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子どもには複数の感覚で伝えよう 声かけと社会的随伴性の大切さ

子どもには複数の感覚で伝えよう 声かけと社会的随伴性の大切さ

子どもに声をかけても、なかなか動いてくれないことがあります。しかし、それは話を聞いていないのではなく、言葉だけでは「何をすればよいか」をつかみにくかったのかもしれません。子どもへの働きかけでは、聞かせるだけでなく、見せる、触れる、実際に動かしてみるなど、複数の感覚を使うことが役立ちます。今回は、子どもの理解を支える感覚への働きかけと、親子のやり取りを育てる「社会的随伴性」について考えます。

目次

  1. 感覚は外の世界を知るための窓
  2. 言葉だけでは伝わりにくいこともある
  3. 複数の感覚を使った伝え方
  4. 同じ言葉でも伝わり方は変わる
  5. 社会的随伴性とは
  6. 子どもの反応に大人が応えることの大切さ
  7. 働きかけるときの注意点
  8. まとめ

1.感覚は外の世界を知るための窓

私たちは、目で見たり、耳で聞いたり、手で触れたりしながら、外の世界を理解しています。

視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚などの感覚は、外の世界と自分をつなぐ「窓」のようなものです。

たとえば、りんごについて知るときも、

・丸くて赤い形を見る
・「りんご」という言葉を聞く
・手で持って重さや硬さを感じる
・香りをかぐ
・実際に食べて味を知る

という複数の経験があります。

一つの感覚だけでなく、いくつかの感覚を通して経験することで、子どもは「りんごとはどのようなものか」を少しずつ理解していきます。

子どもが外の世界を知るためには、できる範囲で複数の窓を開いてあげることが大切です。

※参考(PMC)Multisensory Integration and Child Neurodevelopment


2.言葉だけでは伝わりにくいこともある

大人は言葉を聞くと、その意味を理解し、次にすることを頭の中で考えられます。

しかし、まだ言葉の理解や注意の切り替えが発達途中にある子どもは、声を聞いただけでは、何を求められているのか分からないことがあります。

たとえば、離れた場所から、

「お片づけしてね」

と声をかけても、子どもが遊びを続けていることがあります。

これは、わざと無視しているとは限りません。

・自分に向けられた言葉だと気づかなかった
・「お片づけ」が具体的に何をすることか分からなかった
・遊びに集中していて、注意を切り替えられなかった
・何から始めればよいか分からなかった

といった可能性があります。

声かけで動かないときは、何度も大声で繰り返す前に、別の感覚からも伝えてみましょう。

言語発達遅滞

3.複数の感覚を使った伝え方

子どもに何かを伝えるときは、言葉に視覚や触覚、実際の動きを組み合わせると、内容を理解しやすくなることがあります。


お片づけをするとき

「お片づけしよう」と言いながら、おもちゃ箱を指さします。

さらに、大人が一つおもちゃを持ち、

「この車を、ここに入れるよ」

と実際に入れて見せます。

子どもは、

・言葉を聞く
・箱を見る
・大人の動きを見る
・自分でおもちゃを持って入れる

という複数の感覚と動作を通して、「片づける」の意味を理解しやすくなります。


靴を履くとき

離れた場所から「靴を履いて」と言うだけでなく、子どもの近くへ行き、靴を見せながら、

「この靴を履いて、お外へ行こう」

と伝えます。

必要であれば、靴の履き口を広げたり、足を入れる場所を指で示したりします。

言葉だけだった指示が、目で見て行動できる具体的な情報に変わります。


絵本を読むとき

「犬が走っているね」と話すときは、犬の絵を指さし、子どもと一緒に見ます。

子どもは声を聞くだけでなく、大人の指先や絵を見ることで、「犬」という言葉が何を指しているのかを理解しやすくなります。

※絵本教育について関連ある記事です。『スイミー』と幼児教育 〜読み聞かせと会話で育つ非認知能力〜


4.同じ言葉でも伝わり方は変わる

同じ「こっちにおいで」という言葉でも、伝え方によって子どもの受け取り方は変わります。

部屋の反対側から、子どもの方を見ずに声をかける。
子どもの近くへ行き、目線の高さを合わせて声をかける。
必要に応じて手を差し出したり、肩にやさしく触れたりしながら声をかける。

