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子どものレジリエンス(立ち直る力)を構成する力(後半)

子どものレジリエンス(立ち直る力)を構成する力(後半)

承認・確認・柔軟性・応援・励ましが心を強くする

今回も子どものレジリエンス(心の回復力)についての記事です。
前回の記事でご紹介した「修正する力」「忘れる力」「受け入れる力」「質問する力」に続き、今回は後半戦です。
※前回の記事です。レジリエンス・「立ち直る力」を支える能力

幼児期の子どもは、周りとの関わりの中で“心の筋力”を強くしていきます。小さな成功や失敗、人とのやり取りの経験そのものが、レジリエンスの基礎体力になります。

しかし、その成長は自然に勝手に育つわけではありません。子どもが自分の気持ちを整理し、他者と関わり、支援を受け取りながら立ち直っていくためには、大人の関わり方がとても重要です。

今回取り上げる5つの力は、まさに「周囲の人との関係性」が中心にあります。
これらが育つと、子どもは困難に出会った時に“ひとりで抱え込まずに立ち直れる”ようになります。

〈今回のお話の目次〉

  1. レジリエンスを構成する力とは
  2. 承認を求める力
  3. 確認する力
  4. 柔軟な見方ができる力
  5. 応援されて喜びを感じる力
  6. 励まし・慰めてもらえる力

レジリエンスを構成する力とは(改めて確認)

レジリエンスとは、心理学で「逆境から回復する力」「折れにくくなる心のしなやかさ」を指します。
幼児期に大切なのは、子どもが“さまざまな気持ちと出会う”こと、そして“大人の支えを受けながら、自分で立ち直る経験を重ねる”ことです。

前回の記事では、子ども自身の内面に関わる「認知的レジリエンス」を中心に扱いました。
今回は、周囲との関わりから育つ「社会的レジリエンス」に焦点を当てていきます。

レジリエンス/保護因子の重要性を示す解説(「子どもの回復力を育てる」実践指針)

レジリエンスを構成する力

承認を求める力

──社会の中で生きるための行動の方向性が育つ

幼児期の子どもは、「認められたい」という社会的承認欲求によって行動を選ぶようになります。
これは決して“わがまま”ではなく、人として成長する大切な原動力です。

子どもはまず「やってはいけないこと」を知るところから始まります。危険な行動や人を嫌な気持ちにさせてしまう行動を理解していくことで、「どうしたら周囲に喜ばれるか」という方向へ少しずつ舵取りできるようになります。

やがて、子どもは大人や友だちから褒められたり認められたりする経験を通して、「承認される行動を意図的にとれる」ようになります。
つまり、社会の中で生きるための“行動のコンパス”が形成されていくのです。

この承認を求める力がしっかり育つと、壁にぶつかったときにひとりで抱え込まず、周囲と協力して困難を乗り越えられる子になります。

※子どもの規範意識の形成に関しての記事です。こちらに関連しています。
 子どもの「規範意識」をどう育てる?自由とルールのバランスが大事


確認する力

──“失敗を減らし、自信を積み重ねる”ための基礎能力**

「これ使っていい?」「これで合ってる?」
そんな確認行動は、子どもにとって非常に大切な力です。

確認をせずに行動してしまう子は、禁止事項を破ったり、友だちの物を勝手に使ったりする誤解が起きやすく、叱られる経験が増えてしまいます。すると「どうせ自分はうまくいかない」と自己肯定感が下がってしまいます。

反対に、確認できる習慣がある子は“不要な失敗”を避けることができ、日常の中で小さな成功体験を積むことができます。これがレジリエンスを高める大きな要素になります。

幼児期はまだ判断が未熟なため、「確認する」という行動習慣は大人が丁寧に教えることが必要です。
「勝手に触らないで!」ではなく「触る前に聞いてね」と伝えることで、子どもは確認行動の価値に気づいていきます。

