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【三項関係の成立】言葉と心が伸びる“決定的な瞬間”とは

【三項関係の成立】言葉と心が伸びる“決定的な瞬間”とは

幼児の発達を語るうえで欠かせない概念のひとつが 「三項関係(さんこうかんけい)」 です。
これは、生後9〜10か月頃から始まり、1歳を迎える頃にははっきり見られるようになる「心・言語・社会性」の大きな転換点です。

わが子がふとこちらを振り返りながら「見て!」と言ったり、絵本の犬を指差して私たちの顔を確認したりする──その一瞬が、子どもの心の世界を一気に広げていきます。

本記事では、幼児教育の専門知識として必須の「三項関係」について、家庭でも理解しやすく・実践に活かせるよう、丁寧に解説します。


三項関係とは

三項関係とは、
子ども・大人(他者)・対象物(出来事)の3つが
同じ方向性をもち、注意や意図を共有している状態

を指します。

たとえば、

  • 子どもが積み木を指差し、大人の顔を見て「これ!」と訴える
  • 絵本の中の犬を見て、大人に確認するように振り返る
  • 「見て!」と言って、大人にも同じものを見るよう求める

このように、子どもの注意が対象に向き、その注意を大人と共有する瞬間です。

この関係が成立すると、子どもは “自分” と “相手” と “物(出来事)” の三者を整理しながら考える力を伸ばしていきます。


二項関係とは

三項関係よりも前の段階にあるのが 二項関係(二者関係) です。

二項関係とは、
子どもと対象だけが結びついている状態
(大人の存在や視線・意図は含まれない)

を指します。

たとえば、

  • 赤ちゃんが目の前のおもちゃをじっと見る
  • ボールをつかんで振る
  • 積み木を積んで遊ぶ

この時、子どもは対象と「自分」の関係に集中しており、まだ大人や他者を巻き込んでいません。
いわば、“世界と自分” が1対1の関係でつながっている状態です。

二項関係は、認知・感覚・操作の土台であり、三項関係に移行するための重要なベースとなります。


二項関係から三項関係へ

赤ちゃんは、まず「物と自分」の二項関係から世界を理解し始めます。
その後、「大人が自分とは別の存在であり、自分と同じ対象を見ることができる」ことに気づくと、三項関係が成立していきます。

この変化にはいくつかの発達的ステップがあります。

● ステップ①:物への興味が深まる(生後6〜8か月)

手で触る・舐める・叩くなど、操作して確かめる段階です。
二項関係の充実期にあたります。

● ステップ②:大人の視線を追う(生後8〜9か月)

大人がどこを向いているかが気になり始めます。
「大人も自分と同じように何かを見る存在だ」と理解し始める重要な変化です。

● ステップ③:指差し(生後9〜10か月)

指差しが始まるのは、三項関係の完成に向けた決定的な行動です。

  • 興味共有の指差し
  • 要求の指差し
  • 確認の指差し

いずれも、大人と対象を関連づけようとする行為であり、三項関係に直結します。

● ステップ④:共同注意(1歳前後)

子どもが対象に注意を向け、その注意を大人と共有しようとする行動です。
三項関係の核となる現象であり、ここから語彙が急激に増え始めます。


三項関係が成立する年齢

一般的には、

  • 兆し:生後8〜9か月
  • 成立:生後9〜10か月〜1歳前後
  • 安定:1歳〜1歳6か月頃

と言われています。

もちろん個人差はありますが、1歳過ぎから1歳半までの時期に、
「見て!」「これ?」など、大人と対象を関連させる行動が一気に増えます。


三項関係と共同注視・共同注意

三項関係の中核にあるのが 共同注視・共同注意 です。

共同注意とは、
子どもと大人が同じ対象に注意を向けている状態
かつ
それを互いに理解していること

を指します。

つまり、ただ同じ方向を見ているだけでは不十分で、
「お互いが同じものを見ていると理解している」のが共同注意です。

この状態が増えることで、

  • 語彙の爆発(1歳後半〜)
  • 意味理解が深まる
  • 他者理解の発達
  • 心の理論の基礎形成

など、言語・社会性の発達が急速に進みます。


※共同注意に関してはこちらの記事を参考にしてください。
 「共同注意」で育つ! 幼児教育に欠かせない親子のまなざし共有

共同注意の教育効果

三項関係の重要さ

三項関係は、幼児の発達を理解するうえで決定的に重要です。
理由は主に3つあります。


① 言語発達の基盤

子どもが対象を指差し、大人が名前を返すことで、語彙が増えます。
このループが言語獲得の強力なエンジンになります。


② 心の発達の基礎

「大人も自分と同じものを見る存在だ」という理解は、
他者理解・共感・コミュニケーションの基盤となります。


③ 社会性の土台

三項関係が成立すると、子どもは「人と気持ち・興味を共有する喜び」を感じます。
これが、人と関わり協力する力の最初のステップとなります。

幼児教育の専門家の間では、三項関係の成立は
コミュニケーションの扉が開く瞬間
と呼ばれることもあります。

共同注意(wikipedia)


子どもの三項関係を成立させるために

ご家庭でも、三項関係の発達を自然に引き出すことができます。
ポイントは「子どもの興味をキャッチして、大人が合わせる」ことです。

特別な教材や高度な活動は必要ありません。
日常の遊びや声かけの中で十分に育ちます。


● ① 子どもの指差しや視線の向きを尊重する

子どもが見ている方向を大人も見る。
これだけで三項関係が生まれます。


● ② 子どもが注目した対象に言葉を添える

「わんわんだね」「赤い車だね」
語彙が自然に増えていきます。


● ③ 大人が少し“ゆっくり動く”

急に答えたり、次の行動に移ったりせず、
子どもの反応と視線を待つことで、相互作用が深まります。


● ④ 見立て遊び・絵本・ごっこ遊びを取り入れる

対象を共有したり、物に意味を与えたりする活動は
三項関係を強く後押しします。

※絵本の読み聞かせはこちらを参考にしてください。
 『スイミー』と幼児教育 〜読み聞かせと会話で育つ非認知能力〜


● ⑤ 子どもが大人を見たら笑顔で応答する

「受け止めてもらえた」という安心が、
さらに三項関係を育てます。


※さらに発展したものが「精緻化」に当たります。こちらも参考にしてください。
 子どもの力を伸ばすカギ「精緻化」とは?幼児教育との関係


二項関係を経て、1歳前後〜1歳半頃にかけて三項関係が育ち、
ここから子どもの世界は一気に豊かに広がっていきます。

子どもがふと大人を振り向いた瞬間──その小さな合図をていねいに受け止めることが、
心と言葉の発達を確実に後押ししていきます。

幼児教育と精緻化

今日のおさらいQ&A3問

Q1:三項関係とは何ですか?

→子ども・大人・対象の3つに注意が向き、同じものを共有しながら関わる状態のことです。指差しや「見て!」という行動が代表例で、言語発達や他者理解の土台となります。


Q2:三項関係はいつ頃成立しますか?

→目安は生後9〜10か月頃に兆しが見え、1歳前後で明確に成立します。1歳半頃にはより安定し、語彙の増加やコミュニケーションが一気に伸びる時期と重なります。


Q3:三項関係を家庭で育てるポイントは?

→子どもの指差しや視線の向きを大人が受け止め、「わんわんだね」「赤い車だね」など言葉を添えることが効果的です。絵本、ごっこ遊び、見立て遊びも三項関係を育てる強い味方になります。



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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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