ピアジェの理論「具体的操作期」に見られる子どもの成長と幼児教育

本日もピアジェの発達心理学についてです。前日の「前操作期(2~6歳)」ですので、今回の「具体的操作期」は7歳~です。このブログに関係のある年齢より少し高めかもしれませんが、前操作期とも関連がありますし、子どもは当然どんどん成長していきますので、この時期の子どもの心身のことにもしっかりと触れていこうと思います。
5歳、6歳を過ぎるころ、子どもたちは「なんで?」「どうして?」の質問攻撃から少し変化します。
「もし〜だったら」「これは前と違うよね」と、自分なりに筋道を立てて考えるようになるのです。
この時期に訪れるのが、ピアジェが提唱した発達段階のひとつ具体的操作期(7〜11歳ごろ)です。
子どもが「頭の中で現実的な操作(考えの実験)」を行いながら、世界を理解していく段階。
つまり、“考える力”が育ち始める黄金期と言えます。
本記事では、前段階である「前操作期」との違いや、具体的操作期の子どもに必要な教育・親の関わり方を分かりやすく解説します。
ピアジェの発達段階理論とは
しつこいですが、復習しておきます。
スイスの心理学者ジャン・ピアジェは、子どもの知的発達を4つの段階に整理しました。
段階 | 年齢の目安 | 特徴 |
---|---|---|
感覚運動期 | 0〜2歳 | 感覚と運動で世界を理解する |
前操作期 | 2〜6歳 | 言葉やイメージで考えるが、論理的思考は未発達 |
具体的操作期 | 7〜11歳 | 現実的な出来事をもとに論理的に考えられる |
形式的操作期 | 12歳〜 | 抽象的・仮説的な思考が可能になる |
ピアジェは、「子どもの思考は大人の小型版ではなく、質的に異なる」と考えました。
つまり、成長に応じて思考の仕組みそのものが進化していくというわけです。
この記事にて詳しくまとめています。
子どもは“小さな科学者” ピアジェの発達段階理論と幼児教育の関係
具体的操作期とは
具体的操作期は、現実的・具体的な対象について論理的に考えられるようになる時期です。
ただし、この時期の「論理」はあくまで目に見える・触れられる世界に限定されます。
たとえば
- コップの水を別の形の容器に移しても「量は変わらない」と理解する(保存の概念)
- 兄弟関係のような「可逆的思考」ができる(例:「ぼくがお兄ちゃんなら、弟は○○くんだね」)
- 物事を複数の観点から分類・整理できる(「動物の中で、哺乳類で、犬の仲間」など)
このように、具体的操作期の子どもは、経験をもとに論理的な関係を理解する力を身につけていきます。
☆小学受験にも大きく関連するものがたくさんあります。
前操作期との関係

前操作期(2〜6歳)は、想像力が豊かで、世界を自分中心に理解する「自己中心的思考」の時期でした。
しかし、具体的操作期になると——
- 他者の視点に立てるようになる
- 事実と主観を分けて考えられる
- 「もし〜なら」という条件づけの理解が進む
つまり、空想から現実へ、直感から論理へとシフトする段階なのです。
前操作期の「ごっこ遊び」で育ったイメージ力が、ここで「論理的思考の材料」として再構成される。
これはピアジェ理論の美しい流れであり、教育においても非常に重要な転換点です。
☆この具体的操作期を効果的なものにするためにも、前操作期までの積み重ねはとても大事です。
感覚運動期と前操作期のブログ記事です。
「見る・触る・感じる」が学びのはじまり ピアジェ理論の感覚運動期
ピアジェの発達段階理論「前操作期」:言葉と想像力が花開く時期とは
具体的操作期の子どもの特徴
1. 論理的に考える力が育つ
「なぜ雨が降るの?」「地球は丸いの?」など、原因と結果を理解しようとします。
この時期は“知的好奇心”が爆発する時期でもあります。
2. 規則やルールを理解する
遊びやゲームのルールを自分たちで作り、守れるようになります。
社会性・協調性が芽生えるのもこの時期です。
3. 感情のコントロールが安定
前操作期までのような突発的な感情表現が減り、思考による自己制御が可能になります。
