【後編】豪州のSNS規制法案ー日本はどうすべきか
オーストラリアが16歳未満のSNS利用を全面禁止するという強法律を成立させ、日本でも取り上げられました。
前編ではSNS規制法の成立に関して地理・歴史・社会構造という “その国ならではの背景” から整理しました。
オーストラリアの「16歳未満SNS全面禁止」をどう読むか【前編】
後編は、
「日本は何を学び、どのような対策を取るべきなのか?」
という視点で考えたいと思います。
日本でもSNSの危険性に関する世論は強まっています。
誹謗中傷、依存、いじめ、自殺関連情報、性被害など、子どもを取り巻く環境はかつてないほど深刻です。
その中で「日本も16歳未満禁止にすべきでは?」という声が出るのは、自然な流れと言えます。また、この規制の流れは今後世界的にも進んでいくと私は考えています。
私は豪州で成立したからということで、社会に議論が広まることはとてもよいことだと思います。
一方、豪州で成立したから日本でもと安易に取り入れるのも反対です。
日本では社会の土台が大きく異なり、そのままコピーできる政策ではありません。
私も子どもと接し、子どもの教育に関していろいろと考えてきた身です。だからこそ、冷静に考え、子どもたち、社会にとってどのようにすればよいか考えたいと思います。
■目次
- 日本にもSNSの危険性は広がっているが、豪州と同じ全面禁止が難しい理由
- 日本特有の社会構造──「SNSを禁止すると別の問題が起きる」
- 日本でも「何もしない」は危険な理由
- 日本が採るべき現実的で効果的な対策とは
- 家庭でできるSNS安全対策
- まとめと次回予告
1. 日本にもSNSの危険性は広がっているが、全面禁止は冷静に
日本の保護者の多くが感じているとおり、SNSの危険性は確実に深刻化しています。
誹謗中傷、自殺関連情報、依存、炎上、未成年への誘引など、見逃せない問題が急速に増えています。
そのため「日本も豪州のように全面禁止にすべきでは?」という声が上がるのは自然です。
しかし、日本と豪州では“社会の設計図”そのものが大きく異なります。
日本では、SNSを全面禁止した場合、豪州とは違う方向の深刻な問題が起こる可能性が高いのです。
たとえば日本は都市密度が非常に高く、子どものコミュニケーションの多くがオンラインを前提に組み立てられています(※この文について下記に詳しく書きます)。
学校外で友達と過ごす時間は少なく、塾や習い事で時間が細かく区切られる生活の中で、SNSは“唯一の気軽な連絡手段”になっているのが現実です。
SNSを禁止すると、「友だちとのつながりが突然切れる」ということが起こり得ます。
これは、子どもの心への負担が非常に大きく、孤立や不登校といった別の問題につながる恐れがあります。
そのため、
「危険だから禁止すればいい」という単純な構図にならないのが日本社会の特徴
と言えます。
2. SNSを禁止すると別の問題が起きる
ここに、今回のテーマの核心があります。
一見すると「都市密度が高いからオンラインが中心になる」という説明は、アメリカやオーストラリアにも当てはまるように思えます。
しかし、実際には 日本の都市社会は、子どもを“より強くオンラインに依存させる構造”を持っている のです。
世界共通の要因に加えて、日本だけが特に強く持つ特徴を整理します。
① 子どもの人間関係が「学校コミュニティ一極集中」
アメリカやオーストラリアの子どもたちは、
・宗教コミュニティ(教会など)
・地域スポーツクラブ
・ボーイスカウトや地域団体
・週末の家庭間交流(泊まり・BBQ)
など、学校以外に 複数の“つながりの場” を持っています。
ところが日本では、
・友達の9割以上が同じ学校
・週末は塾
・宗教コミュニティが存在しない
・地域活動が衰退
・近所付き合いが希薄
このように、子どもの世界が“学校だけ”に極端に集中しています。
だからSNSが禁止されると、
=学校の人間関係のほとんどが切断される
という状況になりやすい。
豪州や米国よりも「SNSの代替が少ない」点が日本の最大の特徴です。
☆私は今回の豪州と日本の比較でここが一番重要と思っています。
② 日本は家に友達を“招きにくい”文化と住環境
アメリカやオーストラリアには、
- 家庭間の行き来が活発
- 庭で遊ぶ文化
- 友人を泊める文化
- 住宅にゆとりがある
という前提があります。
週末にバーベキューを行う家族や友人の集まりを思い描く人も多いかと思います。
一方日本では、
- 集合住宅中心でスペースがない
- 騒音への配慮
- 親同士の関係が深くない
- 家庭に呼ぶ習慣があまりない
これらが重なり、
“放課後に友達と直接会うことが難しい”
という現象が、都市部ほど強まります。
つまり日本の子どもは、
オフラインで会える選択肢が極めて限られているため、SNSに頼らざるを得ない、と言えます。
③ 「夜外出の制限文化」もSNS依存を強化している
欧米のティーンは治安を見ながら夜に友達と会う文化があります。
オーストラリアも安全な地域では、夕方に友達の家へ行くのは一般的です。
一方、日本は条例などで未成年の夜間の施設への立ち入りが制限されています。
しかし日本では、
- 夜に外出=不良という文化的圧力
- 塾が夜に終わる子も多い
- 防犯意識が強い
- 親が外出を許可しない
このため、夜の時間帯の交流はすべてSNSへ移行するという現象が起きます。
これもまたSNS依存の“加速装置”になっています。
④ 通学距離が短く、子どもの関係が“地理的に閉じている”
米豪の子どもたちは、車で30分〜1時間かけて通学するケースも多く、
