子どもの「ごっこ遊び」に隠された発達の魔法

何度かピアジェの発達心理学についての記事を書かせていただきました。そして、ピアジェの分類した成長段階によってそれぞれに合った効果的な遊びや学びがあります。
例えば子どもたちが夢中になる「ごっこ遊び」。
おままごとやヒーローごっこ、ぬいぐるみを相手にしたおしゃべり――その姿は一見ただの“遊び”に見えるかもしれません。けれど実は、発達心理学の世界ではこの「ごっこ遊び」こそが、思考力・共感力・社会性を育む“知的トレーニング”だとされています。
ピアジェの発達段階理論に沿って見てみると、「ごっこ遊び」は子どもの内面世界がどのように育っていくのかを示す、まさに“発達の鏡”なのです。
今回は、そんなごっこ遊びの意味と段階、そして家庭での関わり方について詳しく見ていきましょう。
ごっこ遊びとは何か ― 子どもが演じる“もう一つの世界”
「ごっこ遊び」は、子どもが現実世界を模倣したり、空想の世界を作り出して“なりきる”遊びです。
お母さん役やお医者さん役になったり、ヒーローになって怪獣と戦ったり――それらは単なる模倣ではなく、「自分ではない存在になって世界を理解しようとする試み」なのです。
子どもにとってごっこ遊びは、
- 社会のルールや人との関わりを学ぶ“リハーサル”
- 感情を整理し、表現する“心の訓練”
- 想像力・創造力を伸ばす“発達の土台”
といった、教育的にも極めて重要な意味を持ちます。
ピアジェの発達心理学と「ごっこ遊び」の関係
スイスの心理学者ジャン・ピアジェは、子どもの発達を「感覚運動期」「前操作期」「具体的操作期」「形式的操作期」という段階で説明しました。
彼によると、遊びの内容もこの発達段階に応じて変化します。つまり、子どもの“遊び方”は発達段階の“鏡”なのです。
ピアジェの段階 | 遊びのタイプ | 特徴的な例 |
---|---|---|
感覚運動期(0〜2歳) | 機能遊び | 物を叩く・転がすなど感覚的操作 |
前操作期(2〜6歳) | 象徴遊び(ごっこ遊び) | おままごと・ごっこ遊び・空想 |
具体的操作期(7〜11歳) | ルール遊び | 鬼ごっこ・ボードゲーム・チーム競技 |
この変化は、知的発達だけでなく、社会性・感情の発達とも深く関わっています。
ピアジェの発達心理学についてはこちらの記事をご覧ください。
子どもは“小さな科学者” ピアジェの発達段階理論と幼児教育の関係

感覚運動期と「機能遊び」 ― 世界を“手で学ぶ”時期
0〜2歳頃の子どもは、見る・触る・叩く・舐めるなど、五感を使って世界を理解します。
この時期の「機能遊び」は、同じ動作を繰り返す中で“因果関係”を学ぶ活動です。
たとえば、
- 積み木を落として音を楽しむ
- ボールを転がして追いかける
- コップを重ねて崩す
といった遊びが典型です。
これらを通じて、手と目の協応、感覚統合、そして「自分が動かすと世界が反応する」という主体感を育てます。
この段階の「遊びの豊かさ」は、その後の象徴的思考(=ごっこ遊び)を育てる重要な土台となります。
前操作期と「象徴遊び」 ― ごっこ遊びの黄金期
2〜6歳ごろの子どもがもっとも夢中になるのが「象徴遊び(ごっこ遊び)」です。
この時期の子どもは、現実を頭の中で“置き換える”力を身につけ始めます。
具体例
- 積み木を車に見立てて走らせる
- ぬいぐるみに食べ物を食べさせる
- 自分が先生になってお人形に授業をする
ピアジェはこれを「象徴機能」と呼び、思考の発達における大きな転換点としました。
つまり、ごっこ遊びは“目に見えないことを想像する力”を伸ばす訓練なのです。
さらに、ごっこ遊びは情緒面にも影響します。
子どもは「怒られた」「悲しかった」という感情を、ごっこの中で再現し、自分なりに整理します。これにより情動コントロール力が養われ、他人への共感性も芽生えていきます。
具体的操作期と「ルール遊び」 ― 社会性が芽吹くステージ
7〜10歳ごろに入ると、子どもは「他者と共有できるルール」を理解できるようになります。
