固有覚の育ちと、子どもの「身体の使い方」→学習の土台へ
子どもが「力加減がうまくいかない」「イスにドスンと座る」「鉛筆を強く握りすぎて折ってしまう」──。
こうした行動には、単なる“性格”や“しつけ”ではなく、身体の内部からの感覚=固有覚(深部覚) が大きく関わっています。
触覚 → 平衡感覚 と続いてきた本シリーズ。
本日は、感覚統合の三本柱の一つであり、子どもの学習姿勢・集中力にも深く関わる 固有覚(深部覚) を、皆様に分かりやすく解説していきます。
感覚統合は“学びの土台”。「感覚」の育成が学習意欲を育てる(前々回)
学習意欲と姿勢は“平衡感覚”から育つ(前回)

固有覚(深部覚)とは何か
関節の角度を感じる感覚
固有覚とは、目に頼らなくても、自分の身体がどんな姿勢で、どの方向に動いているのかを感じ取る力 です。
たとえば、目を閉じて腕を伸ばしたときでも、どこまで上げたか、曲がっているのかが自然と分かります。これは関節からの情報が脳に伝わっているためです。
子どもの例でいえば、
・暗い場所でもつまずかずに歩ける
・ブランコに乗る時に自分の足をどの角度でこぐか分かる
こういった動きは、固有覚がしっかり働いているからこそ成り立っています。
筋肉の収縮や力の程度を感じる感覚
固有覚は、筋肉が「どのくらい力を出しているか」を感じる感覚でもあります。
たとえば、大人でも力加減を間違えてペットボトルを握りつぶしてしまうことはほぼありません。これは筋肉の働き具合を脳が自動で調整しているためです。
子どもの具体例としては、
・積み木をそっと積む
・友だちと手をつなぐ時に、痛くない力で握る
・ドアを丁寧に閉める
といった「ちょうどよい力加減」がきちんとできるかどうかに関わります。
筋肉や関節の運動状態を感じる感覚
さらに固有覚は、身体が “動いている最中の状態そのもの” を感じる役割も担っています。
走っているときにスピードを調整したり、階段を上るときに足の動かし方を自然に整えたりするのは、固有覚のおかげです。
子どもであれば、
・走るときにバランスが崩れにくい
・高いところからジャンプした後に転ばない
・ボールを投げるときに腕の軌道を調整できる
といった運動の質に直結します。
固有覚がつまずくとどうなるのか
力加減がうまくいかない
固有覚の働きが弱いと、子どもは自分の力を“感じ取りにくく”なります。
結果として、次のような行動が見られます。
・鉛筆を強く握りすぎて芯が折れる
・消しゴムを使うとノートが破れる
・抱きつく力が強すぎて相手が痛がる
・イスに座る時にドスンと落ちる
・歩くときの足音がバタバタとうるさい
これらは「乱暴だから」ではなく、力の調整が難しいために起きていることが多いのです。
低反応・自己刺激行動として現れることも
固有覚が弱い子は、身体からの感覚刺激をもっと欲しがる ため、次のような行動が見られることがあります。
・ジャンプを繰り返す
・走り回る
・固い床にダイブする
・壁に体を押し付ける
・強いハグを求める
・手や足をずっと動かし続ける
これは脳が「もっと感覚をちょうだい!」と求めている状態で、自己刺激行動として表れやすくなります。
決して悪いことではなく、身体が必要な情報を取りにいく自然な行動です。ただし保育や家庭の場では「落ち着かない」「注意を聞いてくれない」と見られてしまうケースもあります。
感覚統合(固有覚を含む)の療育的アプローチが、子どものバランス機能や実行機能に与える影響を調べた実証研究(PMC)
固有覚へのアプローチと、子どもにできる支援
適切な「重さ」と「抵抗」を使う遊び
固有覚が育つのは、筋肉や関節にほどよい負荷がかかるときです。
・クッションやマットの上でゴロゴロする
・縄やセラバンドを軽く引っ張り合う
・荷物を運ぶ「お手伝い遊び」
・ボールを投げる・押す・転がす
・抱っこや「ぎゅー」のコミュニケーション
特に「重いものを押す・引く」という動きは、固有覚を強く育てる代表的なアプローチとして知られています。
これは感覚統合の専門家も積極的に活用する方法です。
生活動作そのものが固有覚のトレーニングになる
運動だけが固有覚を育てるわけではありません。
むしろ日常生活の中で、次のような行動が自然なトレーニングになります。
・布団をたたむ
・テーブルを拭く
・食器をそっと並べる
・ペットボトルのフタを開ける
・買い物袋を運ぶ
これらは “身体のどこに、どれくらい力を入れるか” を調整するよい経験になります。
周囲の理解が、子どもの成長を大きく助ける
固有覚が弱い子は、一見すると「落ち着きがない」「乱暴」「注意を聞かない」と誤解されやすく、保護者の方も戸惑いがちです。
しかし、多くの場合その背景には、
「感覚の取り込みがうまくいかず、身体を調整するのが難しい」という脳の特性
があります。
周囲がその理由を理解するだけで、子どもへの声かけは大きく変わります。
・「ちゃんと座って!」ではなく、「どんな座り方が楽?」
・「走り回らないで!」ではなく、「5回ジャンプしてからお話きこうか」
このように、叱るよりも「必要な感覚を満たす」アプローチのほうが、子どもの落ち着きやすさは格段に変わります。
固有覚は、学習姿勢と集中力の土台にもなる
固有覚が安定すると、姿勢保持が楽になり、
・イスに安定して座れる
・書字姿勢がくずれにくい
・集中が長く続きやすい
といった学習面のメリットも豊富です。
触覚・平衡感覚と並び、固有覚は 「学びの土台をつくる感覚」 として幼児期に育てたい領域です。
※こちらの記事にも集中力を養うために固有覚の育成が必要であること触れています
幼児教育重視のベビーシッター 子育て・教育相談も重視します
大人の「ちょっとした理解」と「感覚を満たす関り」があるだけで、子どもの毎日は驚くほど変わります。そしてその積み重ねは、長い目で見て学習・対人・自己肯定感へもつながっていきます。
今日のおさらいQ&A 3問
Q1. 固有覚(深部感覚)とはどんな感覚ですか?
→目を使わなくても身体の位置・関節の角度・力の入れ具合が分かる感覚です。姿勢保持や運動の調整、力加減に大きく関わる“身体の内側のセンサー”のような役割があります。
Q2. 固有覚が弱いとどんな行動が見られますか?
→力加減が難しく、鉛筆を折る・ドスンと座る・走り回る・ジャンプを繰り返すなどの行動として現れます。多くは「乱暴さ」ではなく、身体感覚を求める自然な反応です。
Q3. 固有覚を育てるために家庭でできることは?
→重いものを押す・引く遊び、布団をたたむ、テーブルを拭くなどの日常動作が効果的です。「落ち着かない」時は、必要な感覚刺激を満たすことで行動が安定しやすくなります。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)