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「生活教育」とは?遊びや毎日の暮らしの中で子どもは学んでいく

「生活教育」とは?遊びや毎日の暮らしの中で子どもは学んでいく

幼児教育というと、文字や数字を教えたり、何か特別な教材を使ったりすることを思い浮かべる方もいるかもしれません。

しかし、幼い子どもにとって、本来の学びの場は「生活そのもの」の中にあります。

食べること、着替えること、人と話すこと、外で遊ぶこと、友達と関わること。

こうした毎日の経験を通して、子どもはさまざまなことを学び、成長していきます。

このような考え方につながるのが、今回取り上げる「生活教育」です。


ペスタロッチーの「生活の陶冶」

生活を教育の中心に置く考え方を理解するうえで重要な人物の一人が、スイスの教育思想家ヨハン・ハインリヒ・ペスタロッチーです。

ペスタロッチーの教育思想には、**「生活が陶冶する」**という考え方があります。

「陶冶(とうや)」とは、もともとは陶器をつくったり金属を鍛えたりする言葉ですが、教育では、人間の能力や人格を育てるという意味で使われます。

つまり「生活が陶冶する」とは、子どもは知識を一方的に教えられることだけで成長するのではなく、実際の生活を経験することそのものによって育っていくという考えです。

ペスタロッチーの生活陶冶思想は、生活の中で子どもの力を育てることを重視したものとして研究されており、現代の幼児教育にもつながる重要な教育思想の一つです。

※参考(J-STAGE) 大沢裕著『ペスタロッチーにおける生活陶冶思想の研究


倉橋惣三が大切にした子どもの「生活」

日本の幼児教育を考えるうえで欠かせない人物が、倉橋惣三(くらはし そうぞう)です。

倉橋は、日本の幼児教育・保育の発展に大きな影響を与えた人物で、子ども自身の生活や自発的な活動を非常に大切にしました。

大人があらかじめ決めた内容を一方的に教えるのではなく、子どもが興味を持ち、自分から環境に関わり、遊びを展開していく。

そして、保育者はその姿を理解しながら、子どもの活動や成長につながる環境を整えていく。

こうした考え方が倉橋の教育思想にはあります。倉橋の保育論についての研究でも、幼児の「心もち」や自発的活動、生活を通した教育が重要な要素として取り上げられています。

つまり、幼児教育とは、子どもの生活とは別の場所で「教育」を付け加えることではありません。

子どもが生きている生活そのものを、豊かな学びにつなげていくことが大切なのです。


現在の「幼稚園教育要領解説」にもつながる考え方

この考え方は、昔の教育思想だけではありません。

現在の文部科学省「幼稚園教育要領解説」の序章「発達の捉え方」でも、幼児は大人から教えられたことをそのまま覚えていくだけではなく、自分から環境に関わり、生活の中でさまざまなことを身につけていくことが重要だと説明されています。

さらに、幼児期には遊びを中心とした生活の中で、子ども自身が好奇心を持ったり、「やってみたい」「知りたい」と感じたりすることが大切だとされています。

これは、生活教育の考え方と非常によく重なります。

子どもは、大人から知識を受け取るだけの存在ではありません。

自分から見て、触って、試して、失敗して、もう一度やってみる。

その繰り返しの中で成長していくのです。


子どもにとって「遊び」は大切な学習

幼児期の生活の中心にあるものが遊びです。

幼稚園教育要領解説でも、幼児の遊びには成長や発達にとって重要な経験が多く含まれ、自発的な遊びは「幼児期特有の学習」であると説明されています。

例えば、積み木で家をつくる遊びでも、

「どうしたら倒れないだろう」

「この積み木を下に置いた方がいいかな」

と考えます。

そこには、形や大きさを比べる力、空間を捉える力、試行錯誤する力があります。

友達とお店屋さんごっこをすれば、

「私はお店の人ね」

「これをください」

「100円です」

など、ことばや役割、社会的なやり取りを経験します。

砂場で水を流せば、

「水を入れると砂が固くなる」

「もっと流すと崩れる」

と、自然の性質を体験的に知っていきます。

幼稚園教育要領解説でも、遊びの中で幼児が思考や想像力を働かせ、友達と共有・協力しながらさまざまな力を身につけていくことが示されています。

大人から見ると単なる遊びに見えても、子どもの中では非常に多くの学習が行われているのです。


幼児教育は「生活の中の学び」を大切にする

幼児教育は、小学校の授業を早く始めることではありません。

文字や数字を先取りすることだけが、幼児教育でもありません。

着替える。

食事をする。

公園を歩く。

虫を見つける。

絵本を読む。

友達と遊ぶ。

けんかをして仲直りする。

自分で考えて何かをつくる。

こうした一つひとつの生活経験の中に、子どもの発達につながる学びがあります。

現在の幼稚園教育でも、幼児が自発的に環境と関わることや、遊びを通して総合的に発達していくことが教育の基本として重視されています。

ペスタロッチーが伝えた「生活が陶冶する」という考え。

倉橋惣三が大切にした、子ども自身の生活と自発的な活動。

そして、現在の幼稚園教育要領が重視する、環境との関わりや遊びを通した学び。

時代や表現は違っても、そこには共通するものがあります。

子どもは、生活しながら学び、遊びながら育つ。

幼児教育において大切なのは、子どもの生活とは切り離された知識をただ与えることではなく、毎日の生活や遊びを豊かにし、その中で生まれる「やってみたい」「知りたい」「できた」という経験を大切にしていくことなのです。


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