幼稚園のクラスは何人が適正?集団教育と個別教育、それぞれの役割
幼稚園や認定こども園を選ぶ際、
「1クラスに何人くらいいるのだろう」
「先生は一人ひとりを見られるのだろうか」
と気になる保護者の方もいるのではないでしょうか。
クラスの人数は、単に「少なければよい」「多いほどにぎやかでよい」と決められるものではありません。
友達と関わるためには、ある程度の集団が必要です。一方で、人数が多くなりすぎれば、先生が一人ひとりの発達や気持ちを丁寧に見ることが難しくなります。
今回は、幼児教育におけるクラスの適正規模と、集団教育・個別教育それぞれの役割について考えます。
幼稚園の1クラスは何人まで?
日本の幼稚園では、長い間、幼稚園設置基準によって、1学級の幼児数は原則35人以下とされてきました。
しかし、2026年4月1日から、この基準は原則30人以下へ引き下げられました。改正後も施設や人材確保への対応を考慮し、2032年3月31日までは従来の35人基準を利用できる経過措置が設けられています。つまり、現在は30人を基本としながら、園によっては35人までのクラスも残る移行期間です。
文部科学省は、幼稚園設置基準を「当面必要な最低限の水準」と位置づけています。そのため、30人は教育上の理想的な人数を示すものではなく、原則として超えてはならない上限と考える必要があります。
実際には少子化などにより、2024年5月時点で全国の幼稚園の95.7%が、すでに1学級30人以下となっていました。今回の改正は、こうした現状や、特別な配慮を必要とする子どもの増加を踏まえたものです。
※参考(文部科学省)幼稚園設置基準の見直しについて
35人は国際的に見ても多かった
各国では、クラスの定員だけでなく、子どもに対して何人の大人を配置するかも含めて制度が設計されています。そのため、単純な人数だけで比較することはできません。
それでも、OECDが2026年に公表したギリシャの教育政策に関する報告では、幼児教育における「教師1人に対して最大25人」という規模でさえ、OECD諸国の中では比較的多いと評価されています。
この点を踏まえると、日本で長く続いた「1学級35人、原則教員1人以上」という基準は、国際的に見ても大きな集団だったと考えられます。
OECDも、クラスの規模や子どもと職員の比率は、先生が子どもと関係を築き、発達や学びを支えるための基礎的な条件になるとしています。
研究では何人程度が適正とされている?
クラスの適正人数については、すべての園や子どもに当てはまる、唯一の正解があるわけではありません。
子どもの年齢、発達、活動内容、教室の広さ、補助教員の人数、配慮を必要とする子どもの有無などによって、望ましい人数は変わります。
国内の研究では、幼稚園の最適人数について、3歳児は15人または20人、4歳児と5歳児は25人程度とする結果が示されています。また、過去の研究を整理すると、3歳児は10~20人、4・5歳児は20~25人程度を適正とする報告が多く見られます。
年齢別におおまかに整理すると、次のような範囲が一つの目安になります。
3歳児:10~20人程度
4歳児:15~25人程度
5歳児:20~30人程度
3歳児は、園生活そのものに慣れ、身の回りのことを先生に助けてもらう場面が多いため、比較的小さな集団が望まれます。
年齢が上がるにつれて、友達同士で遊びを進めたり、役割を分担したりできるようになるため、少し大きな集団にも意味が生まれます。
ただし、これは全国共通の公的基準ではなく、研究や自治体の検討から見えてくる目安です。
自治体が設定する「適正規模」の例
自治体の中には、法律上の上限とは別に、地域の幼稚園における望ましい人数を検討しているところがあります。
例えば大阪狭山市は、市立幼稚園の適正規模として、
3歳児:10~19人
4歳児:15~24人
5歳児:15~29人
を1学級当たりの目安とし、それぞれの年齢で2~3学級を確保する方針を示しています。
このように、幼児教育ではクラスが大きすぎることだけでなく、小さすぎることにも課題があります。
人数が極端に少ないと、さまざまな性格や考え方の友達と出会ったり、遊びのグループを変えたりする機会が限られる可能性があるからです。
そのため、適正規模とは単に人数を減らすことではなく、一人ひとりを丁寧に見ながら、集団でしか得られない経験も保障できる人数と考える必要があります。
集団教育だから得られるもの
