎日の生活の中で「寝る前」「おやつの後」などに習慣づけると、子どもに安心感が生まれます。