将来の学びと成長に直結する「よい自尊心」を育てる
自尊心というと、聞く人によっては「高慢さ」や「尊大さ」などマイナスなイメージを持つ人がいるかもしれません。しかし「よい自尊心」は子どもの飛躍的な成長に欠かせない能力です。
自尊心といっても、“プライドが高いこと”とはまったく違います。
「うちの子、ほめても伸びない気がして…」「他の子と比べてしまう自分が嫌になる」──多くの保護者が抱えるこの悩みの根っこには、自尊心の理解不足が潜んでいることがあります。
今日は、自尊心とは何か。そして「よい自尊心」を育てるには、どんな関わり方が必要なのかを、専門的な理論も交えながら分かりやすく解説します。
〈目次〉
- 自尊心とは何か
- 2つの自尊心:「very good」と「good enough」
- 自尊心が高い子どもの特徴
- 自尊心は揺れ動くもの
- 「よい自尊心」を育む家庭の関わり方
1.自尊心とは何か──プライドではなく“自分をどう感じるか”
「自尊心」という言葉は、しばしば「自信」や「プライド」と混同されます。
しかし心理学でいう自尊心とは、もっと静かで、もっと深い感覚を指します。
「自尊心=pride(プライド)」ではなく、今回は「自尊心=self-esteem」ととらえます。
社会学者ローゼンバーグは自尊心(self-esteem)を「自己に対する肯定的または否定的態度」と定義しました。
つまり、“自分をどう感じているか”“自分をどれだけ価値ある存在だと思えているか”という、内側の評価そのものです。
成績がよい、足が速い、友達が多い──そうした外側の条件ではなく、
「自分は自分でいい」と思えるかどうか。それが自尊心の基盤になります。
子どもの心は、まだ社会経験も人生経験も少なく、揺れ動きやすいもの。だからこそ、家庭での関わり方がこの土台づくりに大きく影響します。
2.2つの自尊心──“very good”と“good enough”
自尊心には大きく分けて2種類あります。
◆ very good(とてもよい)タイプの自尊心
これは、他者との比較によって「自分は優れている」と感じるタイプの自尊心です。
順位・結果・評価が拠り所になりやすく、ほめられている間は調子がいいものの、結果がふるわないと一気に崩れやすい特徴があります。
「ほめられないと不安になる」
「他の子より上であることにこだわる」
──こうした姿が見られたら、very good 型に偏りつつあるサインです。
もちろん比較がすべて悪いわけではありませんが、相対評価に依存しすぎると、子どもが疲弊しやすくなるのも事実です。
◆ good enough(これでよい)タイプの自尊心
一方で、本当に大切なのはこちらです。
長所も短所もひっくるめて“自分そのもの”を認められる自尊心。
これが「good enough(これでよい)」の感覚です。
・完璧じゃなくてもいい
・失敗することも自分の一部
・できない自分も含めて大丈夫
こうした“静かな安心感”を持てる子は、のちに学習や人間関係でつまずいても立ち直りが早く、しなやかに成長していきます。
そしてこの good enough こそが、本来の意味での自尊心と言われています。
※自己肯定感にもつながります。自己肯定感について詳しくはこちらをご覧ください。
子どもの自己肯定感を育てるために大切なこと
3.自尊心が高いと、子どもはどう育つのか
自尊心が高い子どもは、単に「自信満々」というわけではありません。
もっと内面的な“満足感”が育っていくのが特徴です。
たとえば、
・失敗しても自分を否定しない
・やってみようという気持ちが自然と湧く
・人に役立てたときに喜びを感じられる
・「次はこうしてみよう」と考えられる
これは、心理学でいう 成長感・有用感・自己効力感 の3つが満たされている状態です。
◆ 成長感
少しずつできることが増えていると感じられること。
昨日より今日、今日より明日と、自分の変化を前向きに捉えられる子は、挑戦することを恐れません。
◆ 有用感
「誰かの役に立てた」と感じる経験があること。
