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【イヤイヤ期は“自立の嵐”】マーラーの分離・個体化過程とは?

【イヤイヤ期は“自立の嵐”】マーラーの分離・個体化過程とは?

「なんでも自分でやる!」
でも次の瞬間、
「ママ、やって…」

この矛盾に、戸惑ったことはありませんか。

昨日の記事では、**ドナルド・ウィニコット**の理論から、「抱えられる安心」が子どもの心の土台になることを書きました。

今日はその続きです。

子どもは、安心に包まれたあと、どうやって“自分”になっていくのか。

そのプロセスを理論化したのが、**マーガレット・マーラー**です。

さらに、しばしば混同される**ジョン・ボウルビィ**のアタッチメント理論との違いにも触れながら、イヤイヤ期との関係、そして教育現場でどう活かせるのかまで、わかりやすく整理します。

難しい話ではありません。
むしろ、日常の子どもの姿そのものの話です。

ウィニコットの理論に学ぶ、安心から始まる子育てと幼児教育


目次

  1. マーラーの分離・個体化過程とは何か
  2. イヤイヤ期は「再接近の葛藤」である
  3. アタッチメント理論との違い
  4. ウィニコットとのつながり
  5. 教育現場でどう活かすか
  6. まとめ ― 自立は“安心の上”に育つ

1.マーラーの分離・個体化過程とは何か

マーラーは、乳幼児が母親と心理的に一体の状態から、徐々に「私は私」という感覚を確立していく過程を観察しました。

このプロセスを「分離・個体化過程」と呼びます。

ポイントはこうです。

子どもは、最初から自立しているのではありません。
いったん深く“つながった状態”を経て、そこから少しずつ離れていきます。

特に重要なのが、1歳半から2歳頃に見られる「再接近期」です。

この時期の子どもは、

自分でやりたい
でも不安
近くにいてほしい
でも干渉は嫌

という、矛盾だらけの状態になります。

それが、いわゆるイヤイヤ期と重なるのです。

※関連記事です。
 「イヤイヤ期」はなぜ起こるの?―心の発達に欠かせない大切な時期―


2.イヤイヤ期は「わがまま」ではない

イヤイヤ期は、単なる反抗期ではありません。

それは、

「私は私になろうとしている」

という心の作業です。

子どもは、母親や養育者から心理的に離れようとします。
しかし、完全に離れることはまだ怖い。

だから、

離れる → 不安になる → 戻る → また離れる

という揺れが起こります。

これを知らないと、
「素直じゃない」
「かわいくない」
と感じてしまうかもしれません。

しかし実際は、

“自立の嵐の真っ最中”

なのです。

イヤイヤ期と発達心理学

3.アタッチメント理論との違い

ここでよく質問されるのが、アタッチメント理論との違いです。

ボウルビィの理論は、「安全基地」の存在に焦点を当てます。

つまり、

安心できる大人がいることが、
子どもの探索行動を支える

という考え方です。

一方、マーラーは、その安全基地から

「どうやって離れていくのか」

という内面的プロセスに焦点を当てました。

整理すると、次のようになります。

理論注目していること
アタッチメント理論安全基地の重要性
分離・個体化理論自己確立までの過程

どちらも大切ですが、見ている“地点”が違うのです。

※アタッチメントについてです。ボルヴィにも少し触れています。
 教育におけるアタッチメントとは? 大切にしたい心の安全基地


4.ウィニコットとのつながり

ウィニコットは、「ほどよい母親」「抱える環境」の重要性を語りました。

安心して甘えられる環境があるからこそ、子どもは崩れずに育つ。

マーラーは、その次の問いを扱っています。

安心があるとして、
では、どうやって離れていくのか?

つまり、

ウィニコットが“土台”
マーラーが“旅路”

と考えると理解しやすいでしょう。

安心と自立は対立しません。
むしろ、安心があるから自立できるのです。

参考:分離・個体化理論と愛着理論(PubMed)


5.教育現場での応用

ここが、最も実践的な部分です。

たとえば、イヤイヤ期の子どもが

「先生やらないで!自分で!」

と言ったとします。

しかし数分後、

「できない…」

と泣く。

このとき大人が

「さっき自分でやるって言ったでしょ!」

と言えば、葛藤は強まります。

分離・個体化の視点で見ると、

これは矛盾ではなく、
“発達の揺れ”です。

対応の基本は、

① 自立の意欲を尊重する
② 失敗したときに安心して戻れる環境をつくる

この往復運動を支えることです。

教育とは、
子どもを突き放すことでも、
過干渉することでもありません。

「戻ってこられる距離」を保つこと。

これが、現場で生きる理論です。


6.まとめ ― 自立は“安心の上”に育つ

分離・個体化過程とは、

「甘え」と「自立」がせめぎ合うプロセスです。

イヤイヤ期は問題ではありません。
それは、自己が輪郭を持ちはじめた証です。

ウィニコットの安心
ボウルビィの安全基地
マーラーの自立への旅

これらは対立する理論ではありません。

一本の線でつながっています。

子どもは、
くっつきながら離れ、
離れながら育ちます。

その揺れを、問題ではなく
“成長の動き”として見ること。

それが、私たち大人にできる一番の支えなのかもしれません。


今日のおさらいQ&A3問

Q1.イヤイヤ期は、ただの反抗期なのでしょうか?

いいえ。マーラーの分離・個体化過程の視点から見ると、イヤイヤ期は「自分は自分」という感覚を確立しようとする大切な発達段階です。自立したい気持ちと、不安で甘えたい気持ちが同時に存在する“揺れ”の時期なのです。


Q2.アタッチメント理論と分離・個体化理論は何が違うのですか?

アタッチメント理論は「安心できる安全基地」の重要性に焦点を当てます。一方、分離・個体化理論は、その安心を土台にして「どのように自立していくか」というプロセスを説明します。視点が違うだけで、対立する理論ではありません。


Q3.教育現場ではどのように活かせますか?

「自分でやる!」という意欲を尊重しつつ、失敗したときに安心して戻れる環境を整えることが大切です。突き放すのでも、過干渉するのでもなく、“戻れる距離”を保つことが、健やかな個体化を支えます。


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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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