子どもの能力は環境か遺伝か。キーワード「遺伝率」を詳しく説明
「遺伝と環境、どっちが子どもの未来をつくるの?」
この問いに答える鍵が“遺伝率”です。
先日、発達行動遺伝学についてブログ記事を書きました。
前編 幼児期の環境は“学びの抵抗”をなくす—私の経験と発達行動遺伝学
後編 幼児期こそ「環境」がものをいう 発達行動遺伝学が示すデータを見る
その中で登場し、かつキーワードにもなっているのが「遺伝率」という単語です。
「なんとなく分かったけれど、もっと噛み砕いてほしい」
「遺伝率って“決まっている割合”みたいで不安になります」
という声もあるみたいですし、私自身も結構分かりづらく、誤解もされやすい言葉だとも思っています。ただ、教育や、子どもの成長において重要な言葉でもあるので、今回改めて記事にしてみます。
遺伝率の意味を正しく理解すると、
「幼児教育がどれほど価値のあるものか」
「なぜ幼児期は“今しかない”のか」
が、よく見えてくると思います。
実は遺伝率とは、
「子どもの未来は遺伝で決まる」という話ではなく、
むしろ “だからこそ幼児教育はものすごく意味がある”
ということを裏付ける科学なのです。
【目次】
- 遺伝率とは?(まずはやさしく・正しく)
- 遺伝率が誤解される3つの理由
- 数字で見る遺伝率:身長・体重・IQ・語彙・性格
- 体重の遺伝率はじつは“身長並みに高い”?
- 遺伝 × 環境(G×E)が未来をつくる
- 遺伝の影響が大きいからこそ、幼児教育の価値は跳ね上がる
- 今日から家庭でできる「環境づくり」
- まとめ:遺伝率は“絶望の数字”ではなく“希望の数字”

【1】遺伝率とは?(まずはやさしく・正しく)
■ 遺伝率とは
「ある集団の中で見られる個人差のうち、どれだけが遺伝の違いで説明できるか」
これが正式な定義です。
例えば、身長の遺伝率が80%と聞いたら、
- みんなの身長のバラつきのうち
- 約80%は“遺伝の違い”で説明できる
- 残り20%は“環境の違い”(栄養・睡眠など)
という意味になります。
■ ここで非常に重要なポイント
遺伝率は「個人の成長が何%遺伝か」を示すものではありません。
これを誤解すると、
「じゃあうちの子は努力しても変わらない?」
という混乱が起きてしまいます。
遺伝率はあくまで “グループ全体を見たときの統計上の割合” であり、
個人の可能性を決めつけるものではありません。
また遺伝率は 集団・文化・社会・時代 によって変わります。
- 栄養状態が揃っている国 → 身長の遺伝率は高く見える
- 教育格差の大きい国 → IQの遺伝率は低く見える
つまり、
遺伝率は“環境の均質性”を映す鏡でもある のです。
■ たとえ
クラス全員に同じ先生が同じ授業をしたら、
「勉強の差」は“生まれつきの得意不得意”が目立ちますよね。
でも学校全体で授業の質に差があれば、
「勉強の差」は“学校環境の違い”で大きく変わります。
これがまさに遺伝率です。
個人が80%が遺伝の影響を受けるのではなく、(集団)の全体の80%が遺伝の影響であると説明できるということです。
【2】遺伝率が誤解される3つの理由
遺伝率は科学者でさえ誤解しがちです。
その原因はこの3つ。
① 名前のインパクトが強い
“遺伝の率”と書かれたら、
そりゃあ「ほぼ決まっているんじゃ…?」と思ってしまいます。
② 個人の話に聞こえるが、本当は“集団の統計”
遺伝率80%と聞いても、
「うちの子が80%遺伝で決まってる」とは意味しません。
③ 数字だけ見ると圧がある
遺伝率80%とか、
正直ぱっと見、
「もうどうしようもない感」がすごい。
しかし、その数字は環境が似ている社会だから高く見えているだけです。
「遺伝率とは?」(QLife 遺伝性疾患プラス編集部)
遺伝率(heritability)の定義・意味を日本語でかみ砕いて説明してくれていて、読みやすいです。
【3】数字で見る遺伝率:身長・体重・IQ・語彙・性格
| 特性 | 遺伝率 | 補足 |
|---|---|---|
| 身長 | 70〜90% | 栄養不足なら伸びません |
| 体重(BMI) | 50〜80% | 努力で変わるが遺伝影響は大きい |
| IQ | 幼児20〜40% → 成人60〜80% | 年齢で大きく変わる |
| 語彙力 | 40〜70% | 読み聞かせで大きく伸びる |
| 性格(ビッグ5) | 30〜60% | 非認知能力は環境で伸びる |
■ 遺伝も“確かに”大きく影響している
ここで正直に書きますが、
遺伝は人生に大きく関係します。
- 太りやすい体質
- 食欲の強さ
- 睡眠の深さ
- 集中しやすさ
- 落ち込みやすさ
- 感情の波
- スポーツ適性
など、「あ、この子こういうタイプなんだな」と思う部分の多くは、
実は遺伝の影響が強い領域です。
■ しかし、それでも“変えられる”部分は大きい
遺伝で筋肉がつきにくい体質でも、
「いやいや、それでも筋トレしたら変わるでしょ」
というのは事実です。
遺伝の影響は強いが、
環境で未来は大きく変わる。
この2つを同時に理解することが重要です。
体重の遺伝率は“じつは身長並みに高い”という驚きの事実
■ 体重=努力の結果では?
