「話す」から「読む・書く」へ、あせらない発達の道すじ
言葉が広がる瞬間
子どもが初めて「ママ」「パパ」とはっきり言えたとき、ほとんどの大人は胸がいっぱいになります。そこから会話が少しずつ広がり、「今日ね」「これ楽しい」「いやだ!」と自分の気持ちを言葉で伝えられるようになる。
そして多くの保護者が自然に考えるのが――
「次は、文字だよね」
ということです。
しかし、ここで立ち止まって考えたいのは、話すことができるようになったからといって、すぐに書けるようになるわけではないという事実です。言葉の世界は「話す → 読む → 書く」と広がっていきますが、その一歩一歩には、子どもの体と心の準備が必要になります。
本記事では、「書けるようにさせる」ではなく、文字の楽しさを知ることから始める学びについて考えていきます。
目次
- 「話せる=書ける」ではない理由
- 書くことの“見えない前提能力”
- 文字はトレーニングではなく、世界への扉
- 大人の関わりがつくる「安心と楽しさ」
- 絵本と日常が文字の学びになる
- 就学前のひらがな――できても、できなくても大丈夫
- まとめ:積み重ねは、やさしく確実に
1. 「話せる=書ける」ではない理由
話すことができるようになると、「じゃあ次はひらがな」と考えがちです。
塾や教材の広告でも「年中でひらがな完璧」「年長で漢字100字」などの言葉を目にします。
けれども、子どもの発達は直線ではありません。
話すことは、体全体を使ったコミュニケーションです。表情、声のトーン、ジェスチャー、相手の反応――これらが一体となって成り立ちます。一方で、書くことは、極めて繊細な運動と認知を同時に要求する活動です。
鉛筆を持ち、手首や指を細かく動かし、目で形を追い、頭の中で音と文字を結びつける。これは大人にとっては当たり前でも、子どもにとっては非常に高度なチャレンジなのです。
だからこそ、あせってはいけません。
「まだ書けない」ではなく、「いまは土台づくりの時期」と考えることが大切です。
※文字を書くことはボディイメージがとても大事です。
「ボディ・イメージ」とは?学びや自信を支える“身体の地図”
2. 書くことの“見えない前提能力”
文字を書く前には、実はたくさんの力が育っている必要があります。単なる「手の力」だけでは足りません。代表的なものを、少し具体的に見てみましょう。
① 形を見分ける力
「ま」と「め」、「の」と「め」など、ひらがなは微妙な違いで別の文字になります。その違いを目でとらえる力が必要です。
② 目で追いかける力(視覚追従)
文字を書くとき、子どもはお手本を見て、それを自分の手で再現します。視線が安定していないと、線がどこからどこまでなのか分からなくなります。
③ 手先を細かく動かす力
鉛筆を軽く握り、線の太さや方向を調整するには、指の分離と微調整が不可欠です。粘土遊びやお絵かき、洗濯ばさみ遊びなどがここにつながります。
④ 文字と音の結びつき
「あ」は単なる形ではなく、「あ」という音とセットで理解される必要があります。これは読み聞かせや歌遊びを通して育ちます。
⑤ 腕を大きく動かす経験
小さな文字を書く前に、空中に大きく丸を描いたり、床にチョークで描いたりする“ダイナミックな動き”が土台になります。
⑥ 上下左右の理解
文字には向きがあります。「う」と「つ」、「く」と「へ」など、向きが変わると別の文字になります。空間の感覚がここで活きます。
これらはすべて、机に向かう練習だけで育つものではありません。遊びや生活の中で、自然に積み重なっていく力です。
※関連記事です。
固有覚の育ちと、子どもの「身体の使い方」→学習の土台へ
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3. 文字はトレーニングではなく、世界への扉
ここで大切にしたいのは、「文字=勉強」ではなく、「文字=世界を広げる道具」だという視点です。
子どもが街を歩いていて、「あ!ここにも“コンビニ”って書いてあるね!」と気づいた瞬間。絵本を読んでいて、「この“ねこ”って書いてあるのが、にゃーって鳴くの?」と尋ねる瞬間。
こうした出会いこそが、文字への本当の興味を育てます。文字はテストのための記号ではなく、自分の世界を広げる魔法の道具なのです。
