子どもは空間をどう捉える?積み木遊びから見える発達の過程
子どもが目の前の積み木をうまくつかめなかったり、何度積んでも倒してしまったりすることがあります。大人には簡単そうに見えますが、子どもは距離や向き、位置を確かめながら、見る力と手の動きを少しずつ結びつけています。今回は、積み木遊びを例に、子どもの空間の捉え方と、大人ができる関わりについて考えます。
目次
- 大人と子どもでは空間の捉え方が違う
- 「見えている」と「すぐに動ける」は違う
- 積み木を一つ積むまでに必要なこと
- 子どもの動きを細かく分けて考える
- 大人ができる関わり方
- まとめ
1.大人と子どもでは空間の捉え方が違う
大人と子どもは、同じ場所にいても、まったく同じように空間を捉えているわけではありません。
大人は、物までの距離や大きさ、向き、周囲との位置関係を短い時間で判断できます。
一方、子どもの視覚や空間を捉える力、目と手を連動させる力は、まだ発達の途中です。
目の前に物が見えていても、
「どのくらい手を伸ばせば届くのか」
「どの向きで持てばよいのか」
「どこに置けば倒れないのか」
といったことを、大人と同じように素早く判断できるとは限りません。
子どもは見ること、触ること、動かすことを繰り返しながら、少しずつ空間の感覚を身につけていきます。

2.「見えている」と「すぐに動ける」は違う
子どもは積み木を見つけても、すぐに正確につかめるとは限りません。
対象を見つけ、場所を確認し、そこへ手を伸ばし、指の形を調整する必要があるからです。
このように、目で得た情報を理解して手の動きにつなげる一連の働きは、発達と経験によって少しずつ上達します。
そのため、大人から見ると、
「どうしてそこに手を伸ばすのだろう」
「もう少しゆっくり置けばいいのに」
「向きを変えれば積めるのに」
と思うことがあるかもしれません。
しかし、子どもはふざけているわけでも、考えていないわけでもありません。
見たものと自分の体の位置を照らし合わせながら、試行錯誤しているのです。
※参考(PMC)幼児と成人の自然な手の届き方における視覚運動協調
3.積み木を一つ積むまでに必要なこと
大人は、積み木を積む動作を一つの簡単な行動として捉えがちです。
しかし、この動作を細かく分けると、いくつもの力が必要なことが分かります。
① 手と積み木の距離を捉える
まず、積み木が自分の手からどのくらい離れているのかを確かめます。
近くにあるのか、少し手を伸ばせば届くのか。
この距離の判断が、手を伸ばす方向や力の入れ方につながります。
② 手を伸ばしてつかむ
次に、積み木のある場所へ手を伸ばします。
積み木の大きさに合わせて手を開き、指を動かしてつかまなければなりません。
目で見た位置と、実際に手が動く位置を合わせる力が必要です。
③ 持ち方や向きを調整する
積み木をつかんだ後は、持ちやすい形に調整します。
横向きで持つのか、縦向きにするのか。
強く握りすぎず、落とさないように持てるか。
子どもは手の感覚と目から入る情報を使いながら、少しずつ調整しています。
④ 落ちない場所に載せる
最後に、下の積み木を見ながら、倒れない位置を探して載せます。
端に置けば倒れやすく、中央に近い場所に置けば安定します。
さらに、積み木の面と面を合わせ、適切なところで手を離す必要があります。
つまり、積み木を一つ積むだけでも、
距離を捉える→手を伸ばす→つかむ→向きを変える→位置を合わせる→手を離す
という、たくさんの働きが組み合わされているのです。
4.子どもの動きを細かく分けて考える
子どもが積み木をうまく積めないときは、「積み木ができない」と一つにまとめず、どの部分で難しさを感じているのかを見てみましょう。
積み木の場所まで正確に手を伸ばせているか。
しっかりつかめているか。
持ったまま向きを変えられるか。
下の積み木を見ながら動かせているか。
手を離す位置やタイミングを調整できているか。
このように動作を分けて見ると、子どもができていることと、これから育つ部分が分かりやすくなります。
たとえば、積み木をつかめているのに積めない場合は、つかむ力がないのではなく、置く位置や手を離すタイミングを学んでいる途中なのかもしれません。
子どもの発達を細かく見ることで、大人も必要な手助けを考えやすくなります。
5.大人ができる関わり方
子どもがうまくできないとき、大人がすぐに完成させてしまうと、子どもが距離や位置を試す機会が少なくなってしまいます。
まずは、子どもがどこを見て、どのように手を動かしているのかを見守りましょう。
そのうえで、必要に応じて少しだけ手助けします。
・積み木を手の届きやすい場所に置く
・最初は大きく、つかみやすい積み木を使う
・安定した広い面を下にする
・積み木を置く場所を指で示す
・一度にたくさん出さず、一つずつ取り組む
・「上」「下」「真ん中」「横」などの言葉を添える
たとえば、
「この積み木を持ってみよう」
「くるっと向きを変えてみようか」
「真ん中に、そっと置いてみよう」
と、一つの動作ごとに短く声をかけます。
子どもに一度ですべてを求めるのではなく、大人が動作を分解し、その子が今取り組みやすい部分を用意することが大切です。
6.まとめ
子どもは、大人と同じように空間を捉えているわけではありません。
目で見たものまでの距離を捉え、手を伸ばし、つかみ、向きを変え、正しい場所に置く力は、経験の中で少しずつ育っていきます。
積み木を一つ積む動作にも、たくさんの発達の要素が含まれています。
うまくできないときは、結果だけを見るのではなく、
「どこまではできているのかな」
「どの動作を練習しているところかな」
と、細かく分けて見てみましょう。
大人が子どもの動きを丁寧に観察し、必要な部分だけを手助けすることで、子どもは自分の力で試す経験を重ねられます。
積み木が倒れることも、手が少しずれることも、失敗ではありません。
子どもが自分の体と目の前の空間との関係を学んでいる、大切な発達の過程なのです。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)