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「親の責任」少し言い過ぎでは?─ 責任が重くなる社会の背景と課題

「親の責任」少し言い過ぎでは?─ 責任が重くなる社会の背景と課題

子どもの安全は何よりも大切です。
その前提は揺るぎません。

ただ最近の下記にあるような事件について少し思うことがありましたので、今日はそのことをお伝えします。
未就学の「子ども」を自宅に放置、母親の逮捕事件が相次ぐ…一時外出でも「保護責任者遺棄罪」は成立する?(弁護士.com)

近年のニュースや制度の動きを見ていると、「子どもを守る」という正しさが強調されるほど、親の責任や負担が増大している側面も見えてきます。
この構造は、親の萎縮や孤立を生み、結果的に子どもにとっても望ましい環境とは言い切れません。

本記事では、2025年8月の札幌市の事例と、埼玉県で議論となった条例案を手がかりに、
子どもの安全確保と親の責任のバランスについて整理し、最後に「では、どうすればよいのか」という方向性まで踏み込みます。


目次

  1. 親が逮捕された事件の概要(事実ベース)
  2. 「子どもを守る」という正しさと、親の責任・負担の増大
  3. 社会の支援が追いつかない現実──責任だけが親に集まる構造
  4. 親に一方的な負担を強いる社会は、子どもを幸せにするのか
  5. 結論:子どもを守ることと、親を守ることを両立させるために

1. 親が逮捕された事件の概要

2025年8月、北海道札幌市で、28歳の母親が未就学児の息子2人を自宅に残して外出したとして、保護責任者遺棄の疑いで逮捕された事例が報じられました。
その後、母親は釈放されています。

  • 事件のポイント
    • 未就学児が自宅にいる状況での外出
    • 逮捕後、事情聴取などを経て身柄解放
    • 「親の判断」と「刑事責任の線引き」が社会的な論点に

☆一部では2時間の子どもの放置で逮捕されたとの報道もあります。
 「2時間だけで・・・」という方もいらっしゃるかもしれません。
 一方、ひょっとしたら警察が保護・逮捕に踏み切る必要のあった事件かもしれません。
 いずれにしろ、逮捕まで踏み切るのはかなりのレアケースだとは思います。
 ただ、半年ほど前のニュースになりますし、詳しくは分からないため
 この報道だけでは保護者を責められません。

ただ、この事例は、単なる個別の出来事ではなく、日常の判断がどの時点で「犯罪」と評価されるのかという線引きの難しさを浮き彫りにしました。

※関連するブログ記事です。この事件とも関連しているかもしれません。この事件も安易に親を責めることができない悲しい事件です。
 「3歳男児が9階から転落し死亡」のニュースを受け止め考える


2. 「子どもを守る」という正しさと、親の責任・負担の増大

子どもを守ること自体に異論はありません。
ただし、その正しさが制度化・規範化される過程で、親の責任や心理的負担が拡張されている側面があります。

この点で象徴的だったのが、**埼玉県で議論された「留守番禁止条例案」**です。

埼玉県の条例案:背景と内容

  • 児童虐待防止条例の改正案として、
    小学校低学年以下の児童を自宅に残す行為などを「放置」と位置づける方向が示されました。
  • 公園遊びやおつかい等の日常的行為まで広く対象に含む可能性があるとして、社会的議論を呼びました。

毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20231007/k00/00m/010/199000c
※記事が有料なので、下記の方が分かりやすいかもしれません。
“子どもの留守番禁止条例”が廃案に! 埼玉県虐待禁止条例案の問題点を埼玉の弁護士が解説(埼玉総合法律事務所)


賛否の主な論点(まとめ)

観点賛成の声反対・懸念
子どもの安全事故防止のため基準を明確にすべき日常生活まで過度に規制
親の負担予防的な仕組みが必要共働き・ひとり親の実情に合わない
社会的影響安全意識の底上げ親の萎縮・通報社会の加速

