子どもは何に注目している?赤ちゃんの選択的注意と情報を選び取る力
子どもは、毎日の生活の中でたくさんの音や光、表情、動きに囲まれています。けれど、そのすべてを同じように受け取っているわけではありません。赤ちゃんや子どもは、自分にとって大切そうなものに少しずつ注意を向けながら、世界を理解していきます。今回は、子どもの「選択的注意」と、情報を選び取る力の育ちについて見ていきます。
目次
- 選択的注意とは
- 赤ちゃんは「大切そうなもの」に注意を向ける
- 顔や生き物らしい動きに注意が向く理由
- 3カ月頃に目が合いやすくなることの意味
- 口元を見るようになる赤ちゃん
- 母国語に注意が向きやすくなる
- 保護者ができる関わり方
- まとめ
1. 選択的注意とは
私たちのまわりには、いつもたくさんの情報があります。
音、光、声、表情、動き、におい、手触り。
もしそのすべてを同時に受け取ろうとしたら、大人でもすぐに疲れてしまいます。
そこで大切になるのが「選択的注意」です。
選択的注意とは、たくさんの情報の中から、今の自分にとって大切なものに注意を向ける力のことです。
たとえば、にぎやかな場所でも自分の名前を呼ばれると気づく。
子どもが泣いている声だけ、保護者の耳にすっと入ってくる。
これも選択的注意の働きです。
子どもも、生まれてから少しずつ「何を見るか」「何を聞くか」「何に注目するか」を学んでいきます。
※関連記事です。様々な動きに反応する子ども 赤ちゃんは「動き」から世界を学ぶ
2. 赤ちゃんは「大切そうなもの」に注意を向ける
赤ちゃんは、ただぼんやり世界を見ているわけではありません。
もちろん、大人のように言葉で考えているわけではありませんが、赤ちゃんなりに「これは大事そう」「これは見ておきたい」と感じるものがあります。
特に赤ちゃんが注意を向けやすいものには、次のようなものがあります。
・人の顔
・目や口の動き
・声
・ゆっくり動くもの
・生き物らしい動き
・自分に向けられた表情や声
赤ちゃんにとって、保護者の顔や声はとても大切な情報です。
「この人は安心できる人かな」
「今、笑っているのかな」
「自分に話しかけてくれているのかな」
赤ちゃんは、まだ言葉を話せなくても、見ること・聞くことを通して、周囲の世界を少しずつ理解しようとしています。
※関連記事です。赤ちゃんは顔をどう見分けるのか 「顔らしさ」から「この人」へ
3. 顔や生き物らしい動きに注意が向く理由
赤ちゃんは、人の顔に注意を向けやすいと言われています。
顔には、たくさんの情報が含まれています。
目が合う。
表情が変わる。
口が動く。
声が出る。
近づいてくる。
抱っこしてくれる。
赤ちゃんにとって顔は、ただの「見えるもの」ではありません。
安心、関わり、ことば、感情を知るための入口です。
また、赤ちゃんは「生き物らしい動き」にも注意を向けやすいとされています。
たとえば、人が歩くような動き、顔がこちらを向く動き、手足が自然に動く様子などです。
これは、赤ちゃんが早い時期から「もの」と「人・生き物」を区別しようとしていることを示しているとも考えられます。
つまり赤ちゃんは、ただ刺激に反応しているだけではありません。
人との関わりにつながる情報を、優先して受け取ろうとしているのです。
※参考(PINAS)乳児は言語を学習する際に、話している顔の口元に選択的注意を向ける。

4. 3カ月頃に目が合いやすくなることの意味
生後3カ月頃になると、赤ちゃんと目が合う時間が増えたと感じる保護者の方も多いのではないでしょうか。
「最近、こちらをじっと見るようになった」
「話しかけると目が合う」
「顔を見ると笑うことが増えた」
このような変化は、赤ちゃんの注意の向け方が少しずつ育っているサインです。
もちろん発達には個人差があります。
毎回しっかり目が合わなければいけない、ということではありません。
眠いとき、お腹が空いているとき、疲れているとき、刺激が多すぎるときには、赤ちゃんは目をそらすこともあります。
これは「嫌がっている」と決めつける必要はありません。