言っている言葉は同じでも、子どもが受け取る情報の量や分かりやすさは異なります。

近くで目を合わせれば、「自分に話している」と気づきやすくなります。

手を差し出せば、「こちらへ来てほしい」という方向が目で分かります。

やさしく触れてから声をかければ、別のことに向いていた注意を切り替えやすくなる場合もあります。

子どもが動かないときは、言葉を強くするだけでなく、

「見えているかな」
「自分への声かけだと分かっているかな」
「何をすればよいか具体的に伝わっているかな」

と考えてみることが大切です。


5.社会的随伴性とは

社会的随伴性とは、子どもの行動に応じて、大人がタイミングよく反応を返すことです。

少し難しい言葉ですが、親子の日常ではごく自然に起きています。

赤ちゃんが「あー」と声を出したとき、大人が「あー、楽しいね」と返す。

子どもが犬を指さしたとき、大人が同じ方向を見て、

「わんわんがいたね」

と応える。

子どもが積み木を積んで大人の顔を見たとき、

「高く積めたね」

と一緒に喜ぶ。

このように、

子どもが働きかける→大人が応える→子どもがまた反応する

というやり取りが社会的随伴性です。


6.子どもの反応に大人が応えることの大切さ

大人が自分の声や視線、指さしに応えてくれると、子どもは、

「声を出すと、相手が振り向いてくれる」
「指をさすと、一緒に見てもらえる」
「自分の気持ちは相手に伝わる」

ということを経験します。

これは、コミュニケーションの大切な土台です。

たとえば、子どもが窓の外を見て「おっ」と声を出したとします。

大人が子どもの視線の先を見て、

「大きなバスが来たね」

と返せば、子どもの関心に沿ったやり取りが生まれます。

反対に、大人が子どもの見ているものとは関係なく、

「ほら、こっちのおもちゃで遊ぼう」

と注意を変えてしまうと、子どもの働きかけとのつながりは弱くなります。

大切なのは、大人が一方的に情報を与えるだけでなく、子どもの表情、声、視線、動きに気づき、それに合った反応を返すことです。

完璧に気持ちを読み取る必要はありません。

「これが気になったのかな」
「もう一回やりたいのかな」
「びっくりしたね」

と、子どもの反応を受け止めようとすること自体が、やり取りを育てます。


7.働きかけるときの注意点

複数の感覚を使うことは、刺激をできるだけ多くすればよいという意味ではありません。

大きな声を出しながら、何度も触れ、目の前で物を動かすと、子どもにとって情報が多すぎることもあります。窓も全部一度に全開にすると、少々風が強すぎます。

まずは短い言葉で伝え、必要に応じて指さしや見本を加えるなど、子どもの様子に合わせましょう。

また、触られることを嫌がる子どももいます。突然体に触れるのではなく、正面や視界に入る位置から近づき、手を差し出すなど、その子が受け入れやすい方法を選ぶことが大切です。

子どもが目をそらす、体を離す、耳をふさぐ、落ち着かなくなるといった様子を見せた場合は、刺激を減らして休ませます。

複数の感覚への働きかけは、子どもを無理に動かすためではなく、理解しやすい形で情報を届けるためのものです。


8.まとめ

感覚は、子どもが外の世界を知るための窓です。

子どもに何かを伝えるときは、言葉で聞かせるだけでなく、実物を見せる、場所を指さす、実際に触れて確かめるなど、複数の感覚を組み合わせることで理解しやすくなる場合があります。

ただし、大切なのは刺激の数ではなく、その子に合った分かりやすい伝え方です。

また、子どもに働きかけるだけでなく、子どもからの声、表情、視線、指さしに大人が応えることも重要です。

子どもが働きかけ、大人が応え、子どもが再び反応する。

この社会的随伴性のあるやり取りによって、子どもは「人に伝えることの意味」を学んでいきます。

見せる。
聞かせる。
触れて確かめる。
そして、子どもの反応に応える。

こうした日々の小さなやり取りが、子どもの理解、コミュニケーション、人との関わりを育てていくのです。


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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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