自律訓練法とは 忙しい保護者にも役立つ心と体のリラックス法
子育てをしていると、
「一日中気が張っている」
「子どものことを考えて、なかなか頭が休まらない」
「疲れているのに、体の力が抜けない」
ということもあるのではないでしょうか。
そんなとき、自分自身で心と体の緊張を少しずつゆるめていく方法の一つが、「自律訓練法」です。
自律訓練法は、特別な道具を必要とせず、静かに自分の体へ意識を向けながらリラックスする方法です。
自律訓練法とは
自律訓練法は、1932年にドイツの神経科医ヨハネス・ハインリヒ・シュルツによって体系化されました。
シュルツは催眠状態にある人が、手足について「重たい」「温かい」と感じることに注目し、そのような感覚を自分自身でつくり出す方法を研究しました。
そこから生まれたのが、自分の体に静かに注意を向けながら、心身をリラックスさせていく自律訓練法です。
日本自律訓練学会では、自律訓練法によって余分な緊張のない状態を自分でつくれるようになることを目的とし、緊張や不安の軽減、疲労回復、集中力などへの効果が期待されるとしています。ただし、効果には個人差があります。
※参考(港区ホームページ)自律訓練法
まずは楽な姿勢をつくる
自律訓練法を行うときは、まず体の力を抜きやすい姿勢をとります。
例えば、
椅子にゆったり座る
ベッドや布団に仰向けになる
といった姿勢です。
椅子の場合は、足を少し開き、手を膝の上などに楽に置きます。
そして、目を軽く閉じます。
港区では、1回の練習時間の目安を3~5分程度としています。長時間頑張るよりも、短い時間で無理なく取り組むことがポイントです。
ゆっくり呼吸して気持ちを落ち着ける
まず、ゆっくり呼吸します。
少し息を吸って、ゆっくり長めに吐くことを数回繰り返します。
その後、心の中で、
「気持ちが落ち着いている」
と静かに繰り返します。
ここで大切なのは、
「絶対に落ち着かなければ」
と頑張らないことです。
少しでも、
「さっきより楽になったかな」
と思えれば十分です。
自律訓練法は、無理やりリラックスするための方法ではありません。
体や心の変化を静かに感じていく方法です。
手や足に静かに注意を向ける
気持ちが少し落ち着いてきたら、自分の手や足に注意を向けます。
例えば、
右手
左手
右足
左足
というように順番に、
「これが自分の右手だな」
「今、左足はこんな感じなんだな」
と感じてみます。
このように、何かを変えようとするのではなく、今の体の状態をそのまま感じることを**「受動的注意集中」**といいます。
自律訓練法では、この「頑張って変えようとしない」という姿勢が大切です。
「手足が重たい」と感じてみる
次に、手や足の重さに注意を向けます。
例えば右手に意識を向けながら、
「右手が重たい」
と心の中でゆっくり繰り返します。
本当に重くしようと力を入れるのではありません。
腕の力が抜けて、
「なんとなく重いかな」
「少しだるいような感じがする」
という程度で構いません。
右手から左手、右足、左足へと、少しずつ意識を広げていきます。
これは、体の緊張がゆるんでいく感覚に気づくための練習です。
「手足が温かい」と感じてみる
重さに慣れてきたら、次は温かさです。
手に注意を向けながら、
「右手が温かい」
と心の中でゆっくり繰り返します。
こちらも、
「絶対に温かくしなければ」
と思う必要はありません。
「少しポカポカする」
「なんとなく温かい気がする」
程度で十分です。
右手、左手、右足、左足へと、ゆっくり注意を広げていきます。
港区の紹介でも、この重さと温かさを感じる練習が中心となっています。
終わった後は「消去動作」をする
自律訓練法でとても大切なのが、練習の終わり方です。
リラックスしたまま急に立ち上がると、ぼんやりした感じや、だるさが残ることがあります。
そのため、就寝前以外は**「消去動作」**を行います。
例えば、
両手をグー・パーと数回動かす
↓
腕を曲げたり伸ばしたりする
↓
大きく伸びをする
↓
深呼吸して目を開ける
といった動きを行います。
これによって、リラックスした状態から日常の活動へ戻していきます。
寝る直前で、そのまま眠る場合には、消去動作をせずに休む方法も紹介されています。
どんな人に役立つ?
自律訓練法は、
仕事や子育てで緊張することが多い人
疲れているのに気持ちが切り替わらない人
不安や緊張を感じやすい人
自分でリラックスする方法を身につけたい人
ストレスへのセルフケア方法を持っておきたい人
などに活用されています。
医療だけでなく、教育、スポーツ、職場のメンタルヘルスなど幅広い分野で利用されています。
子育て中のお父さん、お母さんにも、
「子どものために何かをする時間」ではなく、「自分自身を整える時間」
として役立つかもしれません。
親が少し落ち着くことができれば、子どもの行動にも余裕を持って向き合いやすくなります。
自分のために数分休むことは、決して悪いことではありません。
無理に行わないことも大切
自律訓練法は、誰にでも必ず適している方法ではありません。
日本自律訓練学会では、病気や症状によっては、一部の練習を行わない方がよい場合があるとしています。
循環器や呼吸器の病気などでは特定の練習に注意が必要で、練習中や練習後に不安が強くなる場合などにも慎重な対応が必要です。
持病がある方や現在治療を受けている方は、自己判断だけで行わず、主治医などに相談してから取り入れる方が安心です。
また、練習中に、
強い不安
息苦しさ
動悸
気分の悪さ
などを感じた場合には、無理に続ける必要はありません。
子どもには無理に行わせない
「子どものストレスにも使えるのでは?」と思う保護者の方もいるかもしれません。
実際、自律訓練法は子どもへの活用についても研究されていますが、大人とまったく同じ方法をそのまま行えばよいわけではありません。日本自律訓練学会でも、小児への適用には留意点や工夫が必要であることが専門的に検討されています。
特に幼い子どもの場合には、
「力をふわっと抜いてみよう」
「ゆっくり休もう」
といった簡単なリラクゼーションや、安心できる大人との関わりを大切にする方が自然な場合もあります。
子どもの強い不安や心身の症状を改善する目的で行うのであれば、家庭だけで判断せず、専門家に相談しましょう。
お父さん、お母さんも「頑張りすぎない」
子育てでは、
「もっとちゃんとしなければ」
「子どものために頑張らなければ」
と思う場面がたくさんあります。
しかし、親自身がずっと緊張したままでは、心も体も疲れてしまいます。
自律訓練法は、その緊張を無理やりなくす方法ではありません。
数分間、自分の体に静かに意識を向け、
「少し力が抜けてきたかな」
と感じてみる。
それだけでもよいのです。
大切なのは、リラックスすることまで頑張らないこと。
子どもの心や体を大切にするのと同じように、お父さん、お母さん自身の心と体にも目を向ける。
自律訓練法は、忙しい毎日の中で自分を少し休ませるための、セルフケアの選択肢の一つなのです。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)