子どもの「学習意欲」は、まず“感覚の使い方”から
近年、保育現場や幼児教育の現場で耳にする声に、こんなものがあります。
- 思い通りにならないとすぐに大きく暴れてしまう
- 友だちとの関わりがうまくいかず、集団遊びに入れない
- 落ち着きがなく、場面に合わず動きまわる
- 食事の偏りが極端で、食卓につくことすら難しい
こうした子どもたちを前に、「育てにくさを感じる子が増えた」と感じている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、その背景には“心の弱さ”や“しつけ不足”だけではなく、「感覚の使い方のつまづき」=感覚統合の課題が関わっている可能性があります。
感覚のつまづきは、私たちが思う以上に、子どもの「適応力(順応していく力)」を左右します。
本日は、
感覚統合が適応力を育てる → 適応力がコミュニケーション力・学習意欲を育てる
という流れを軸にまとめます。
<本日の目次>
- 最近よく聞く「育てにくさ」を感じる子どもの増加
- 子どもの“適応力”とは何か
- 適応力と感覚統合の深い関係
- 実は「感覚のつまづき」が原因のことが多い
- 感覚統合とは何か
- 今後の予告
「最近の子どもは育てにくい」——現場から聞こえるリアル
■保育者・支援者から聞こえる声
ここ数年、保育園・幼稚園・子育て支援の領域では、次のような相談が特に増えているようです。
- 思い通りにならない場面での強い癇癪
- 集団での関わりが難しく、友だちと距離を保ちすぎる・逆に距離が近すぎる
- 座っていられない、注意の切り替えができない
- 感覚の過敏さ/鈍感さによる偏食・身の回りの困難
もちろん、どの子にも“得意不得意”があるのは自然なことです。
しかし、日常生活を送ること自体に困難が出るほど適応に苦労する子が増えているという実感は、保護者も専門職も一致しています。
その背景にあるのが、「適応力」の問題です。
「学習面・行動面で著しい困難を示す児童生徒」が大きく増加したというデータ(J-STAGE)
※“支援を要する可能性のある児童生徒”というデータです
いま注目されている“適応力”とは
適応力とは、簡単にいえば環境の変化や予想外の出来事に対して、
自分を調整しながら対応する力です。
- 初めての場所でも落ち着きやすい
- 友だちとのペースに合わせられる
- 気持ちの切り替えができる
- 予定の変更にもある程度ついていける
こういった力は、社会で生きるうえでも、大人の仕事や人間関係でも不可欠です。
幼児期に適応力が育つと、
学習への意欲、協調性、コミュニケーション能力の土台になります。
逆に適応力に課題があると、
- 些細な変化でも不安が大きくなる
- 感情の爆発が増える
- 授業への集中が続かない
- 仲間とのトラブルが増えやすい
というように、“学び”や“生活”に直接影響します。
では、なぜ適応力に差が生まれるのか?
ここで見えてくるのが 「感覚統合」 という視点です。
※以前少しだけ「感覚統合」について触れていますので、こちらも参考にしてください。
五感で育てる知性 幼児の感覚統合はすべての学習の土台になる

適応力と感覚統合の関係:環境に順応できるかは“感覚”が握っている
子どもは毎瞬、環境の変化にさらされています。
音・光・人の声・匂い・肌触り・重力…
こうした膨大な情報を「整理・調整」して初めて、人は落ち着いて行動できます。
この“整理整頓の力”こそが 感覚統合であり、
感覚統合がスムーズに働いている子どもは、
- 落ち着いて座りやすい
- 予測できないことがあってもパニックになりにくい
- 周囲を見ながら行動できる
- 気持ちを切り替えやすい
という特徴があります。
つまり、
感覚統合が整っている=適応力が高い
という関係があります。
実は「行動」ではなく“感覚のつまづき”が原因のことが多い
例えば:
- すぐに暴れる
- すぐに立ち歩いてしまう
- 人に近づきすぎる
- 食べ物の匂いだけで泣いてしまう
こうした行動は、「わがまま」「しつけの問題」ではなく、
脳が感覚情報を処理するのが難しく、結果として行動が乱れて見える
というケースが非常に多くあります。
たとえば:
■触覚が過敏
→ 服のタグでパニック、抱っこが苦手、食感の違いに強く抵抗
→ 結果:偏食・身支度の困難が増える
■前庭覚(バランス感覚)が未熟
→ 座位が不安定、すぐ立ち歩く
→ 結果:落ち着かず、注意が続きにくい
■固有覚(筋肉・関節の感覚)が弱い
→ 力加減が難しい、ぶつかりやすい、友だちとの距離感がつかめない
→ 結果:対人トラブルが増え、コミュニケーションに自信を失う
これらはすべて、感覚統合と適応力のつながりを示しています。
感覚統合とは何か——エアーズ博士が示した「脳の見えない働き」
感覚統合理論は、アメリカの作業療法士 A. ジーン・エアーズ博士 が体系化したものです。
エアーズ博士は、
「感覚統合とは、脳が感覚を整理し、意味づけし、行動へつなげるプロセスである」
と定義しました。
五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)だけでなく、
- 前庭覚(バランス)
- 固有覚(筋肉・関節の感覚)
という“身体の内部の感覚”が大きく影響していることも明らかにしました。
この理論は現在、アメリカだけでなく日本の作業療法・療育・幼児教育の分野でも広く活用されています。
※私たちの教育法でもよく使用される発達のピラミッドの土台に当たる部分でもあります。
幼児期に大切な感覚統合と発達ピラミッド〜小中学受験にも役立つ力〜
これから数回にわたって「感覚統合」を深掘りします
本日は「感覚統合と適応力のつながり」を全体像としてお伝えしました。
- なぜ適応力に差が出るのか
- 育てにくさの背景に感覚が関わる理由
- 感覚統合が、学習・コミュニケーション・感情の安定にどう影響するのか
- 感覚統合を養うために
- 感覚統合→学習まで
など次回以降さらに具体的に解説していきます。
感覚統合は、理解すると“子どもの困りごとの見え方が一気に変わる”分野です。
保護者の方にとって、必ず役に立つ知識になるはずです。
今日のおさらいQ&A3問
Q1. 子どもの「育てにくさ」は、性格やしつけが原因なのでしょうか?
→いいえ、必ずしもそうではありません。
最近の研究や現場の声では、しつけの問題ではなく 「感覚の使い方のつまづき(感覚統合の課題)」 が行動に影響しているケースが増えています。触覚・前庭覚・固有覚などの処理が難しいと、落ち着きにくい・偏食・癇癪などにつながりやすくなります。
Q2. 適応力が弱いと、どんなところで困りやすくなりますか?
適応力が弱いと、環境の変化への不安が強い・気持ちの切り替えが難しい・人とのやりとりにストレスを感じやすい など、生活全般に影響が出ます。
幼児期では「集団行動が苦手」「初めての場所で混乱」「授業に集中しにくい」といった困りごとが目立ちやすく、将来の学習意欲・コミュニケーションにも影響します。
Q3. 感覚統合は家庭でも意識して育てることができますか?
はい、可能です。
特別な訓練ではなく、遊びを通して感覚をバランスよく刺激すること が大切です。
例えば、公園遊び(登る・揺れる・走る)、砂や水に触れる遊び、重いものを運ぶ“お手伝い遊び”などが感覚統合を整える助けになります。
ただし、子どもの苦手さが強い場合は専門家への相談や、感覚統合に詳しいシッターのサポートを利用することで安心して進められます。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)