親と子どもの関係は「遺伝」するのか?
アタッチメントの世代間伝達と、連鎖を変える力
「私は親みたいにはならない」
それでも、ふと気づくと自分の親と同じ言い方をしてしまったり、同じように感情的になってしまったりする。逆に、子ども時代に十分な安心を得られなかったのに、驚くほど温かい親になっている人もいます。
このときに浮かぶ疑問が一つあります。
親と子どもの関係は“遺伝”するのか?
もっと正確に言えば、アタッチメント(愛着)は世代を超えて伝わるのか?
心理学ではこの問題を「アタッチメントの世代間伝達」と呼び、長年にわたり研究が積み重ねられてきました。結論はシンプルですが、希望のあるものです。
似やすいが、必ず連鎖するわけではない。変えられる。
本記事では、この問いをやさしく整理し、「なぜ似るのか」「なぜ変えられるのか」を丁寧に考えていきます。
目次
- アタッチメントとは何か(ごく簡単なおさらい)
- 親子のアタッチメントはどのくらい一致するのか
- 「必ず遺伝する」わけではない理由
- 世代間伝達はどのように起きるのか
- 連鎖を変えるためにできること
- まとめ:過去は影響するが、運命ではない
1. アタッチメントとは何か(ごく簡単なおさらい)
アタッチメントとは、子どもが養育者との関係の中で形成する「心の安全基地」です。
子どもが不安なときに戻れる場所があり、気持ちを受け止めてもらえる経験が積み重なると、世界は安心できる場所になります。この感覚がその後の人間関係や自己評価の土台になります。
研究では大きく分けて次の型が知られています。
- 安定型:人を信頼しやすく、助けを求められる
- 回避型:感情を表に出さず距離をとる
- 不安型:見捨てられ不安が強い
この「型」が、親から子へどの程度引き継がれるのかが本記事の核心です。
※詳しくはこちらをどうぞ。ブログ→カテゴリー「アタッチメント」にまとめてあります。
「アタッチメント(愛着)」について—子どもの“心の土台”になる力
非認知能力は「安定したアタッチメント」から育つ

2. 親子のアタッチメントはどのくらい一致するのか
従来の研究では、親のアタッチメントの型は子どもに伝達されやすいと考えられてきました。
代表的な知見として、親子のアタッチメント型の一致率はおおよそ5~7割程度と報告されています。
つまり――
- 似ることは「よくある」
- しかし、必ず同じになるわけではない
というのが現在の理解です。
たとえば、安定型の親から安定型の子どもが育ちやすい一方で、不安型や回避型の親からも安定型の子どもが育つ例が少なくありません。
参考となる代表的研究・資料
- van IJzendoorn, M. H. (1995). Intergenerational transmission of attachment:一致率は約70%前後と報告
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7750372/ - Fraley & Shaver のレビュー(アタッチメントの世代間伝達を整理)
https://labs.psychology.illinois.edu/~rcfraley/attachment.htm
※研究ごとに数値はやや異なりますが、「おおむね5~7割の一致」が広く共有されている目安です。
3. 「必ず遺伝する」わけではない理由
では、なぜ残りの3~5割は一致しないのでしょうか。
実は、多くの調査が「親と子のアタッチメントは必ずしも一致しない」ことを示しています。子どもは、親の過去そのものをコピーするわけではありません。
一致しないケースでよく見られるのは、次のような背景です。
- 子ども時代に辛い経験があっても、別の大人との関係で安心を得た
- パートナー(配偶者)との関係が安定していた
- 自分の経験を振り返り、意識的に関わり方を変えた
つまり、子どもは「親の過去」だけでなく、「現在の環境」や「親自身の変化」にも強く影響されます。
4. 世代間伝達はどのように起きるのか
では、似てしまうのはなぜでしょうか。ここに「世代間伝達」の核心があります。
① 過去の経験が“当たり前”になる
私たちは子どもの頃に受けた扱いを、無意識の基準にします。
たとえば――
- 親が感情的だった → 「怒鳴るのが普通」だと思いやすい
- 親が冷たかった → 子どもの感情に戸惑いやすい
- 親が安心できた → 自然に寄り添いやすい
これは意図的ではなく、体に染み込んだ反応です。
しかし、ここが重要です。
“影響”はあっても、“決定”ではありません。
5. 連鎖を変えるためにできること
研究は、世代間伝達を変える鍵として次の2つを特に重視しています。
① 親が持つ「子どもへのイメージ」を見直す
同じ子どもでも、親の捉え方によって関わりは大きく変わります。
- 「扱いづらい子」ではなく「助けを求めている子」
- 「わがまま」ではなく「不安が強いだけ」
- 「手がかかる」ではなく「安心を必要としている」
この捉え方の転換が、関わりを根本から変えます。
言い換えれば、変えるべきはまず「子ども」ではなく「見る目」です。
※関連記事です。子どものなき声 それは困らせたいではなく“助けてほしい”のサイン
② 子どもの心を読み取る力(内省的機能)を育てる
もう一つの鍵が、心理学でいう内省的機能(メンタライゼーション)です。
これは簡単に言えば、
「いまこの子はどんな気持ちだろう?」
と想像しようとする力です。
特に重要なのが、マインド・マインデッドネス(肯定的な錯覚)と呼ばれる態度です。
たとえば、子どもが泣いているとき――
「ただわがまま」ではなく、
「いまは不安なんだろう」
と解釈すること。
この“温かい読み取り”がある家庭では、親子のアタッチメントが安定しやすいことが示されています。
6. 過去は影響するが、運命ではない
最後に、本記事の結論をシンプルに整理します。
- 親のアタッチメントは子どもに似やすい(約5~7割)
- しかし必ず連鎖するわけではない
- 過去の経験は影響するが、現在の関わり方で変えられる
- 鍵は「子どもの捉え方」と「心を読み取る力」
もし少しだけユーモアを添えるなら――
親子関係は「遺伝子」ではなく、「物語」です。物語は、書き直せます。
あなたが今日、子どもにどう関わるか。その一瞬一瞬が、次の世代の安心をつくっていきます。
パパママからよくある質問3つ
Q1.親が不安定なアタッチメントだった場合、子どもも必ず同じになりますか?
いいえ、必ず同じになるわけではありません。 研究では親子のアタッチメントの一致率はおおむね5〜7割程度とされ、似やすい傾向はあるものの、残りの3〜5割は一致しません。子どもは「親の過去」だけでなく、現在の養育環境、親自身の変化、パートナーとの関係、周囲の大人との関係などからも大きく影響を受けます。過去は影響するものの、運命ではありません。
Q2.世代間伝達はどのように起きるのですか?
中心的な要因は親自身の過去の経験が“当たり前の基準”になることです。子ども時代に不安や拒否を感じて育つと、子どもの気持ちに戸惑ったり距離を取りやすくなります。一方で、安心を得た経験があると、自然に共感的に関われます。ただし、この基準は固定ではなく、振り返りや学びを通して書き換えることができます。
Q3.アタッチメントの連鎖を変えるために家庭でできることは?
大きく2つが鍵です。①子どもの捉え方を見直すこと(「扱いづらい子」ではなく「安心を求めている子」と見る)。②子どもの心を読み取ろうとする姿勢(内省的機能)を大切にすることです。泣きや反抗を単なる問題行動とせず、「いまどんな気持ちだろう」と想像する“肯定的なまなざし(マインド・マインデッドネス)”が、安定したアタッチメントを育てます。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)