幼児の「覚醒レベル」とは?感覚統合との関係
「覚醒レベル」何かアニメや漫画から連想させられるような言葉ですが、幼児教育、子どもの成長に関しても重要な言葉です。そして、今まで何回かお伝えした「感覚統合」にも深く関連しています。
「落ち着きがない」「ボーッとしやすい」「興奮が止まらない」──幼児教育の現場で保護者から届く相談の多くは、子どもの“覚醒レベル(arousal level)”が深く関係しています。覚醒レベルとは、子どもの脳と身体がどれくらい“起きているか・学ぶ準備が整っているか”を示す指標で、感覚統合とも深く結びついています。
覚醒レベルは単に「元気かどうか」ではなく、注意力・集中力・姿勢・これからやろうとする意欲などに大きな影響を与える土台です。高すぎても低すぎても活動がうまくいかず、子どもが本来の力を発揮できないことがあります。
本記事では、覚醒レベルの基礎、感覚統合との関係、低覚醒・最適覚醒・高覚醒の特徴、そして家庭でもできるアプローチについてわかりやすく解説します。
※以前の記事です。子どもの「学習意欲」は、まず“感覚の使い方”から
<本日の目次>
- 覚醒レベルとは
- 覚醒レベルと感覚統合の関係
- 低覚醒レベルとは
- 最適覚醒レベルとは
- 高覚醒レベルとは
- 覚醒レベルは波のように変動する

覚醒レベルとは
覚醒レベルとは、子どもの神経システムが今どれほど“起きているか・準備できているか”を示す状態のことです。私たち大人でも、朝起きてすぐは気持ちがぼんやりしていたり、緊張で妙にソワソワしたりする瞬間がありますが、子どもも同じように覚醒の高さが常に変化しています。
覚醒レベルが低すぎると刺激に反応しづらく、活動への意欲が湧きにくい状態になります。一方、高すぎると興奮しやすく、注意が散漫になり、落ち着きにくい状態になります。
最適な覚醒レベルは「ちょうどいいゾーン」であり、子どもがもっとも集中しやすく、落ち着き、学びやすい状態です。
覚醒レベルを理解し調整することは、幼児期の教育や支援において非常に重要です。とくに乳幼児期は身体と感覚の発達が急速に進むため、覚醒のコントロールが未成熟で、周囲の大人の関わり方が大きく影響します。
※リンク先では感覚処理となっていますが、感覚処理を説明するために覚醒調整(覚醒レベル)という言葉を使っています。二つは密接に関係しているので、こちらのリンクを参考にしていただければと思います。
感覚処理(ノッティンガムシャー医療財団)
覚醒レベルと感覚統合の関係
覚醒レベルは、感覚統合 の働きと密接に関連しています。感覚統合とは、視覚・聴覚・触覚・固有覚・前庭覚など、身体に入ってくるさまざまな感覚情報を脳が整理し、必要な行動をスムーズに行うための土台となる仕組みです。
特に覚醒レベルと関わりが深いのは「前庭覚(バランスの感覚)」と「固有覚(筋肉や関節の動き・位置感覚)」です。これらの感覚は、身体がどこにあり、どう動いているのかを脳に伝え、適切な覚醒レベルを維持する役割を担っています。
※以前の記事です。参考にどうぞ。
学習意欲と姿勢は“平衡感覚”から育つ(平衡感覚)
固有覚の育ちと、子どもの「身体の使い方」→学習の土台へ(固有覚)
身体が動きやすい子は、ちょうど良い覚醒を保ちやすく、逆に感覚が弱い子は覚醒が低すぎたり高すぎたりして、行動が安定しにくいことがあります。
感覚統合の視点では、覚醒レベルは「環境」「刺激」「身体の状態」の影響を受けて常に変化し、適切な活動によって整えることができるとされています。
低覚醒レベル
低覚醒レベルとは、脳と身体のエンジンが弱くかかったような状態で、刺激に対する反応がゆっくりで、活動への意欲が高まりにくい時に見られます。
●特徴
子どもがなんとなくぼんやりしていたり、動き出しに時間がかかるように見えます。全体的なエネルギーが低く、活動に入りにくいのが特徴です。
●見られやすい行動
- ぼーっとしている、反応が遅い
- 眠そう・やる気が出にくい
- 姿勢が崩れやすい
- 活動の切り替えが難しい
文章として補足すると、低覚醒の子どもは頭が働きにくい状態で、声をかけても反応が薄かったり、活動中にすぐ疲れてしまったりと、エンジンのかかりがゆっくりに見えます。
●背景
前庭覚への刺激が不足している場合や、身体を動かす経験が少ない場合に起こりやすいとされています。また、睡眠不足や生活リズムの乱れも覚醒の低下につながります。