目的(子どもの安全)には賛同が集まる一方で、手段(規制の強度・範囲)への違和感が大きかった点が重要です。


3. 社会の支援が追いつかない現実──責任だけが親に集まる構造

子どもを守る責任は、本来「家庭 × 地域 × 行政 × 制度」の共同責任です。
しかし現実には、次のような不均衡が生じています。

「危険だから親がちゃんと見ろ」
「事故が起きたら親の責任」

という言説が先行し、支援は薄いのに、責任だけが“フル装備”で親に集中する構図です。

本来セットで必要な支えは、例えば次のようなものです。

  • 見守りの地域ネットワーク
  • 適当な保育・一時預かりがない
  • 相談窓口・伴走型支援の充実

ところが、制度は点在し、使いにくい/知られていない/緊急時に頼れないという現実があり、結果として親の自己責任が肥大化します。
この構造は、親の孤立を深め、支援に“つながりにくい社会”を固定化します。

※関連記事です
 「完璧じゃなくていい」─“悩める親”こそ、子どもに寄り添える人

アタッチメントについて

4. 親に一方的な負担を強いる社会は、子どもを幸せにするのか

子どもを守ることは最優先です。
しかし、そのために親に一方的な負担とリスクを背負わせる社会は、長期的に見て子どもを幸せにするでしょうか。

過度なプレッシャーは、次のような副作用を生みます。

  • 親が常に「失敗できない」状態になる
  • 困っても相談しにくくなる(罰・通報への恐れ)
  • 結果として、本当に危険なケースほど発見が遅れる

親の心身の余裕は、子どもの安全と幸福の土台です。
親が追い詰められる設計は、短期的には「規律」を強めるように見えても、長期的には子どもにとっての安全網を弱めかねません。

※関連記事です。
 子どもを支えるために、まずは自分のケアを


5. 子どもを守ることと、親を守ることを両立させるために

ここからは、「では、どうすればよいのか」という解決の方向性です。
鍵は 線引き/分担/支援 の三点にあります。


① 親の責任の“線引き”を、感情ではなく基準で

  • 結果論や感情論ではなく、
    年齢・発達段階・環境・危険度を総合評価する現実的基準を社会で共有する。
  • 「白か黒か」ではなく、グレーゾーンを制度的に整理することで、親の萎縮を防ぐ。


② 「親だけが背負う構造」から「社会で分担する構造」へ

  • 予約不要の一時預かり、夜間・緊急時の相談窓口、地域の見守りの再設計など、
    “努力しなくても使える支援”を当たり前にする。
  • 責任の所在を家庭に集中させず、家庭×地域×行政の共同責任として設計する。


③ 「罰する設計」ではなく「助けを求めやすい設計」へ

  • 失敗が即「処罰」につながる導線では、親は相談しなくなる。
  • まず支援につながる回路を整えることで、結果的に深刻な事案の早期発見につながる。


④ 「子どもを守る」と「親を守る」は対立しない

  • 親が孤立せず、萎縮しすぎず、「助けて」と言える環境の方が、子どもの安全性は高まる。
  • 子どもを守る社会とは、親も支援の対象として守られている社会である。

まとめ

  • 子どもを守ることは、社会の最重要課題である。
  • しかし、その正しさの裏側で、親の責任や負担だけが過度に増大している構造がある。
  • 線引きの明確化、社会的分担、支援への接続――この三点を同時に進めなければ、
    「子どもを守る」という理念は、かえって家庭の安全網を弱めてしまう。

子どもを守る社会とは、
親もまた、安心して子育てできる社会であるべきです。


Q&A三問

Q1. 子どもを短時間留守番させるだけで、親は処罰の対象になるのですか?

一律に処罰されるわけではありません。子どもの年齢、留守番の時間、室内環境や季節、周囲に助けを求められる状況かどうかなど、複数の要素を総合的に見て判断されます。ただし、結果論で責任が問われやすい傾向が強まっているのも事実です。


Q2. 「子どもを守る」ためのルールや条例は、なぜ反発を受けやすいのですか?

目的自体には多くの人が賛同しますが、日常生活まで広く規制されると、共働き家庭やひとり親世帯の現実と乖離が生まれます。そのため「安全のため」という理念と「生活が成り立つか」という現実の間で摩擦が生じやすくなります。


Q3. 親の責任を重くする社会の風潮は、長期的にどんな影響をもたらしますか?

親が常に「失敗できない」「監視されている」という感覚を持つようになり、相談や支援につながりにくくなります。その結果、親の孤立が進み、本当に支援が必要な家庭ほど表に出にくくなるという逆説的な問題が生じます。これは長期的には子どもの安全にもマイナスに働く可能性があります。


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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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