それまでのごっこ遊びが“自由な空想”だったのに対し、この時期の「ルール遊び」には社会的秩序が生まれます。
具体例
- 鬼ごっこ、かくれんぼ、すごろく
- カードゲームやサッカーなどのチーム競技
- 学校での集団遊びや行事
この段階では「ルールを守る」「勝ち負けを受け入れる」といった社会的スキルが発達します。
ピアジェはこれを「脱自己中心化」と呼び、他人の立場を理解することができるようになる重要な転換期と位置づけました。
ごっこ遊びから得られるもの ― 遊びは“未来の学び”の準備
ごっこ遊びには、次のような教育的効果があります。
- 想像力と創造力の発達
現実を超えた世界を構築することで、思考の柔軟性が高まります。 - 言語能力の向上
会話のやりとりや役割言語を通じて、語彙や文脈理解が発達します。 - 社会性と共感力の育成
他者になりきることで、「人の気持ちを考える」練習になります。 - 感情表現とストレス発散
嫌な出来事を遊びの中で再構成することで、心を整えます。 - 問題解決力の基礎形成
「どうすればうまくいくか?」を自分で考える試行錯誤の場になります。
※「ごっこ遊び」についてこちらのリンク先でとても詳しく、かつ分かりやすく説明してくれています。 →保育園でのおすすめ「ごっこ遊び」8選。発達する力やねらいは?(ほいくis)
親が気をつけるべきこと ― 「口出し」より「見守り」
ごっこ遊びにおいて大切なのは、「正しく」遊ばせることではなく、「安心して想像できる空間を保つこと」です。
親が無意識に「違うよ」「そんなの変だよ」と言ってしまうと、子どもの創造性は一気にしぼんでしまいます。
見守りのコツ
- 遊びの主導権は子どもに
- 「なにをしてるの?」と興味をもって聴く
- 遊びを評価しない(上手・下手ではなく“楽しそうだね”)
- 必要に応じて、そっと一緒に加わる
このような関わりが、子どもの想像世界を豊かにし、親子関係を温かく育てます。
ごっこ遊びは、単なる「まねっこ」ではありません。
それは子どもが世界を理解し、他者と関わり、自分を表現するための大切なステップです。
ピアジェが言うように、「遊びは発達の反映であり、次の学びへの架け橋」なのです。
リコポ幼児教育の視点 ― 「遊びの中の成長」を見極める
私たちリコポ幼児教育(LycoPo)では、
単に遊びを“させる”のではなく、遊びの中に見える発達段階を丁寧に観察し、個性に合わせたプランを立てることを大切にしています。また、365日ライン、メールにていつでも子育て・教育相談が可能です。子どもの資質に合わせた、かつ経験と理論、両方に基づいたプランを作成します。
例えば
- 感覚統合の未熟な子には「機能遊び」中心の環境を。
- 象徴的思考を伸ばしたい子には「ごっこ遊び」を多く取り入れ。
- 社会的理解を促したい子には「ルール遊び」や協働活動を計画。
専門知識をもつ先生が、遊びを通じて“教育”を行う。
それが、リコポが掲げる「幼児教育を重視したベビーシッター」の価値です。
子どもが作り出す小さな世界――その中には、未来を生きる力の芽が確かに宿っています。
私たちはその芽を、優しく・科学的に・確実に育てていきたいと考えています。
Q&A(まとめ)
Q1. ごっこ遊びは、どんな年齢から始まりますか?
A. 一般的には2歳前後から始まります。最初は「まねっこ」程度ですが、徐々に「お母さん役」や「先生役」など、役割を持った象徴的な遊びに発展していきます。
Q2. ごっこ遊びは、親も一緒に参加したほうがいいですか?
A. 基本は“子どもが主役”。無理に入らず、子どもが誘ったときに参加するのが理想です。「楽しそうだね」「いいね」と声をかけるだけでも、想像の世界が広がります。
Q3. ごっこ遊びをしない子は心配ですか?
A. 無理にさせる必要はありません。観察や一人遊びを通して内面で想像していることもあります。リコポでは、その子の発達段階を見極め、興味に合った遊び方を提案しています。