「怒っても無駄だから話し合おう」と考えられるようになる子もいます。
4. 比較や分類が得意になる
「これは大きいけど軽い」「こっちは赤いけど四角い」など、複数の特徴を整理して考えられます。
これは後の数学的思考や科学的理解の土台になります。
認知発達全体と具体的操作期の位置づけを図を交えて説明しています。
ピアジェの認知発達理論(Wikipedia)
具体的操作期の子どもに大切なこと
1. 経験を通して学ばせる
この時期は「体験的学習」が最も効果的です。
実際に触れ、観察し、比べ、話し合うことで論理の構築力が伸びます。
例:
- 料理で「水を加えるとどうなる?」を実験する
- 自然観察で「なぜ葉の色が違うのか」を考える
- 買い物で「どっちが安いか」を比べる
2. 失敗から考える機会を与える
具体的操作期では、「なぜうまくいかなかったか」を振り返る思考が芽生えます。
親が答えをすぐに与えるより、子ども自身が原因を考える時間を大切にしましょう。
3. 話し合い・対話を重視する
感情ではなく理由を求めるようになるため、
「どう思った?」「どうしてそう考えたの?」という会話が有効です。
家庭内での小さな“哲学対話”こそ、考える力の原石です。
具体的操作期は、“理屈を理解しはじめる「知性の芽生え」の時期です。
具体的操作期と幼児教育
教育的には、具体的操作期は論理的思考と非認知能力の橋渡しをする時期です。
- 観察・実験を通じた探究学習
- グループでの意見交換や協働活動
- 感情の整理と共感力の育成
たとえば、LycoPoの教育型ベビーシッターでは、単なるお預かりではなく、
「自分で考える」「他者と協力する」時間を意識的に作っています。
これはまさに、ピアジェが説いた「能動的な知の形成」を現代に再現する実践です。
東京近辺で安心を届ける ベビーシッターの新しい形
LycoPoでは、こうした発達心理学に基づいた保育・教育を行い、
子どもたちが“自分で考える力”を伸ばせるようサポートしています。
具体的操作期で親が気を付けるべきこと
- 「まだ抽象的な思考は苦手」だと理解する
「未来」「想像上の存在」「理論的な概念」は、まだピンと来ません。
勉強でも“目に見える事例”を使うと理解が早くなります。 - 「思考のスピード」を焦らない
自分で考え、結論を出すまでに時間がかかるのは正常な発達過程です。
すぐに答えを出させようとせず、考える沈黙を尊重しましょう。 - 比較や順位づけをしすぎない
この時期の子どもは「競争」に敏感です。
「あなたはこれが得意だね」という個別の承認が、自己肯定感を守ります。 - ルールと自由のバランスをとる
規律を理解する時期だからこそ、「理由のあるルール」を示しましょう。
ただ「ダメ」と言うより、「なぜダメなのか」を一緒に考える姿勢が大切です。
Q&A(まとめ)
Q1.具体的操作期の子どもには、どんな遊びや学びが効果的ですか?
A.「実際に手を動かしながら考える遊び」が最も効果的です。
たとえばブロック遊び、実験、料理、お金の計算ごっこなど、見て・触って・比べる体験を通じて、論理的思考が自然に育ちます。また、グループ活動や協力型のボードゲームなども、社会的ルールの理解を促進します。
Q2.具体的操作期の子どもを叱るとき、気を付けることはありますか?
A.この時期の子どもは、「なぜ叱られているのか」を論理的に理解できます。
そのため、「〇〇だから危ない」「□□という理由で困る」と理由を明確に伝えることが大切です。
感情的な叱責ではなく、考える機会として叱る姿勢が、自己理解と自制心の発達につながります。
Q3.具体的操作期に勉強を“教え込みすぎる”のは良くないですか?
A.はい、この時期は「教え込み」よりも「気づき」を大切にすべき時期です。
子どもは自分の経験をもとに考え、推論する力を育てている真っ最中。
親や先生が先に答えを出してしまうと、その思考のプロセスが育ちにくくなります。
「どうしてそう思ったの?」と問いかける時間こそが、学びを深める鍵になります。