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子どもの経験と学習 子どもは何を学んでいるのか

子どもの経験と学習 子どもは何を学んでいるのか

子どもは、毎日の経験を通して多くのことを学んでいます。
ただし、大人が「これを学んでほしい」と思ったことを、そのまま学ぶとは限りません。
大切なのは、子どもの行動だけでなく、その経験から何が学習されたのかを丁寧に見ることです。

目次

  1. 子どもは経験から学んでいる
  2. 直接的経験と間接的経験
  3. 大人の意図と、子どもが学ぶことは違うことがある
  4. 「ご飯が遅い」と叱ったとき、何が学習されるのか
  5. 条件づけとは何か
  6. 古典的条件づけ|気持ちや反応が結びつく学習
  7. オペラント条件づけ|行動と結果が結びつく学習
  8. 育児や保育で大切にしたい視点
  9. まとめ:子どもが何を学んだのかを見極める

子どもは経験から学んでいる

子どもは、日々の生活の中でたくさんのことを学んでいます。

食事をする。
着替える。
遊ぶ。
叱られる。
ほめられる。
抱っこされる。
友だちと関わる。
失敗する。
もう一度やってみる。

こうした一つひとつの経験が、子どもの中に残っていきます。

ただし、子どもの学習は、大人が思っているほど単純ではありません。

大人が「早く食べられるようになってほしい」と思って叱ったとしても、子どもが学ぶのは「早く食べること」ではないかもしれません。

場合によっては、

「食事の時間は怖い」
「ご飯を食べると叱られる」
「食卓は安心できない場所」
「自分はうまくできない」

ということを学習してしまうこともあります。

ここが、子どもの経験と学習を考えるうえでとても大切な点です。


直接的経験と間接的経験

子どもの学習には、大きく分けて直接的経験間接的経験があります。

直接的経験とは、自分で実際に体験することです。

熱いものに触って「あつい」と感じる。
積み木を倒して「崩れる」と分かる。
ボールを転がして「動く」と知る。
叱られて「怖い」と感じる。
ほめられて「うれしい」と感じる。

自分の体や感情を通して学ぶ経験です。

一方、間接的経験とは、自分が直接体験しなくても、見たり聞いたりして学ぶことです。

友だちが叱られているのを見る。
大人の表情を見て、今は静かにした方がよさそうだと感じる。
絵本の登場人物の行動から学ぶ。
保護者の言葉を聞いて、危ないことを知る。

子どもは、直接体験だけでなく、周りの人の様子からも多くを学んでいます。

つまり、子どもにとって大人の表情、声のかけ方、態度、雰囲気も、すべて学習の材料になります。


大人の意図と、子どもが学ぶことは違うことがある

大人は、子どもに良かれと思って声をかけます。

早く食べてほしい。
片づけてほしい。
危ないことをやめてほしい。
友だちに優しくしてほしい。
生活習慣を身につけてほしい。

どれも大切な願いです。

しかし、子どもがその経験から何を学ぶかは、大人の意図通りとは限りません。

たとえば、大人が「ちゃんとしなさい」と強く叱ったとします。

大人の意図は、生活習慣を身につけてほしいということかもしれません。
でも子どもは、「何をすればよいか」よりも、「怖かった」「怒られた」「自分はだめだ」という感情を強く覚えることがあります。

子どもは、言葉の意味だけで学ぶわけではありません。
そのときの表情、声の大きさ、場の空気、自分の気持ちも一緒に経験として残ります。

だからこそ、育児や保育では、
大人が何を教えたつもりかだけでなく、
子どもが何を学習したのかを見極めることが大切です。


「ご飯が遅い」と叱ったとき、何が学習されるのか

分かりやすい例として、食事の場面を考えてみましょう。

子どものご飯が遅い。
なかなか食べ終わらない。
遊び始める。
口に入れたまま止まっている。

大人はつい、

「早く食べなさい」
「いつまで食べているの」
「ちゃんと食べないとだめでしょ」

と言いたくなることがあります。

もちろん、生活リズムや食事の習慣を整えることは大切です。

しかし、毎回のように強く叱られると、子どもは「早く食べること」よりも、別のことを学習してしまう場合があります。

たとえば、

「食事の時間は怒られる時間」
「ご飯を食べると嫌な気持ちになる」
「食卓は安心できない場所」
「自分は食べるのが苦手」
「食事は楽しくない」

という学習です。

つまり、大人は「早く食べること」を教えたかったのに、子どもには「食事への不安」や「嫌な印象」が残ってしまうことがあるのです。

これは、親が悪いという話ではありません。
忙しい日もあります。
何度言っても進まないと、イライラするのは自然です。食卓の時計だけ、なぜか倍速に見える日もあります。

