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「ボディ・イメージ」とは?学びや自信を支える“身体の地図”

「ボディ・イメージ」とは?学びや自信を支える“身体の地図”

「よく転ぶ」「ぶつかりやすい」「力加減が極端になる」──幼児教育の現場では、こうした相談を受けることが少なくありません。成長の個人差の範囲に見えることもありますが、その背景には ボディ・イメージ(身体図式) という重要な発達要素が関係していることがあります。

ボディ・イメージとは、自分の体の大きさや形、手足の位置、曲げ伸ばしの範囲、力の入れ具合、身体の中心(軸)などを、頭の中で感覚的に把握する力のことです。この感覚は、走る、跳ぶ、座る、書くといった運動面だけでなく、注意力や学習姿勢、チャレンジ意欲にも大きな影響を与えます。

<本日の目次>

  1. ボディ・イメージとは
  2. ボディ・イメージと関わる能力
  3. ボディ・イメージを育てるアプローチ
  4. 幼児教育の土台としての重要性

※ 今回のボディイメージは前に紹介した感覚統合の3つの感覚に密接に関係しています。
  感覚統合は“学びの土台”。「感覚」の育成が学習意欲を育てる(触覚)
  学習意欲と姿勢は“平衡感覚”から育つ(平衡感覚)
  固有覚の育ちと、子どもの「身体の使い方」→学習の土台へ(固有覚)


ボディ・イメージとは——“身体の地図”を描く能力

ボディ・イメージとは、子どもが「自分の身体をどのように理解しているか」という内的な感覚です。自分の手足の長さ、身体の大きさ、動く範囲、曲げ伸ばしの角度、力の入れ具合、身体の中心(軸)の位置などを、頭の中で自然に把握していく力を指します。

多くの動きは、子ども自身がその感覚を言語化して理解しているわけではありません。しかし、体の位置や距離感、力加減を感じ取ることで、走る、跳ぶ、座る、物をつかむといった動作が滑らかになります。

●ボディ・イメージに含まれる主な感覚

必要な部分だけ短くまとめると、次のような身体感覚が含まれます。

  • 手足や体のサイズ・位置・部位のイメージ
    (例:すき間を通るときに身体を傾ける、机の端に手を置かずに作業できる)
  • 曲げ伸ばしの角度や力加減のイメージ
    (例:ボールを投げるときの強さ、筆圧の調整、積み木を倒さない力加減)
  • 身体の軸の感覚
    (例:姿勢が崩れにくい、バランスを保ちやすい、ふらつかずに歩ける)

これらが未熟だと、ぶつかりやすい、転びやすい、動作のぎこちなさ、手先の不器用さ、姿勢の不安定さといった様子が見られやすくなります。

※発達のピラミッドでもボディイメージはとても重要で、土台部分にあたります。
 見て動く力とボディイメージ 中層発達を遊びで育てるヒミツ

発達の階層構造のピラミッド。下から順に発達

ボディ・イメージと関わる能力—運動・認知・意欲まで広範囲に影響

ボディ・イメージは、単に身体操作の問題にとどまりません。
運動企画、チャレンジ意欲、視空間認知、注意力など、子どもの多くの能力と密接に結びついています。


●運動企画(どう動くかをイメージし、手順を組み立てる力)

運動企画とは「身体をどのように動かすかを事前にイメージし、実際に動かす力」です。

たとえば、鉄棒にぶら下がる前に手の位置を決めたり、ジャングルジムを登るときに「どこに手をかけるか」を無意識に考えたり、服を着る手順を組み立てたりする力です。

この能力には、

  • 手順の組み立て
  • 動く範囲や力の加減の調整
  • リズムやタイミングの感覚
    といった要素が含まれます。

ボディ・イメージが育っている子は、複雑な動作でも自然に一連の動きとして行えますが、未熟な場合は動作が途中で止まったり、ぎこちしくなったり、スピードが極端にゆっくりになるなど、動きに迷いが生まれます。


●チャレンジ意欲・動機づけ

身体の感覚が整っていないと、子どもは活動の中で失敗しやすくなり、「自分は苦手」という感覚が早い段階で形成されてしまうことがあります。

逆に、ボディ・イメージが育つと “できた” 経験が積み重なり、成功体験が自信となって、運動だけでなく遊びや学習への意欲が高まります。


●視空間認知

ボディ・イメージは、視覚と身体の関係を理解する力にも影響します。
空間の中で物の位置を把握したり、障害物を避けたり、机の端を落とさずに作業したりする力が向上します。

