「モデリング教育」とは?子どもは大人の姿から学んでいる
子どもに何かを教えるとき、私たちはつい、
「ちゃんと挨拶しようね」
「順番を守ろうね」
「お友達には優しくしようね」
と言葉で伝えようとします。
もちろん、言葉で説明することは大切です。
しかし、子どもは大人から言われたことだけを学んでいるわけではありません。
周囲の大人がどのように話し、行動し、人と関わっているのかを見ながら学んでいます。
このように、他者の行動を観察し、それを手本として学ぶことを「モデリング」といいます。
モデリング教育とは
モデリング教育とは、子どもが大人や周囲の人の行動を観察し、それをまねながら新しい行動や態度を身につけていく仕組みを、教育に生かす考え方です。
例えば、大人が誰かに会ったときに笑顔で、
「おはようございます」
と挨拶している姿を繰り返し見ていれば、子どもも自然と挨拶をまねるようになることがあります。
おもちゃを片づけるときも、
「片づけなさい」
と言うだけではなく、大人が一緒に片づけながら、
「使ったものはここに戻そうね」
と見せることで、子どもは具体的な行動を学びやすくなります。
つまり、大人自身が「お手本=モデル」になることが、モデリング教育の基本です。
バンデューラの「観察学習」
モデリングを理解するうえで重要な心理学者が、カナダ出身の心理学者アルバート・バンデューラです。
バンデューラは、人間は自分自身が直接体験したことだけでなく、他人の行動やその結果を観察することによっても学習すると考えました。
これを「観察学習」といいます。
有名なのが「ボボ人形実験」です。
子どもたちに、大人がボボ人形に対して攻撃的な行動をする様子を見せると、その後、子どもたちにも似た行動が見られました。
この研究は、子どもが大人の行動を観察し、それを学習する可能性を示した代表的な研究として知られています。
これは教育を考えるうえでも重要です。
子どもは、大人が「何を言っているか」だけではなく、実際に何をしているかをよく見ています。
※参考(Simply Psychology)アルバート・バンデューラの社会的学習理論
バンデューラの4つの下位過程
バンデューラは、観察した行動が実際の学習や行動につながるまでには、主に4つの過程があると考えました。
1.注意過程
まず、その行動に注意を向けることです。
どれだけ良いお手本を見せても、子どもが見ていなければ学習にはつながりにくくなります。
例えば、大人が楽しそうに絵本を片づけていれば、子どもが興味を持って見るかもしれません。
2.保持過程
次に、見た行動を記憶しておくことです。
「ここに入れていたな」
「こうやって挨拶していたな」
と、観察した行動を覚えておく必要があります。
3.運動再生過程
覚えた行動を、実際に自分でやってみることです。
見ただけですぐに同じことができるとは限りません。
子どもの発達や身体能力によっては、何度も試したり、大人が手伝ったりする必要があります。
4.動機づけ過程
最後が、「自分もやってみよう」と思うことです。
例えば、友達が片づけをして先生から認められている姿を見ると、
「自分もやってみよう」
と思うことがあります。
このように、自分が直接ほめられなくても、他人が認められる姿を見て行動が促されることがあります。
これを「代理強化」と呼びます。
バンデューラの観察学習では、この注意・保持・運動再生・動機づけの4つが重要な過程とされています。
幼児教育でモデリングが重要な理由
幼い子どもは、まだ言葉だけですべてを理解することができません。
そのため、
「こうしなさい」
と説明するよりも、実際に大人がやって見せた方が分かりやすいことがたくさんあります。
例えば、
挨拶してほしいなら、大人が気持ちよく挨拶する。
人の話を聞いてほしいなら、大人も子どもの話を途中で遮らずに聞く。
「ありがとう」と言える子になってほしいなら、大人自身が日常の中で「ありがとう」を使う。
物を大切にしてほしいなら、大人も物を丁寧に扱う。
こうした日々の行動そのものが、子どもにとっての教材になります。
逆に言えば、大人が、
「人には優しくしなさい」
と言いながら、周囲の人に乱暴な言葉を使っていれば、子どもは言葉よりもその姿を学んでしまう可能性があります。
子どもは「言われたこと」以上に「見たこと」を学ぶ
モデリング教育を考えるうえで、とても大切なのは、子どもの前で完璧な大人を演じることではありません。
大人も失敗します。
間違えることもあります。
そのとき、
「今の言い方はよくなかったね。ごめんね」
と謝る姿を見せることも、一つの大切なモデリングです。
失敗したあとにやり直す。
人に感謝する。
困っている人を助ける。
分からないことを調べる。
うまくいかなくても、もう一度挑戦する。
そうした大人の姿を、子どもは日々見ています。
幼児教育では、何を教えるかだけではなく、大人自身がどのような姿を子どもに見せているかを考えることも大切です。
子どもは、大人が思っている以上に周囲をよく観察しています。
そして、大人の日常の行動そのものが、子どもにとって大きな学びになっているのです。
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