※少し関連する記事です。
 成長のサインでもある─子どもの“自己制御”を育てる親の関わり方


柔軟な見方ができる力

──“白黒思考”から“しなやかな推測”へ**

幼児期の子どもは、世界を「二文法」で見がちです。
つまり、

・できる/できない
・好き/嫌い
・正しい/間違い
・行く/行かない

など、物事をきっぱりと分類して理解しようとします。

しかし、成長に伴って「~かもしれない」「たぶん」「おそらく」といった“ゆとりのある見方”ができるようになると、心がとても楽になります。

柔軟な見方が育つと、
「失敗した=自分はダメ」ではなく
「うまくいかなかっただけかもしれない」
という解釈ができ、立ち直りが早くなるのです。

この柔軟性は、レジリエンスの核ともいえる力です。
多様性の時代を生きる子どもにとって、しなやかな思考は必須のスキルであり、幼児期から育てたい重要な土台といえます。

※こちらの記事は関連することを書いています。参考にしてください。
 「自分と会話できる子」は強い—幼児期に育てたい“自己内対話能力”


応援されて喜びを感じる力

──“仲間の存在”がレジリエンスを押し上げる**

子どもは、応援されると力が湧きます。
「がんばれ!」と背中を押された瞬間、子どもは“周囲と一体化する”感覚を得ます。これは心理学で「共同注意」の延長にある大切な発達段階です。

さらに、応援される経験が増えるほど、子どもは他人を応援できるようになります。
「応援の循環」が家庭や園で育つと、子どもは困難に直面しても「自分には味方がいる」という実感を持てます。

人は、ひとりではストレスに押しつぶされてしまうことがあります。
しかし、味方がいると“回復のスピード”が大きく変わります。

応援を受け取れる力は、レジリエンスを支える社会的スキルのひとつです。

※共同注意に関しての記事です。
 「共同注意」で育つ! 幼児教育に欠かせない親子のまなざし共有


励まし・慰めてもらえる力

──“支え合う集団”が心を立て直す**

子どもは誰かを慰めることで、他者感情に気づきます。
また、誰かに励まされることで「人に頼ってもいい」という感覚が育ちます。

幼児期はまだ言語能力が発達途上ですが、それでも
・泣いている友だちの背中に触れる
・「だいじょうぶ?」と声をかける
・失敗した友だちに「いっしょにやろう」と誘う
など、小さな優しさが自然と現れ始めます。

これらは単なる“良い行動”ではなく、レジリエンスの土台そのものです。
集団の中で慰め合い、励まし合うことが重なるほど、子どもは「つらい時に立ち直れる心の回路」を身につけていきます。

※こちらは共感性の記事で関連します。
 「共感性」を養う幼児教育 「思いやりのある子ども」は幸福度が高い


レジリエンスは“関係性の中で”育つ力

今回扱った5つの力は、すべて「他者との関わり」の中で成長する力です。
幼児期のレジリエンスは、子どもを取り巻く環境が豊かなほど、大きく花開きます。

承認を求める力、確認する力、柔軟に考える力、応援を受け取る力、そして励まし合う力。
どれも家庭や園での何気ないやり取りの積み重ねで育っていくものです。

幼児教育は、この“レジリエンスの基礎づくり”に最も適した時期です。
私たちリコポ幼児教育でも、日々の保育・関わりの中で、この5つの力が自然に育つ環境を整えています。


今日のおさらいQ&A3問

Q1. 幼児期に「承認を求める力」が大切なのはなぜ?

→認められたい気持ちは、社会の中で望ましい行動を選ぶ土台になります。「どう行動すれば周囲が喜ぶか」を学び、自己肯定感の形成にもつながります。


Q2. 子どもが「確認する習慣」を身につけると何が変わる?

→不要な失敗や叱られる経験が減り、自信を積み上げやすくなります。また、トラブル回避能力が身に付き、集団の中でも安心して過ごせるようになります。


Q3. 「柔軟な見方」がレジリエンスとどう関係するの?

→失敗を“自分の価値”と直結させるのではなく、「うまくいかなかっただけかもしれない」と解釈できるようになり、立ち直りが早くなります。



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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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