アタッチメントの“気持ちのくっつき方”とは?
子どもが安心をつくる心のメカニズム
ここ何回かアタッチメントの重要さをお伝えしてきました。「学習」に行きつくためには非認知的な能力が不可欠です。そして、その非認知能力を養うためにもアタッチメントは不可欠です。
ということで今回もアタッチメント関連の記事ですが、今回は「くっつき方」についてお伝えします。
※以前の関連記事
アタッチメントと幼児教育が非認知能力を育てる
乳幼児期は「くっつく・離れる」を繰り返しながら、子どもが世界を“安全な場所”だと理解していく大切な時期です。
この記事では、アタッチメント(愛着)とは何か、そして子どもがどんな“くっつき方”で安心を得ようとしているのかを、研究と実践の両面から分かりやすくまとめています。
この記事のポイント
- 「体のくっつき」と「気持ちのくっつき」は違う
- アタッチメントにはいくつかのタイプがある
- 無秩序・無方向型では3歳以降に特徴的な変化が起こる
- 子どもは“安心”を得るために、くっつき方を自分で調整している
では本題へどうぞ。
アタッチメントとは何か:体のくっつきと気持ちのくっつき
アタッチメントとは、子どもが「安心できる大人」と心でつながる関係のことです。
赤ちゃんの頃は「体のくっつき」が中心です。
抱っこや授乳、添い寝などを通して、子どもは “この人は自分を守ってくれる” と感じます。
一方、成長するにつれ、くっつき方はより高度になります。
たとえば、
- 抱っこされなくても安心して遊べる
- 離れていても「ママ(パパ)は迎えにきてくれる」と理解する
- 心が不安になった時に、ことばで甘える
このような段階に進むと、「気持ちのくっつき」 が成立してきます。
体が離れていても、
“心はそばにある”
と感じられるようになるのです。
これは学習や社会性の土台になるほど大きな意味を持ちます。
安心があるからこそ、子どもは挑戦し、世界を広げていくのです。
心理学における愛着理論(Simply Psychology)※Attachment のわかりやすい基礎記事
アタッチメントのタイプ──くっつき方にも“個性”がある
アタッチメント研究では、子どもの“気持ちのくっつき方”にはいくつかのタイプがあるとされています。
ここでは代表的な3つを、日常の例とともに紹介します。
(1)安定型──くっつけば安心、離れても安心
最も望ましいタイプです。
特徴
- 不安になった時は大人に助けを求める
- 抱っこや声かけで落ち着く
- 落ち着くと安心してまた遊び始める
例
公園で転んで泣いても、ママに抱っこされたらすぐ落ち着き、
「もう一回すべり台行く」
と安心して戻っていく子。
これは、
“くっつけば安心できる”という信頼が心に育っている証拠です。
(2)回避型──くっつくと離れるから、最初からくっつかない
一見すると“自立しているように見える”タイプですが、内面では不安を抱えていることがあります。
特徴
- 甘えることをためらう
- 不安でも大人に近づこうとしない
- 距離をとることで自分を守ろうとする
例
本当は寂しいのに、「大丈夫」と強がって泣かない子。
しかし、大人が目を離した瞬間に表情が固くなることもあります。
「くっついても安心できるとは限らない」と学習したとき、このタイプに近づきます。
(3)アンビバレント型──くっついても不安だから離れられない
気持ちが揺れ動くタイプです。
特徴
- 不安になると強くしがみつく
- くっついても安心しきれず泣き続ける
- 離れようとすると怒ったり泣いたりする
例
保育園の朝、ぎゅっと抱きついたまま離れられない。
抱っこしても落ち着かず、置こうとするとさらに泣いてしまう。
これは、
大人の反応が予測しにくい
(時に優しい、時に冷たい、など)
と、子どもが感じているときに起こりやすいタイプです。
目指したいのは「安定型」──安心の土台が非認知能力を育てる
安定型の子どもは、不安な時にしっかり甘え、落ち着いたら環境に向かうことができます。
これは、幼児教育で大切にしたい
「自分で気持ちを調整する力」 の基礎でもあります。
安定型をつくるために重要なのは、
- 子どもの気持ちに気づく
- 必要なときは助ける
- 大丈夫なときは見守り、信じる
という“安定した関係性”です。
完璧な対応は必要ありません。
むしろ、7割くらいの応答でも十分安定型は育つと多くの研究で示されています。

無秩序・無方向型の変化──3歳頃から見られる特殊な行動
無秩序・無方向型とは、
安心を求めたいのに、同時にその相手を怖がってしまうなど、くっつき方がまとまりにくい状態を指します。
そして、このタイプは 3歳頃から特徴的な行動の変化が起きる と考えられています。
(1)統制的懲罰型──子どもが養育者を叱りつける
例
- 「もう!来ないで!」など、感情的に突き放す
- 必要以上に強い言い方で大人をコントロールしようとする
これは、
自分が主導権を握ることで“怖さ”を回避しようとする形です。
(2)統制的養育型──子どもが大人を気遣う
例
- 「ママ大丈夫?」「泣かないで」など大人の感情を過度にケアする
- 上手に甘えられず“大人の心配役”になってしまう
これは、
子ども自身が安心を得るために、大人の機嫌を取る戦略です。
共通する特徴──脅威を減らし、不安を小さくしようとする適応行動
子どもは、
「どうすれば怖くならないか」
「どうすれば混乱しないでいられるか」
を必死に学んでいます。
しかし、これは子どもにとって大きな負担です。
無秩序型がもたらすデメリット
- 自己肯定感が低くなりやすい
- 感情調整が難しくなる
- 対人関係で疲れやすい
- 学習場面で不安が高まりやすい
こうしたリスクがあるため、
3歳以降の接し方には丁寧さや安定性が特に求められます。
子どもは“くっつき方”を自分で調整して、安心を手に入れようとしている
ここがアタッチメントの一番の核心です。
子どもは無意識のうちに
「どうすれば安心できるか」
を学び、行動を調整しています。
- 甘える(安定型)
- 強がる(回避型)
- しがみつく(アンビバレント型)
- 大人をコントロールする(無秩序型)
どれも「安心したい」という共通の目的があります。
つまり、
子どものくっつき方は “困った行動” ではなく、必死の適応の結果。
大人ができることは
- 子どもの不安の背景を理解し
- 子どものペースで安心できる「安全基地」になり
- 甘える力を育てていく
ということに尽きます。
安心の基盤ができると、子どもは自然と落ち着き、成長が一気に加速し始めます。
どんなタイプであっても、
大人が「安全基地」になれば、くっつき方は必ずより安定したものに変わっていきます。
今日のおさらいQ&A3問
Q1.アタッチメントでいう「体のくっつき」と「気持ちのくっつき」は何が違うの?
→体のくっつきは抱っこやスキンシップなど“物理的な安心”。一方、気持ちのくっつきは、離れていても「大丈夫」と感じられる心の安心です。成長とともに体から心へと発展していきます。
Q2.子どもの“くっつき方”にタイプがあるのはなぜ?
子どもは「どうすれば安心できるか」を学習し、その結果として安定型・回避型・アンビバレント型などの行動スタイルが生まれます。すべては安心を得るための“その子なりの適応”です。
Q3.無秩序・無方向型はなぜ3歳以降に特徴的な変化が起きるの?
→幼児は不安や脅威を自分で減らすために、大人を叱ったり逆に気遣ったりする“統制的”な行動を身につける場合があります。心の負担が大きいので、安定した関係づくりがより重要になります。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)