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インクルージョンとは?すべての子どもを包み込む保育と教育

インクルージョンとは?すべての子どもを包み込む保育と教育

どもには、一人ひとり違いがあります。

得意なことや苦手なこと、発達の速さ、興味、ことば、家庭環境などは、誰一人として同じではありません。

インクルージョンとは、こうした違いを問題として取り除くのではなく、違いがあることを前提に、すべての子どもを仲間として受け入れ、一人ひとりに必要な援助を保障しようとする考え方です。

※参考(文部科学省)特別支援教育の現状


インクルージョンとは

「インクルージョン」には、「包み込む」「含める」といった意味があります。

保育や教育におけるインクルージョンとは、障害の有無や発達の違いなどを理由に子どもを分けるのではなく、できる限り同じ環境で生活し、遊び、学べるようにする理念です。

ただし、全員にまったく同じことをさせるという意味ではありません。

例えば、集団への指示だけでは理解しにくい子どもには、絵や写真で予定を示す。

音や人の多さに疲れやすい子どもには、静かに休める場所を用意する。

ことばで気持ちを伝えることが難しい子どもには、指差しやカードなど別の方法を認める。

このように、同じ場に参加するために必要な方法や援助は、子どもによって異なるという考え方が重要です。


サラマンカ宣言が示した考え方

インクルーシブ教育を世界的に広める大きなきっかけとなったのが、1994年にスペインのサラマンカで採択された「サラマンカ声明」です。

国連の専門機関であるユネスコとスペイン政府が開催した国際会議で示され、子どもたちは可能な限り、困難や違いにかかわらず共に学ぶべきだという原則が打ち出されました。

また、教育機関の側が子どもの多様なニーズを認め、それに応じる必要があるとされました。つまり、子どもを既存の教育へ無理に合わせるのではなく、教育環境の方を子どもに合わせて変えていくという方向性が示されたのです。


「統合」と「インクルージョン」の違い

インクルージョンと似た考え方に「統合教育」があります。

統合教育では、障害などのある子どもが、すでにある集団や教育環境へ入ることが重視されます。

一方、インクルージョンでは、その子どもが集団に合わせられるかどうかだけを問題にしません。

園の環境や活動方法、周囲の関わり方を見直し、すべての子どもが参加しやすい環境をつくります。

同じ教室にいても、活動に参加できず、困っている状態のままであれば、十分なインクルージョンとはいえません。

その子どもが安心して過ごし、自分なりの方法で活動や人間関係に参加できているかが大切です。


日本ではどのように取り入れられている?

日本の文部科学省は、障害のある子どもと障害のない子どもが、可能な限り共に教育を受けられる環境を整えることを進めています。

同時に、一人ひとりの教育的なニーズに応じられるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校など、連続性のある多様な学びの場を整備する方針を示しています。

また、本人が学習や生活に参加するために必要な変更や工夫である「合理的配慮」の提供も、インクルーシブ教育に必要な要素とされています。

幼児教育や保育でも、一人ひとりの発達や状態に合わせた支援が重視されています。

保育所保育指針解説では、障害のある子どもの発達過程や状態を把握し、適切な環境のもとで保育を行うこと、家庭や関係機関と連携することが示されています。

幼稚園でも、必要に応じて個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成し、組織的・継続的に支援することが重要とされています。


インクルーシブな保育の具体例

インクルージョンは、特別な活動を一度行えば完成するものではありません。

日々の環境や関わり方の中で実現していくものです。

例えば、制作活動では、全員に同じ道具や完成形を求めるのではなく、太いクレヨンや握りやすい道具を用意する方法があります。

集団活動では、全員が同じ姿勢で参加することを求めず、椅子、床、立った状態など、その子どもが参加しやすい方法を認めることも考えられます。

ことばによる説明だけでは分かりにくい場合には、実物、写真、身振りを一緒に使います。

子どもが集団に参加できないときも、すぐに「わがまま」「協調性がない」と判断せず、音、光、活動の難しさ、見通しの持ちにくさなど、背景にある理由を考えます。

こうした工夫は、特定の子どもだけではなく、集団にいるほかの子どもにとっても分かりやすく、過ごしやすい環境につながります。


子どもたちにどのような影響がある?

インクルーシブな環境では、子どもたちは、自分とは違う特徴や方法を持つ人と日常的に関わります。

ある子は、ことばではなく身振りで気持ちを伝える。

ある子は、大きな音が苦手で少し離れた場所から参加する。

ある子は、得意なことでは友達を助け、苦手な場面では友達に助けてもらう。

こうした経験を通して、子どもは「みんなが同じである必要はない」ことを自然に学びます。

助ける側と助けられる側を固定せず、それぞれに得意なことと苦手なことがあると知ることは、多様な人と共に生きるための土台になります。

一方で、ただ同じ場所に集めるだけでは、子ども同士の理解や関係が自然に育つとは限りません。

保育者が必要な援助を行い、それぞれの子どもの思いや行動をつなぐことが大切です。


一人ひとりを見ることが出発点

インクルージョンは、障害のある子どもだけのための考え方ではありません。

集団の指示では動きにくい子。

ことばで気持ちを表すことが苦手な子。

新しい場所に慣れるまで時間がかかる子。

日本語以外の言語を家庭で使っている子。

得意なことが突出している子。

すべての子どもに、それぞれ異なる教育上のニーズがあります。

大切なのは、子どもを「普通」に近づけることだけを目標にしないことです。

その子どもが何に困り、何を得意とし、どのような援助があれば参加できるのかを考える。

そして、子どもに合わない部分があれば、活動や環境の方を変えてみる。

インクルージョンとは、誰かを特別扱いすることではありません。

すべての子どもが仲間として大切にされ、自分に必要な援助を受けながら成長できる環境をつくることです。

子どもたちが違いを隠すのではなく、それぞれの違いを持ったまま一緒に過ごせること。

それが、これからの保育や幼児教育に求められる大切な視点なのです。


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