家庭の中で「ありがとう」を言われた経験は、小さな子どもでも深く心に残ります。
◆ 自己効力感
「やればできるかもしれない」という期待感。
小さな成功の積み重ねが、未来に向かうエネルギーになります。
この3つが乳幼児期〜児童期に育っていれば、将来の学習意欲や精神的な安定にもつながります。
逆に幼少期に自尊心が低いままだと、挑戦を避けたり、比較で落ち込んだりしやすくなります。
4.自尊心は揺れ動く──成長の途中で低下することもある
自尊心は一度育てば一生安定する──というものではありません。
むしろ成長の中では、何度も上下しながら形づくられていきます。
小学校に入ると周囲との比較が増え、
中学年になると自己評価が厳しくなり、
高学年では恥ずかしさや劣等感が芽生えることもあります。
こうした変化は自然な発達過程のひとつですが、子どもにとっては不安の原因になる場合もあります。
「できない自分はダメなんじゃないか」
「友だちより劣っているかも」
そんな気持ちが生まれたとき、家庭での支えが大きく影響します。
子どもが“自分は価値のある存在だ”と再び感じられるよう、周囲の大人がどれだけ寄り添えるか。
ここが重要なポイントです。
5.「よい自尊心」を育む家庭の関わり方
では、具体的にどのような関わりが「good enough」の自尊心を育てるのでしょうか。
◆ 子どもの得意を、細かく・具体的にほめる
「すごいね!」だけでは伝わりません。
「塗り絵の色の選び方が素敵だったね」
「お友だちに自分から貸してあげたね、優しかったよ」
と、子ども本人も自覚できる言葉をかけることが大切です。
◆ 結果より、プロセスをほめる
「勝った・できた」よりも
「どうやって頑張ったか」「どんな工夫をしたか」を認めると、成長感と自己効力感が育ちます。
※ほめ方についてはこちらをご覧ください。
子どもを伸ばす正しい「ほめ方」―才能ではなく努力を認める
◆ 性格を肯定的に捉えて伝える
子どもの性格は、表現の仕方ひとつで宝にも弱点にもなります。
たとえば、
・気が弱い → 人の気持ちに寄り添える優しさがある
・慎重すぎる → 物事をていねいに見られる
・おしゃべり → 周囲を明るくする力がある
大人の視点を少し変えるだけで、子どもは「自分の性格にも価値がある」と感じられるようになります。
◆ 他者と比較しない
比較は育児の大敵です。
大人が「兄弟より」「クラスの子より」と比べるほど、子どもは“very good”の自尊心に偏り、弱くなります。
「昨日の自分」と比べられるように声をかけるほうが、子どもはずっと成長を実感しやすくなります。
「子どもの自己肯定感がグンと高まる声かけと接し方」(Benesse)
“そのままのあなたで大丈夫”を伝え続けること
子どもの自尊心は、日々の小さな関わりの積み重ねで育ちます。
特別な教育法や劇的な働きかけが必要なわけではありません。
「あなたはあなたでいい」
「失敗しても大丈夫」
「ここにあなたの居場所がある」
そんなメッセージを伝え続ける家庭こそ、子どもの“good enough”な自尊心をじっくり育てていきます。
子どものアタッチメント(愛着)にもつながります。
教育におけるアタッチメントとは? 大切にしたい心の安全基地

今日のおさらいQ&A3問
Q1. 自尊心とはどんな感覚のことですか?
プライドや勝ち負けの感覚ではなく、「自分を肯定的に受け止められる感覚」のことです。ローゼンバーグは「自己への肯定的/否定的態度」と定義しています。
Q2. よい自尊心とはどちらのタイプですか?
→長所も短所も含めて「これでよい」と思える good enough タイプです。比較で保たれる「very good」型は不安定になりやすく、ほめられないと揺らぎやすい特徴があります。
Q3. 自尊心を育てるために家庭でできることは?
→結果よりプロセスを認めること、子どもの性格を肯定的に伝えること、具体的にほめること、そして他者との比較をしない関わりが大切です。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)