ただ、子どもの学習を考えるときには、
「この関わりで、子どもは何を覚えているだろう」
と一度立ち止まることが大切です。


条件づけとは何か

ここで、子どもの学習を考えるうえで大切な考え方が、条件づけです。

条件づけとは、簡単に言えば、ある経験と別の反応や行動が結びついていく学習のことです。

たとえば、

食事の時間に毎回叱られる。
すると、食事そのものに嫌な気持ちが結びつく。

片づけをしたら大人が喜んでくれる。
すると、片づける行動が増えやすくなる。

絵本を読んでもらう時間が楽しい。
すると、絵本を見ることが好きになっていく。

このように、子どもは経験の中で、気持ちや行動を少しずつ結びつけています。

条件づけには、大きく分けて古典的条件づけオペラント条件づけがあります。

参考(Britannica)心理学では、ある経験と反応が結びついていく学習を「条件づけ」と呼びます。Conditioning


古典的条件づけ 気持ちや反応が結びつく学習

古典的条件づけとは、ある刺激と感情や反応が結びつく学習です。

有名な例として、パブロフの犬の実験があります。

犬に食べ物を見せると、自然によだれが出ます。
その食べ物を出す前にベルを鳴らすことを繰り返すと、やがてベルの音だけでもよだれが出るようになります。

つまり、もともとは関係のなかった「ベルの音」と「食べ物への反応」が結びついたのです。

子どもの生活でも、これに近いことが起こります。

食事の時間にいつも叱られる。
すると、食事の時間そのものに嫌な気持ちが結びつく。

歯みがきのたびに無理やり押さえつけられる。
すると、歯みがきに恐怖や抵抗感が結びつく。

寝る前に安心できる声かけや絵本がある。
すると、寝る時間に安心感が結びつく。

このように、子どもは出来事と気持ちを結びつけて学習しています。

大人が意識したいのは、
「この時間に、どんな感情が結びついているか」
ということです。

食事に安心や楽しさが結びつくのか。
それとも不安や緊張が結びつくのか。

この違いは、子どものその後の行動にも影響します。


オペラント条件づけ 行動と結果が結びつく学習

もう一つが、オペラント条件づけです。

これは、ある行動のあとにどんな結果が起こるかによって、その行動が増えたり減ったりする学習です。

たとえば、

子どもが片づけをした。
大人が「助かったよ」「きれいになったね」と声をかける。
すると、子どもは片づけに前向きになりやすくなります。

反対に、子どもが騒いだら大人がすぐにお菓子を出す。
すると、子どもは「騒ぐとお菓子がもらえる」と学習してしまうことがあります。

この場合、大人の意図は「静かにしてほしい」だったかもしれません。
でも子どもが学んだのは、「騒ぐと得をする」かもしれません。

これが、オペラント条件づけの考え方です。

行動のあとに何が起きたのか。
その結果、子どもにとって得になったのか。
安心につながったのか。
注目を得られたのか。
嫌なことを避けられたのか。

そこを見ることが大切です。

※関連記事です。子どもは「結果」からも学んでいる。子どもの学習について


育児や保育で大切にしたい視点

条件づけの話をすると、「では、いつも正しく対応しなければ」と感じるかもしれません。

でも、完璧である必要はありません。

大切なのは、子どもの行動だけを見るのではなく、
その行動の前後に何が起きているかを見ることです。

たとえば、

いつ叱られているのか。
何をしたあとに注目を得ているのか。
どんな場面で不安になっているのか。
どんな関わりだと落ち着くのか。
どんな結果があると、その行動が増えているのか。

このように見ていくと、子どもの行動の意味が少し分かりやすくなります。

そして、関わり方も変えやすくなります。

食事が遅い子には、叱る前に「一口食べられたね」とできた部分を認める。
片づけが苦手な子には、「まず車だけ箱に入れよう」と行動を小さくする。
歯みがきが嫌な子には、楽しい歌や短い時間から始めて、嫌な経験だけにしない。
危ない行動には、言葉だけでなく環境を整えて防ぐ。

このように、子どもがどんな経験を通して何を学ぶのかを考えることが大切です。

子どもの動機づけ

まとめ:子どもが何を学んだのかを見極める

子どもは、日々の経験から多くのことを学んでいます。

直接体験したことからも学びます。
周りの人の様子を見たり聞いたりする間接的経験からも学びます。

ただし、大人が学ばせたいことと、子どもが実際に学習することは、必ずしも同じではありません。

「早く食べなさい」と叱ったとき、子どもは早く食べることを学ぶとは限りません。
食事が嫌な時間だと学ぶこともあります。

「静かにしてほしい」と思ってお菓子を渡したとき、子どもは静かにすることではなく、騒ぐとお菓子がもらえることを学ぶかもしれません。

だからこそ、育児や保育では、
「何を教えたか」だけでなく、
「何が学習されたのか」
を見極めることが大切です。

子どもの経験は、子どもの学習になります。

その経験が、安心や意欲につながるのか。
不安や嫌悪感につながるのか。
行動の改善につながるのか。
別の困った行動を強めてしまうのか。

そこを丁寧に見ながら関わることが、子どもの成長を支える大切な視点です。


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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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