3歳から広がる絵本の世界 想像力とことばの力を育てる読み聞かせ

前回は厳しい口調での記事になりましたが、また絵本シリーズの記事に戻ります。0歳~2歳までのものを書いたので、次は3歳ですね。まずは3歳とはどんな年齢で、どんな成長をするのかから始めていきます。
3歳になると「なんで?」「どうして?」と質問が止まらない時期に入ります。言葉がぐんと増え、自分の気持ちを相手に伝える力が育ち、遊びや生活の幅も大きく広がります。この時期の絵本は、単なる物語を読むだけでなく、子どもの知的好奇心や想像力、そして社会性を伸ばす大切なツールです。2歳までは「音やリズム」「まねっこ遊び」を中心に楽しんでいた子どもたちが、3歳になるとストーリーを理解し、登場人物に感情移入し、物語の世界を自分のものとして楽しめるようになります。本記事では、2歳との違いや注意点、3歳児が絵本から養う力、そしておすすめの絵本と読み聞かせのコツをまとめました。
(以前書いた0歳~2歳までの絵本教育についての記事です)
0歳から絵本を楽しもう!赤ちゃんの未来を育む読み聞かせの力
1歳から広がる絵本の世界ー0歳との違いと成長を支える読み聞かせ
2歳からの絵本 ― 言葉と想像力がぐんぐん育つ読み聞かせ
3歳児と2歳児の違い 何ができるようになるのか
3歳は「自立への第一歩」と言われるほど成長が著しい年齢です。
- 言語面:二語文・三語文から、より複雑な文章を話せるようになる。「ごっこ遊び」のセリフも豊かに。
- 認知面:数や形、色の概念を理解。簡単な数の数え上げも可能に。
- 社会性:友だちとの関わりが深まり、ルールを意識し始める。協力や順番待ちも学ぶ。
- 感情表現:喜び・怒り・悲しみなど感情をはっきり示し、共感する力が芽生える。
- 運動能力:片足立ち、ジャンプ、走るスピードなど身体能力が大きく向上。
2歳児が「自分中心の世界」だったのに対し、3歳は「他者と関わる世界」に踏み出す段階です。
絵本を「絵本の中の世界」として楽しめるようになります。現実と空想を行き来でき、両方の世界を楽しめ、他者との関わり方を考えます。
2歳児と比べて、3歳児で気をつけること
- 自己主張が強い:「やりたい!」「いやだ!」がさらに鮮明に。否定せず受け止める姿勢が大事。
- 空想と現実の区別があいまい:物語の世界を信じ込みやすい。安心感を与える説明が必要。
- 言葉でのやりとりが増える分、語彙不足でフラストレーション → 大人が言葉を補ってあげる。
- 友だちとのトラブルが増える:絵本を通じて「順番」「思いやり」を学ばせると効果的。
3歳児において養われる能力・成長する能力
- 言語能力:語彙力、表現力が飛躍的に伸びる。
- 認知能力:数・形・時間の概念を学ぶ。
- 社会性:登場人物との共感を通じて思いやりを育てる。
- 想像力:空想を楽しみ、物語を自分の遊びに展開できる。
- 非認知能力:集中力、忍耐力、協調性、自己表現力。
感覚統合と絵本の読み聞かせ
3歳児の絵本体験は「感覚統合」をさらに高度に発展させます。
- 感覚統合:絵本の色彩やイラストを「視覚」で捉え、声や効果音を「聴覚」で感じ、ページをめくる「触覚」と結びつける。2歳までの単純な刺激から一歩進み、物語の筋や人物の感情を理解することで「複数の感覚を統合して理解する力」が養われます。
- 見て動く力・ボディイメージ:絵本に登場する動作をまねっこすることで「見て動く力」が鍛えられ、体の大きさや動きを自覚する「ボディイメージ(身体意識)」も強化されます。
- 言語・学習・集中力:ストーリーを最後まで追うことで集中力が高まり、新しい語彙や表現を吸収。物語の因果関係を理解する経験は「学習の基盤」を作ります。
つまり絵本は、3歳児にとって 心と体、言葉をつなぐ総合的な教育ツール なのです。
3歳児に読ませる絵本の紹介 ― どんな絵本がよいのか
選び方のポイント
- ストーリー性がある短めの物語。
- 感情移入しやすい登場人物が出てくるもの。
- 数や形、自然や季節など「学び」にもつながる題材。
- ユーモアや意外性で「考える力」を育てる内容。
具体的なおすすめ絵本(3歳向け)
(出典:『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(磯崎園子/著、ほるぷ出版)より抜粋)
『てぶくろ』:日本でも読み継がれているロングセラー本。
『わたしのワンピース』:日本が誇るファンタジー絵本。不思議だけれど、ありそうな話
『へんしんトンネル』:言葉遊びの絵本。物語全体にリズム感があり、耳から楽しめる絵本です。
『よるくま』:空想と現実が溶け合う。男の子の体験したある夜の不思議な出来事。
『パンどろぼう』:絶妙な表情や動きにたちまち大人気になった絵本。
『そらまめくんのベッド』:自分と相手が同時に見えてくる。保育園や幼稚園で圧倒的な人気。
「絵本ナビ」 絵本の通販サイト ※とても見やすいサイトで、年齢別におすすめの絵本を紹介してくれています。

親ができること
- 質問に答える:「どうして?」に丁寧に向き合う。
- 一緒に考える:選択肢のある絵本を対話の場に。
- 生活と結びつける:「ぐりとぐらと同じようにお料理しようね」など。
- 繰り返し読む:お気に入りを繰り返すことで安心と学びにつながる。
読み聞かせの注意点
- 無理に静かに聞かせず、質問や会話を歓迎する。
- 登場人物の感情を声色で表現すると理解が深まる。
- 「読むだけ」でなく「会話しながら読む」ことで絵本が対話の場になる。
- 長めの話も少しずつ挑戦する。
☆絵本の読み聞かせはこちらを参考にしてみてください。絵本と子どもの関わり方、読み聞かせ、会話の方法などをまとめています。
『しろいうさぎとくろいうさぎ』から考える絵本教育とシッター活用
『スイミー』と幼児教育 〜読み聞かせと会話で育つ非認知能力〜
3歳からは「ただ読む」から「一緒に考え、会話する」に成長します。
親子で豊かな読書体験を楽しみ、子どもの未来への力を育んでいきましょう。
Q&A(まとめ)
Q1:3歳児にはどんな絵本が向いていますか?
A1: ストーリーがあり、登場人物の感情が描かれたものがおすすめです。『そらまめくんのベッド』『ちょっとだけ』『はじめてのおつかい』などは、想像力や社会性を育てながら楽しく読めます。
Q2:3歳児は「なんで?」と質問ばかりですが、読み聞かせ中に答えた方がいいですか?
A2: はい。質問は理解や好奇心の表れなので、その場で会話しながら読むのが効果的です。対話型の読み聞かせは語彙力や思考力の発達にもつながります。
Q3:3歳児が同じ絵本ばかり読みたがります。大丈夫ですか?
A3: 心配ありません。繰り返し読むことで安心感を得られ、物語や言葉を深く理解する力が育ちます。むしろ「暗記するほど読む」ことは記憶力や言語発達に大きなプラスになります。