幼稚園や認定こども園での集団生活には、家庭や一対一の教育だけでは得にくい、大切な経験があります。
子どもは友達と遊ぶ中で、自分の思いを伝え、相手の考えを聞き、時には意見をぶつけ合います。
遊びのルールを決める。
使いたいおもちゃを譲り合う。
一人ではできないものを協力してつくる。
思いどおりにならない気持ちを経験する。
けんかをしたあと、もう一度一緒に遊ぶ。
こうした経験を通して、社会性、協調性、自己調整力、コミュニケーション能力などが育っていきます。
幼稚園教育要領解説でも、子どもは友達との関わりの中で思いや考えを共有し、共通の目的に向かって工夫・協力することで、協同性を育てていくとされています。
集団には、一人では生まれない刺激があります。
自分とは違う考え方に出会い、友達の姿を見て新しい遊び方を知り、ときには友達に憧れて挑戦することもあります。
この点は、集団教育の大きな価値です。
集団教育には限界もある
一方で、クラスの人数が多くなるほど、先生が一人の子どもに向き合える時間には限界が生まれます。
同じ年齢でも、子どもの発達や興味は一人ひとり異なります。
手先を使うことが得意な子もいれば、体を動かしながら学ぶ方が理解しやすい子もいます。
集団の中では落ち着かなくても、一対一になるとよく話し、集中できる子もいます。
集団教育では、クラス全体の生活や安全を守りながら活動を進める必要があります。そのため、すべての活動を、毎回一人ひとりの興味、理解度、発達の速さに合わせて変更することは難しくなります。
これは先生の努力不足ではなく、集団教育が持つ構造上の限界です。
また、おとなしく集団に参加できている子どもは、「困っていない子」に見えやすいことがあります。
しかし実際には、分からないまま周囲に合わせていたり、自分の気持ちを表現できずにいたりする場合もあります。
人数だけで教育の質が決まるわけではありませんが、一人ひとりを理解するための時間と大人の目が必要なのは確かです。
※関連 「できそうで、できない」が重要 個別教育がもたらす子どもの飛躍
完全個別の幼児教育だからできること
私たちの「リコポ学習の土台プログラム」は、講師と子どもが一対一で取り組む、完全個別の幼児教育です。
集団と同じ内容を、個別に繰り返すことが目的ではありません。
一人ひとりの発達、得意なこと、苦手なこと、興味、性格、生活の様子を見ながら、その子どものための教育プランを考えます。
例えば、同じ「文字を書く」という目標でも、その前に必要な力は子どもによって異なります。
手先を動かす力が必要な子。
姿勢を保つ力を育てたい子。
ことばや経験を増やすことが先に必要な子。
失敗への不安を減らし、自分から挑戦する経験が必要な子。
一対一だからこそ、表面的に「できる・できない」だけを見るのではなく、なぜ難しいのか、どこから育てればよいのかを丁寧に考えられます。
子どもの表情や小さな変化を見ながら、その場で活動の難しさや進め方を変えることもできます。
できることを一方的に増やすのではなく、その子の成長に必要な経験を積み重ね、将来の学習を支える土台をつくることが目的です。
※関連 私たちの強み・サービス内容
集団教育と個別教育は、どちらか一方ではない
集団教育と個別教育は、どちらか一方を選び、もう一方を否定するものではありません。
集団の中では、友達との関わり、協力、ルール、さまざまな価値観との出会いを経験できます。
個別教育では、一人ひとりの発達や理解に合わせ、必要なところへ丁寧に働きかけられます。
それぞれに役割があります。
幼稚園や保育園で集団生活を経験しながら、個別教育によってその子自身の課題や可能性に深く向き合う。
両方を組み合わせることで、子どもの成長をより多面的に支えることができます。
クラスの人数を見るときに大切なのは、「何人なら絶対によい」と数字だけで判断することではありません。
先生が子どもをどのように見ているか。
必要に応じて補助する大人がいるか。
子どもが安心して自分を表現できているか。
集団の中で埋もれていないか。
そして、その子ども自身に合った学びの機会があるか。
こうした点を合わせて考える必要があります。
子どもは、それぞれ異なる速度と方法で成長します。
集団のよさを大切にしながら、一人ひとりをしっかり見る教育も用意すること。
それが、幼児期の豊かな成長を支えるために大切な視点なのです。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)