もちろん生活習慣は大きいですが…。
実は体重の遺伝率は50〜80%。
身長とほぼ同じレベルの高さです。
「え、努力したら痩せるでしょ!」
「食べすぎが原因でしょ!」
と思われがちですが、実際には
- 脂肪がつきやすいか
- 代謝が高いか
- 満腹を感じるタイミング
- 運動したくなる脳の仕組み
こうした“目に見えない要素”が遺伝で強く影響します。
■ でも努力で変わらないわけではない
遺伝的に太りやすい人が、
「じゃあ努力しても意味ないのか…」
と落ち込む必要はゼロです。
遺伝率が高い=
「環境差が小さいと、遺伝が目立つ」という意味。
筋肉がつきにくい体質でも、
筋トレしたらちゃんと筋肉はつきます。
(たとえ周りの人よりゆっくりだとしても。)
これは、
「遺伝はスタート地点」
「環境が進む方向とスピード」
という構造なのです。
私は30キロダイエットした経験がありますが、やはり太りやすい体の傾向にはあると思う一方、そりゃあの習慣は太るよと強く思う部分もあります。
ちなにみ遺伝ですが、父、母ともに極端に太っているということはなかったですし母がたの祖母はすらっとしている感じでした。ただ、おそらく母がたの父の方にそういう遺伝的要因があったかもしれません。
それでも、カロリーや習慣など気をつければダイエットに成功しましたし、少しだけ崩れましたが、それでも何とか維持できている状況です。
30キロ減のダイエット法を教えます!
【5】遺伝 × 環境(G×E)が未来をつくる
発達行動遺伝学の核心はここにあります。
■ 遺伝 × 環境(G×E)
→ 結果は足し算ではなく、掛け算
環境が良ければ遺伝の良さが存分に発揮され、
環境が厳しければ遺伝の力が眠ったままになります。
■ 語彙力の例
読み聞かせが多い家庭のほうが、
遺伝的な言語能力の差が“より大きく開花”することがわかっています。
読み聞かせは例えるなら、
「遺伝というエンジンに火をつけるスターター」
のようなものです。
【6】遺伝の影響が大きいからこそ
■ 幼児期は環境がもっとも強く働く時期
IQの遺伝率は、
- 幼児期:20〜40%
- 思春期:60〜80%
つまり幼児期は、
環境の影響が60〜80%を占める“大チャンスの時期”。
■ 幼児教育とは…
遺伝的なポテンシャルを最大限引き出すための“最強の環境要因”。
幼児期に育つ力は、
- 語彙
- 注意力
- 感情コントロール
- 社会性
- 好奇心
- 非認知能力(やり抜く力・自制心など)
これらは後から伸ばすのが非常に難しい領域です。
遺伝の影響が大きい領域だからこそ、
幼児期の教育は「未来の伸び方を決めるスイッチ」になります。
【7】今日から家庭でできる“幼児教育に効く環境づくり”
✔ 読み聞かせ(語彙 × 親子関係 × 想像力)
たった10分でも効果は抜群。
※絵本教育に関して
『しろいうさぎとくろいうさぎ』から考える絵本教育とシッター活用
✔ 丁寧な対話
子どもの“遺伝的な力”がもっとも発揮されるのは、親との対話です。
✔ 生活リズムを整える
睡眠は発達の土台。
体重の遺伝率が高いのと同じで、睡眠の質にも遺伝の影響があります。
だからこそ環境調整が重要。
✔ 自分で選ぶ経験を作る
「やらされる」より「自分で選ぶ」ほうが脳の発達が加速します。
✔ プロに頼る
幼児教育は専門性が高い分野です。
プロが家庭に入ると、
- 遺伝的な特徴の読み取り
- 気質に合わせた働きかけ
- 発達の偏りの早期発見
- 親の負担軽減
- 子どもの可能性の“点火”
が一気に進みます。
※子どもの気質を考えた教育はとても大事です。
子どもの気質の違いを理解 兄弟でも異なる「その子らしさ」を大切に
【8】まとめ:遺伝率は“絶望の数字”ではなく“希望の数字”
遺伝率が教えてくれる真実はこうです。
- 遺伝はスタート地点をつくる
- しかし、進む方向とスピードは環境で決まる
- 幼児期は環境の影響が最大
- 幼児教育は、子どもの未来の伸び方を決める“今しかない投資”
そして遺伝率を知ることで、
「うちの子はどう育つだろう?」という不安は、
「この子の力をどう伸ばしてあげよう?」という希望に変わります。
遺伝は未来を限定するためのものではなく、
未来を開花させるためのヒント。
そして幼児教育は、
そのヒントを最大限に活かす“最高の環境” なのです。
今日のおさらいQ&A3問
Q1. 遺伝率とはどんな意味の数字ですか?
→個人ではなく「集団の中の個人差が、どのくらい遺伝で説明できるか」を示す統計値です。個々の子どもの未来を決める数字ではありません。
Q2. 遺伝率が高い能力は、努力しても変わらないのですか?
→いいえ。遺伝率が高いのは“環境差が小さいと遺伝が目立つ”という意味です。体重・IQ・語彙力などは、環境によって大きく伸びる可能性があります。
Q3. 遺伝率を知ると、なぜ幼児教育の重要性がわかるのですか?
→幼児期は遺伝率が低く、環境の影響が圧倒的に強い時期だからです。読み聞かせ・対話・遊びなどの働きかけが、子どもの“才能の芽”を大きく育てます。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)