4. 大人の関わりがつくる「安心と楽しさ」
文字の楽しさを知るためには、大人の関わりが欠かせません。ここで大切なのは、「教える人」ではなく、「一緒に楽しむ人」になることです。
例えば――
子どもが初めて自分の名前の一文字を書けたとき、ただ「上手だね」と褒めるだけでなく、
「これ、あなたの名前だね。ママは嬉しいな」
と気持ちを共有することが大事です。
この“共感”が、子どもにとっての原動力になります。できた喜びを分かち合うことで、文字は「評価されるもの」ではなく、「楽しいもの」になります。
※言葉の発達において、こちらも重要な視点です。
「共同注意」で育つ! 幼児教育に欠かせない親子のまなざし共有
5. 絵本と日常が文字の学びになる
文字の世界を広げる最高の入り口は、絵本の読み聞かせです。
読み聞かせでは、子どもは物語を楽しみながら、自然に文字のリズムや音のつながりを感じ取ります。「この音はこの形なんだ」と気づく瞬間は、勉強ではなく発見です。
また、街も大きな学びの場になります。看板、ポスター、スーパーの表示、駅の案内――そこには無数の文字があります。
「これは何て読むの?」
「このマークは何だと思う?」
こうした会話を重ねることで、子どもは“文字が生活の中にある”ことを体感します。ゆっくり楽しみながら読むことが、何よりの学びです。
※絵本教育についてはブログ→カテゴリー「絵本教育」でまとめています。
『しろいうさぎとくろいうさぎ』から考える絵本教育とシッター活用

6. 就学前のひらがな――できても、できなくても大丈夫
就学前にひらがながすべて書ける子もいます。もちろん、それは素晴らしいことです。けれども、書けないことは問題ではありません。
小学校に入ってから、十分に追いつけます。むしろ大切なのは、
- 文字に嫌悪感がないこと
- 「書いてみたい」と思える気持ちがあること
- 絵本や看板に興味を持てていること
これらがあれば、スタートラインとしては十分です。
無理に詰め込むよりも、土台を育てるほうが、長い目で見れば確実に力になります。
7. まとめ:積み重ねは、やさしく確実に
「話す」から「読む・書く」への道は、急いで駆け抜けるものではありません。一段ずつ、ゆっくり積み重ねていく道です。
まずは体の土台。
次に文字への興味。
そして「できた!」という小さな喜びの共有。
その先に、自然な読み書きが育っていきます。
もし少しだけユーモアを添えるなら――
ひらがなは、ブートキャンプではなく、ピクニックです。景色を楽しみながら、のんびり歩いていきましょう。
参考リンク
文部科学省「幼稚園教育要領」(言葉・表現の発達の考え方が整理されています)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/you/index.htm
パパママからよくある質問3つ
Q1.話せるようになったら、すぐにひらがな練習を始めた方がいいですか?
必ずしも必要ではありません。話す力と書く力は別の発達段階にあり、書くためには「目で形を追う力」「手先の微細運動」「上下左右の理解」「文字と音の結びつき」など多くの土台が必要です。焦ってドリルを始めるよりも、遊びや絵本、体を使った活動で土台を整えることが、結果的にスムーズな読み書きにつながります。
Q2.子どもが文字に興味を示さないのは問題ですか?
多くの場合、問題ではありません。興味は個人差が大きく、自然に芽生えるタイミングも違います。大切なのは「教え込む」ことではなく、絵本の読み聞かせや街の看板を一緒に眺めるなど、文字が生活の中にある体験を増やすこと。楽しさが先にあれば、興味は後からついてきます。
Q3.家庭でどんな関わりをすれば文字の学びを支えられますか?
「練習させる」より「一緒に楽しむ」を意識してください。例えば、名前の一文字を書けたら喜びを共有する、絵本をゆっくり読んで会話を広げる、看板や広告の文字をクイズにするなどが効果的です。また、粘土・お絵かき・ブランコ・雑巾がけなどの体験は、書くための土台(視覚・手先・体幹)を育てます。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)