規則性と因果 子どもは「こうしたらこうなる」をどう学ぶのか
子どもは、毎日の経験の中で「こうすると、こうなる」という関係を少しずつ学んでいます。
ボタンを押すと音が鳴る。
積み木を高く積むと倒れる。
大人に声を出すと振り向いてくれる。
こうした小さな経験の積み重ねが、子どもの世界への理解を深めていきます。
目次
- 子どもは規則性を見つけながら学んでいる
- 因果関係とは何か
- 「いつも同じ」ではなく「起こりやすい」を感じ取る
- 1歳以降に見られる、単純な因果の推論
- 子どもは日々、確率的な判断をしている
- 大人ができる関わり方
- まとめ:子どもは経験から世界の仕組みを学んでいる
子どもは規則性を見つけながら学んでいる
前回の記事では、子どもが経験を通して学習していること、そして条件づけによって行動や感情が結びついていくことをお伝えしました。
今回はそこから少し進んで、子どもが物事の規則性や因果関係をどのように学んでいるのかを考えていきます。
子どもは、ただ目の前の出来事を受け取っているだけではありません。
何度も同じような経験をする中で、
「これを押すと音がする」
「落とすと下にいく」
「泣くと大人が来てくれる」
「この箱を開けるとおもちゃが出てくる」
「この声かけの後にはご飯の時間になる」
というように、出来事のつながりを少しずつ感じ取っています。
つまり、子どもは日常の中で、世界の小さなルールを探しているのです。
因果関係とは何か
因果関係とは、簡単に言えば、ある出来事が別の出来事を引き起こす関係です。
ボタンを押すと音が鳴る。
コップを倒すと水がこぼれる。
積み木を押すと倒れる。
手を離すと物が落ちる。
こうした関係は、大人にとっては当たり前です。
でも、子どもにとっては一つひとつが新しい発見です。
子どもは、何度も試しながら、
「今のは偶然かな」
「もう一回やっても同じかな」
「こっちを押すとどうなるかな」
「さっきと違う結果になったのはなぜかな」
という経験を積んでいきます。
もちろん、子どもが頭の中で大人のように言葉で考えているわけではありません。
しかし、行動としては「こうしたら、こうなるのではないか」と確かめているような姿が見られます。
「いつも同じ」ではなく「起こりやすい」を感じ取る
子どもの学びで面白いのは、世界がいつも完全に同じ結果を返すわけではないということです。
ボールを転がしても、毎回同じ方向に進むとは限りません。
積み木を積んでも、毎回同じ高さで倒れるとは限りません。
大人に声を出しても、すぐに振り向いてくれる時もあれば、少し待つ時もあります。
それでも子どもは、経験の中で少しずつ、
「こうすると、こうなりやすい」
「これは起こることが多い」
「これはたまにしか起こらない」
「このやり方の方がうまくいきやすい」
という感覚を育てていきます。
これは、難しい言葉で言えば、確率的な判断の始まりとも言えます。
確率といっても、子どもが数字で考えているわけではありません。
「このおもちゃは、押すと音が鳴ることが多い」
「この積み方は倒れやすい」
「この声の出し方だと大人が気づいてくれやすい」
というように、経験の中で「起こりやすさ」を感じ取っているのです。
1歳以降に見られる、単純な因果の推論
1歳を過ぎる頃になると、子どもには単純な因果関係を推論しているような反応が見られるようになります。
たとえば、ボタンを押すと音が鳴るおもちゃがあります。
最初は偶然押して、音が鳴る。
次に、もう一度押してみる。
また音が鳴る。
すると、子どもは「ここを押すと音が出る」と分かってきます。
そして、音が鳴らないときには、
「あれ?」
「もう一回押してみよう」
「別のところを押してみよう」
「大人に見せてみよう」
という反応をすることがあります。
これは、単に手を動かしているだけではありません。
子どもなりに、原因と結果の関係を確かめている姿です。
もちろん、大人のように論理的に説明できるわけではありません。
しかし、日々の行動の中で「この行動には、この結果がつながる」という理解を少しずつ深めています。
参考(ScienceDirect)乳児研究では、1歳未満の赤ちゃんでも、出来事の起こりやすさや割合に敏感であることが示されています。The origins of probabilistic inference in human infants

子どもは日々、確率的な判断をしている
子どもは、毎日の生活の中で、さまざまな判断をしています。
この積み木は上に置けそう。
でも少し傾いているから倒れそう。
このおもちゃは押すと鳴りそう。
この大人は声を出すと来てくれそう。
この遊び方はうまくいきそう。
この友だちは、今は貸してくれなさそう。
こうした判断には、過去の経験が関わっています。
何度もやってみた。
うまくいった。
失敗した。
叱られた。
ほめられた。
安心した。
驚いた。
その経験をもとに、子どもは「次はどうなるか」を少しずつ予測していきます。
これは、子どもが世界に適応していくためにとても大切な力です。
世界は、完全に決まったルールだけで動いているわけではありません。
でも、まったくバラバラでもありません。
ある程度の規則性があり、起こりやすいことがあります。
子どもはその中で、日々小さな予測をしながら、世界の理解を深めているのです。
※関連記事です。今しか伸ばせない! 幼児期に育つ「推論力」「問題解決力」
大人ができる関わり方
子どもが規則性や因果関係を学んでいると考えると、大人の関わり方も少し変わります。
大切なのは、子どもが試す時間を持てることです。
すぐに答えを教えすぎない。
失敗をすぐに止めすぎない。
安全な範囲で、繰り返し試せるようにする。
子どもの「あれ?」という反応を大切にする。
大人が結果を言葉にしてあげる。
たとえば、積み木が倒れたときには、
「倒れたね」
「高くなったからかな」
「今度は大きい積み木を下にしてみる?」
と声をかけることができます。
ボタンのおもちゃで音が鳴ったときには、
「押したら音が鳴ったね」
「もう一回やってみる?」
と関わることができます。
子どもは、言葉だけで学んでいるわけではありません。
でも、大人が経験に言葉を添えることで、子どもの理解は整理されやすくなります。
大人は、子どもの小さな実験の助手のような存在です。
ただし、主役の研究者は子どもです。白衣はなくても、好奇心は立派な研究道具です。
まとめ:子どもは経験から世界の仕組みを学んでいる
子どもは、日々の経験の中で規則性や因果関係を学んでいます。
押すと鳴る。
落とすと下にいく。
積みすぎると倒れる。
声を出すと大人が来る。
このやり方だとうまくいきやすい。
こうした経験を通して、子どもは「世界にはつながりがある」と感じていきます。
そして、そのつながりはいつも完全ではありません。
毎回同じ結果になるわけではない。
でも、起こりやすいことはある。
こうした確率的な側面にも、子どもは日々の中で少しずつ気づいています。
子どもの学びは、ただ知識を覚えることではありません。
自分で試し、結果を見て、もう一度考え、次の行動を変えていくことです。
大人ができることは、子どもの小さな試行錯誤を見守り、安全な範囲で経験を重ねられるようにすることです。
子どもは、毎日の中で小さな因果を見つけながら、世界への理解を深めています。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)