赤ちゃんにとって、目を合わせることもエネルギーを使う活動です。
大人で言えば、会議でずっと集中しているようなものです。赤ちゃんにとっては、なかなかの重労働です。
大切なのは、無理に見つめさせることではなく、赤ちゃんが見てくれたときに、やさしく応えることです。
5. 口元を見るようになる赤ちゃん
少し成長すると、赤ちゃんは大人の目だけでなく、口元にも注意を向けるようになります。
これはとても興味深い変化です。
赤ちゃんは、ことばを聞くだけでなく、口の動きも見ています。
「ま」「ぱ」「ば」のような音は、口の形と深く関係しています。
大人が話しているとき、赤ちゃんは声と口の動きを結びつけながら、ことばの準備をしていると考えられます。
つまり、赤ちゃんが口元をじっと見ているとき、それは単に「口が動いていて面白い」だけではありません。
「この音は、こうやって出すのかな」
「この人は今、何かを伝えているのかな」
そんな学びの入口に立っているのです。
保護者の方は、赤ちゃんが口元を見ているとき、ゆっくり、はっきり、やさしく話しかけてあげるとよいでしょう。
「おはよう」
「おいしいね」
「だっこしようね」
「ねんねしようね」
特別な教材よりも、日常のあたたかい声かけが、赤ちゃんにとって大切な学びになります。
6. 母国語に注意が向きやすくなる
赤ちゃんは、成長の中で、自分の周りでよく聞く言葉に注意を向けやすくなっていきます。
たとえば、日本語の環境で育つ赤ちゃんは、日本語のリズム、音のまとまり、声の調子にだんだん慣れていきます。
これは、外国語が悪いという意味ではありません。
赤ちゃんの脳が、自分の生活の中でよく聞く音に合わせて、学びやすい形に整っていくということです。
毎日聞いている保護者の声。
いつも繰り返される言葉。
食事、入浴、着替え、寝かしつけの中で聞く言葉。
こうした繰り返しが、赤ちゃんにとっては大きな学びになります。
「同じ言葉ばかりでいいのかな」と思う必要はありません。
むしろ、同じ場面で同じような言葉を聞くことは、子どもにとって安心しやすく、意味をつかみやすい経験になります。
7. 保護者ができる関わり方
選択的注意を育てるために、難しいことをする必要はありません。
大切なのは、子どもが今どこに注意を向けているかを、大人が少し気にしてあげることです。
子どもが見ているものを見る。
子どもが気にしているものに言葉を添える。
目が合ったら微笑む。
口元を見ていたら、ゆっくり話す。
疲れていそうなら、刺激を減らす。
このような関わりで十分です。
たとえば、赤ちゃんが犬を見ていたら、
「わんわん、いたね」
「歩いているね」
「しっぽが動いているね」
と声をかけてあげます。
赤ちゃんが保護者の口元を見ていたら、
「まんま」
「おいしいね」
「もっとかな」
と、短く、わかりやすく話しかけてあげます。
子どもの注意に大人が寄り添うことで、子どもは「見ているもの」と「言葉」と「意味」を結びつけやすくなります。
8. まとめ
選択的注意とは、たくさんの情報の中から、大切なものに注意を向ける力です。
赤ちゃんは、生まれてすぐから少しずつ、人の顔、声、動き、口元、聞き慣れた言葉に注意を向けながら、世界を理解しようとしています。
3カ月頃に目が合いやすくなること。
成長とともに口元を見るようになること。
母国語に注意が向きやすくなること。
これらはすべて、子どもが人との関わりの中で学んでいる姿です。
保護者の方ができることは、特別な訓練ではありません。
赤ちゃんが見ているものに気づく。
赤ちゃんが聞いている声を大切にする。
目が合ったら、やさしく返す。
日常の中で、ゆっくり話しかける。
それだけでも、子どもにとっては大切な学びになります。
子どもは、世界のすべてを一度に受け取っているわけではありません。
大切なものを少しずつ選びながら、自分の世界を広げています。
その小さな注意の先に、ことば、理解、人との関わりが育っていくのです。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)