【イヤイヤ期は“自立の嵐”】マーラーの分離・個体化過程とは?
「なんでも自分でやる!」
でも次の瞬間、
「ママ、やって…」
この矛盾に、戸惑ったことはありませんか。
昨日の記事では、**ドナルド・ウィニコット**の理論から、「抱えられる安心」が子どもの心の土台になることを書きました。
今日はその続きです。
子どもは、安心に包まれたあと、どうやって“自分”になっていくのか。
そのプロセスを理論化したのが、**マーガレット・マーラー**です。
さらに、しばしば混同される**ジョン・ボウルビィ**のアタッチメント理論との違いにも触れながら、イヤイヤ期との関係、そして教育現場でどう活かせるのかまで、わかりやすく整理します。
難しい話ではありません。
むしろ、日常の子どもの姿そのものの話です。
目次
- マーラーの分離・個体化過程とは何か
- イヤイヤ期は「再接近の葛藤」である
- アタッチメント理論との違い
- ウィニコットとのつながり
- 教育現場でどう活かすか
- まとめ ― 自立は“安心の上”に育つ
1.マーラーの分離・個体化過程とは何か
マーラーは、乳幼児が母親と心理的に一体の状態から、徐々に「私は私」という感覚を確立していく過程を観察しました。
このプロセスを「分離・個体化過程」と呼びます。
ポイントはこうです。
子どもは、最初から自立しているのではありません。
いったん深く“つながった状態”を経て、そこから少しずつ離れていきます。
特に重要なのが、1歳半から2歳頃に見られる「再接近期」です。
この時期の子どもは、
自分でやりたい
でも不安
近くにいてほしい
でも干渉は嫌
という、矛盾だらけの状態になります。
それが、いわゆるイヤイヤ期と重なるのです。
※関連記事です。
「イヤイヤ期」はなぜ起こるの?―心の発達に欠かせない大切な時期―
2.イヤイヤ期は「わがまま」ではない
イヤイヤ期は、単なる反抗期ではありません。
それは、
「私は私になろうとしている」
という心の作業です。
子どもは、母親や養育者から心理的に離れようとします。
しかし、完全に離れることはまだ怖い。
だから、
離れる → 不安になる → 戻る → また離れる
という揺れが起こります。
これを知らないと、
「素直じゃない」
「かわいくない」
と感じてしまうかもしれません。
しかし実際は、
“自立の嵐の真っ最中”
なのです。

3.アタッチメント理論との違い
ここでよく質問されるのが、アタッチメント理論との違いです。
ボウルビィの理論は、「安全基地」の存在に焦点を当てます。
つまり、
安心できる大人がいることが、
子どもの探索行動を支える
という考え方です。
一方、マーラーは、その安全基地から
「どうやって離れていくのか」
という内面的プロセスに焦点を当てました。
整理すると、次のようになります。
| 理論 | 注目していること |
|---|---|
| アタッチメント理論 | 安全基地の重要性 |
| 分離・個体化理論 | 自己確立までの過程 |
どちらも大切ですが、見ている“地点”が違うのです。
※アタッチメントについてです。ボルヴィにも少し触れています。
教育におけるアタッチメントとは? 大切にしたい心の安全基地
4.ウィニコットとのつながり
ウィニコットは、「ほどよい母親」「抱える環境」の重要性を語りました。
安心して甘えられる環境があるからこそ、子どもは崩れずに育つ。
マーラーは、その次の問いを扱っています。
安心があるとして、
では、どうやって離れていくのか?
つまり、
ウィニコットが“土台”
マーラーが“旅路”
と考えると理解しやすいでしょう。
安心と自立は対立しません。
むしろ、安心があるから自立できるのです。
参考:分離・個体化理論と愛着理論(PubMed)
5.教育現場での応用
ここが、最も実践的な部分です。
たとえば、イヤイヤ期の子どもが
「先生やらないで!自分で!」
と言ったとします。
しかし数分後、
「できない…」
と泣く。
このとき大人が
「さっき自分でやるって言ったでしょ!」
と言えば、葛藤は強まります。
分離・個体化の視点で見ると、
これは矛盾ではなく、
“発達の揺れ”です。
対応の基本は、
① 自立の意欲を尊重する
② 失敗したときに安心して戻れる環境をつくる
この往復運動を支えることです。
教育とは、
子どもを突き放すことでも、
過干渉することでもありません。
「戻ってこられる距離」を保つこと。
これが、現場で生きる理論です。
6.まとめ ― 自立は“安心の上”に育つ
分離・個体化過程とは、
「甘え」と「自立」がせめぎ合うプロセスです。
イヤイヤ期は問題ではありません。
それは、自己が輪郭を持ちはじめた証です。
ウィニコットの安心
ボウルビィの安全基地
マーラーの自立への旅
これらは対立する理論ではありません。
一本の線でつながっています。
子どもは、
くっつきながら離れ、
離れながら育ちます。
その揺れを、問題ではなく
“成長の動き”として見ること。
それが、私たち大人にできる一番の支えなのかもしれません。
今日のおさらいQ&A3問
Q1.イヤイヤ期は、ただの反抗期なのでしょうか?
いいえ。マーラーの分離・個体化過程の視点から見ると、イヤイヤ期は「自分は自分」という感覚を確立しようとする大切な発達段階です。自立したい気持ちと、不安で甘えたい気持ちが同時に存在する“揺れ”の時期なのです。
Q2.アタッチメント理論と分離・個体化理論は何が違うのですか?
アタッチメント理論は「安心できる安全基地」の重要性に焦点を当てます。一方、分離・個体化理論は、その安心を土台にして「どのように自立していくか」というプロセスを説明します。視点が違うだけで、対立する理論ではありません。
Q3.教育現場ではどのように活かせますか?
「自分でやる!」という意欲を尊重しつつ、失敗したときに安心して戻れる環境を整えることが大切です。突き放すのでも、過干渉するのでもなく、“戻れる距離”を保つことが、健やかな個体化を支えます。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)