●アプローチ方法・対策
低覚醒の状態には、身体の内側を目覚めさせるような動きが効果的です。
ジャンプ、スキップ、ブランコ、軽い回転遊び、押す・引くといった全身を使う動きは、脳を自然に活性化させます。
また、朝の「体を使うルーティン」はエンジンをかけるスイッチになります。くま歩きや体幹遊びも、固有覚と前庭覚を刺激し、覚醒を適切に引き上げる助けとなります。
最適覚醒レベル
最適覚醒レベルとは、子どもがもっとも集中しやすく、落ち着きやすく、活動に取り組む準備が整っている状態です。感覚統合では“Just Right(ちょうどいい)状態”と呼ばれます。
●特徴
子どもは姿勢が安定し、気持ちが落ち着き、課題に集中しやすくなります。必要な情報にだけ注意を向けられ、余計な刺激に左右されにくい状態です。こうした時期は、学習や運動の吸収が良く、チャレンジしようとする意欲も自然に高まります。新しいことに取り組んでもストレスが少なく、自分のペースで取り組めるのが特徴です。
高覚醒レベル
高覚醒レベルは、エンジンが過剰にかかりすぎている状態で、身体と気持ちが興奮しすぎてコントロールが難しくなる場面で見られます。
●特徴
ソワソワして落ち着かず、必要以上に動きたくなり、気分の切り替えが難しくなります。声が大きくなったり、友達との距離が近くなりすぎたりすることもあります。
●見られやすい行動
- 興奮しやすく走り回る
- 注意が散漫になる
- イライラしやすい
- 衝動的に体が動く
- 話を聞きにくい
文章で補足すると、環境刺激(音、視覚情報、人の動き)が多い場所では、高覚醒になりやすく、子ども自身もコントロールが難しくなります。
●背景
前庭覚が過剰に刺激されたとき、または視覚・聴覚刺激が強い環境に長くいると覚醒が高まりすぎることがあります。気持ちの高ぶりや不安感があるときにも起こりやすくなります。
●アプローチ方法・対策
高覚醒の状態では、子どもの身体と心をゆっくり落ち着かせるアプローチが効果的です。深く包み込むような圧(深圧)、ゆっくりした前後の揺れ、深呼吸を促す遊び、スローペースのリズム運動などが覚醒を安定させます。
また、環境を整えることも大切で、音を減らしたり、照明を落としたり、視覚刺激を少なくすることで自然に落ち着きやすい空間が作れます。
覚醒レベルは固定ではなく「波」で変動する
覚醒レベルは固定されたものではなく、時間帯や環境、活動内容に応じて常に変化する“波”のようなものです。朝は低覚醒、昼間の活発な遊びで高覚醒、夕食前に疲れて低覚醒、などのように一日の中でも大きく揺れ動きます。
幼児期はこの波がとくに揺れやすく、活動の切り替えが難しい時期だからこそ、大人が子どもの覚醒状態を見ながらアプローチすることが重要です。
身体を使う遊びで覚醒を引き上げ、疲れたら落ち着く活動で沈静化させる。この調整が適切に行われることで、子どもは「集中できる状態」を自分でつくれるようになり、将来的な自己調整力(セルフレギュレーション)へとつながっていきます。
今日のおさらいQ&A3問
Q1. 覚醒レベルが低い子どもにはどんな特徴がありますか?
→反応がゆっくりし、ぼんやりしているように見えることが多く、動き出しに時間がかかります。姿勢が崩れやすく、活動に気持ちが入りにくいこともあります。前庭覚や固有覚への刺激が不足していると、低覚醒になりやすい傾向があります。
Q2. 覚醒レベルが高くなりすぎると、どのような行動が見られますか?
→興奮しやすく、ソワソワして落ち着かず、走り回るなどの多動的な行動が出やすくなります。注意が散りやすく、必要な情報に集中しづらくなることも特徴です。音や光などの刺激が多い環境では高覚醒になりやすく、気持ちの切り替えが難しくなることがあります。
Q3. 覚醒レベルを「ちょうどいい状態(最適覚醒)」に整えるために、家庭でできることはありますか?
→低覚醒にはジャンプや体幹を使う動き、押す・引くなどの活動が効果的です。高覚醒には深い圧のある関わりや、ゆっくりした揺れ、深呼吸を誘導する動きが落ち着きを生みます。子どもの覚醒状態を見ながら、動きの強弱を調整することが大切です。
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