視空間認知は、文字を書く位置、図形の理解、教室の中での位置取りなど、学習面にも大きな影響を及ぼします。


●注意の集中と持続(定位)

定位とは「視覚や触覚で、必要な場所に注意を向け続ける力」です。
視線を向けるべきものを見続けられたり、手先の感覚に集中できたりすると、活動が安定します。

ボディ・イメージが未熟な場合、見たい場所を見続けられなかったり、手元の感覚が定まりにくく、動作全体が落ち着かなくなります。

また、周囲の多くの情報の中から「必要な刺激だけに注意を向ける」力にも関係しています。
身体感覚が育っていると、余計な刺激を自然と無視し、活動に集中しやすくなります。逆に未成熟だと、注意が散漫になりやすくなります。


ボディ・イメージを育てるためのアプローチ

ボディ・イメージは、特別な練習をしなくても、日々の遊びや生活動作の中で自然に育つ力です。

子どもは、身体を大きく動かしたり、手先を使ったり、揺れたり、バランスを取ったりする経験から、「自分の身体ってこう動くんだ」という感覚を獲得していきます。

たとえば、くま歩きやワニ歩き、横に転がる遊び、重いものを押す経験、トンネルをくぐる動きなどは、手足の位置や身体の軸を感じるよい機会になります。
また、ボール投げや風船遊びは、視線と手の動き、身体のバランスを同時に使うため、ボディ・イメージの発達を助けます。

生活動作も大切な経験です。着替えや手洗い、食事の準備、雑巾がけ、荷物を運ぶといった行動は、身体の動きを自然に調整する力を育てる“宝庫”です。身体を使う経験を積むほど、手足の操作や姿勢の安定、空間認知が整いやすくなります。

私たちも教育プランの中にこういう動作を積極的に取り入れ、また保護者の方にもアドバイスしています。

ボディイメージについて(奈良県発達支援センター)
※子どもの身体図式(ボディ・イメージ)とは何か、感覚統合との関係、子どもが苦手に感じやすい動き、遊びなど、とても詳しくわかりやすく解説してくれています。


ボディ・イメージは幼児期の能力すべての“土台”になる

ボディ・イメージが育つと、運動がスムーズになるだけでなく、注意力や集中力、視空間認知、チャレンジ意欲、学習姿勢といった幅広い力が安定していきます。幼児期に「身体の地図」が整うことで、活動の効率も上がり、「できた」という成功体験が積み重なり、さらに挑戦する意欲が湧きやすくなります。☆上記に触れている発達のピラミッドの中層にもあたる大事な「教育」です。

逆に、身体感覚が未熟な状態が続くと、苦手意識が強くなり、活動へのモチベーション低下や学びの意欲の低さにつながることがあります。

リコポ幼児教育では、こうした身体感覚の発達も含め、お子さま一人ひとりの特性とペースに合わせて丁寧にサポートしています。「運動が苦手」「姿勢が安定しない」「集中が続きにくい」といったお悩みも、ボディ・イメージの課題が背景にあることがありますので、気軽にご相談ください。


今日のおさらいQ&A3問

Q1. ボディ・イメージが未熟だと、どんな日常の困りごとが起こりやすいですか?

→体の位置や動きの範囲がつかみにくくなるため、「よくぶつかる」「転びやすい」「姿勢が崩れやすい」「力加減がうまくいかない」といった行動が目立つことがあります。手先の動作もぎこちなくなり、ボール投げや色塗りなどの細かな動作が苦手に見えることもあります。


Q2. ボディ・イメージは運動以外のどんな能力と関係していますか?

→視空間認知や注意の向け方(定位)、多くの情報から必要な情報だけを選び取る力、そしてチャレンジ意欲・学習意欲など広い範囲と関係しています。身体の感覚が整うことで、活動への自信が生まれ、集中力や意欲の向上にもつながります。


Q3. ボディ・イメージを育てるために、家庭でできることはありますか?

→特別な道具がなくても、くま歩き・ワニ歩き、風船やボールを使った遊び、トンネルくぐり、転がる遊びなど、身体をしっかり使う経験が効果的です。また、着替えや手洗い、雑巾がけなどの生活動作も、手足の位置や身体の軸を感じる力を自然に育てます。


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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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