学校の友達と、自宅の近所の友達が別グループになることが一般的です。
しかし日本の場合、
- 多くの子が徒歩や自転車で通学
- 家も学校も生活圏がほぼ同じ
- 関係が極端に密で閉じやすい
つまり、
SNS=現実の延長線そのもの
となり、関係が非常に密に絡み合います。
この構造は日本独自のもので、SNSトラブルが“濃縮されて起きやすい”要因になります。
■まとめると
「子ども同士が直接会う・遊ぶ・距離を置く」という オフラインの調整機能が弱い
ため、
SNSがコミュニケーションの中心に“ならざるを得ない”仕組み ができあがっています。
米豪と似ているようで、実は依存を強める構造が重層的に存在する――これが日本の難しさです。
3. 日本でも「何もしない」はもっと危険
では、日本では規制を緩めておけば良いのかと言えば、答えは “NO” と言えます。
実際に、
・自殺関連ワードで検索して深夜に不安を抱える子
・SNSを通じて知り合った大人と接触するトラブル
・誹謗中傷や炎上で自己肯定感が大きく下がるケース
・SNS依存で睡眠不足や学力低下を招く問題
など、SNSの影響は心理・身体の両方で深刻化しています。
さらに、SNSは アルゴリズム(注:SNS側が投稿や広告を自動で選んで表示する仕組み)によって、刺激的な情報が優先的に表示されます。
大人でも振り回される仕組みの中で、子どもが冷静に判断するのは極めて難しいのが現実です。
そのため、
日本でも強い対策は必要という点は、豪州とは異なる背景でも共通しています。
4. 日本が採るべき“現実的で効果的な対策”とは
ここでは「全面禁止ではないが、本気で子どもを守る仕組み」を考えます。
●ペアレンタルコントロールの義務化
SNSアプリの利用に保護者の承認を必須とする方法です。
たとえばアプリを初めて起動する際に、親のスマホで承認しなければ使えないといった仕組みです。
全面禁止よりも柔軟性があり、保護者が子どもの利用状況を把握しやすくなります。
●夜間利用の自動停止
夜間は特に子どもの心理が不安定になりやすく、自殺関連情報や危険な誘引に巻き込まれやすい時間帯です。
スマホ側で深夜のSNS利用を自動的に制限する取り組みは、多くの家庭で現実的に機能する可能性があります。
●学校とSNS企業の連携を法的に義務化
日本では、学校がSNS企業に情報提供を求めてもスムーズに協力が得られないことが多くあります。
豪州のように 企業側の責任 を強化し、
・いじめ調査
・有害投稿の早期削除
・自殺関連投稿の通報連携
などを法的に義務化する仕組みが必要です。
●国内版“子ども向け安全SNS”の開発
海外サービスに依存している限り、年齢確認や投稿削除のスピードに限界があります。
国内で“安全設計のSNS”を構築することは、教育的にも長期的に大きな意味があります。
●情報リテラシー教育の義務化
フェイクニュース、アルゴリズムの仕組み、境界線の引き方などを、
小中学生の段階で教えることも重要です。
SNSを使う力ではなく、SNSに飲み込まれない力が求められています。

5. 家庭でできるSNS安全対策
制度や法律だけでは限界があります。
家庭での見守りが、子どもを守る重要な要素になるのは変わりません。
たとえば、
・スマホを使う部屋をリビングにする
・見て良い時間帯を決める
・“イヤなことがあったらすぐに相談していい”という空気を作る
・SNSで起きた出来事を日常的に話題にする
といった「小さな習慣」が、大きな事故を防ぐ力になります。
また、
「SNSを禁止したい」
「SNSを完全に自由にさせるべきではない」
という保護者の葛藤は当然のものであり、その“揺れ”こそが子どもの安全につながる姿勢です。
6. まとめ
最後に、私の意見をまとめます。
こういったニュースに関して、私たちは過剰に反応してしまう傾向にありますし、何より伝える側が(大メディア、SNSも含む)がセンセーショナルに伝えてしまいます。なぜなら伝える側は視聴数が欲しいからです。
例えば、
「チャットボットが「親殺しを子供に勧めた」 アメリカの親2組がAI企業を提訴(BBC JAPAN)」
というニュースが先日報道されました。
話題性もあり、センセーショナルなニュースでもあります。
日本でも報道され、議論を行うような番組でも取り上げられていました。
報道でも、議論でもAIの怖さや、規制について語られていました。
もちろんその中でAIの便利さについては語られていましたが、こういう事件が起こった場合「AIによって救われた命は一体どれだけいるのか」という隠れている意見、数字についてあまり語られません。その報道や議論でも触れられていませんでした。
私の経験で申し訳ありませんが、経営がうまくいかず、落ち込んだ時にAIに相談したことがあります。AIは「まずは挑戦出来る人は少ない。踏み出せる人自体がいないのです。まずは踏み出せたあなた自身をしっかり肯定してあげてください」と勇気づけてくれました。
単純だと分かっていても、AIとわかっていても勇気づけられたことが私には少なからずあります。
私だけではないと思います。AIに相談し、救われた人も少なからずいるはずです。ゆえに失われた命、救われた命、両方の視点から論じられるべきだと思っています(もちろん単純な人の数の大小のみで語られてもいけません)。
今回の件も同様です。SNSのいじめや誹謗、中傷など恐ろしさは多々報じられます。もちろん、その視点はとても重要です。しかし、だからすぐ規制に動くのではなく、改めてSNSとはどういうものか考えるべきだと私は思います。
(※ちなみにいじめ問題もかなり数字のトリックがあります。いじめは許せませんし、なくさねばなりませんが、冷静に考えるポイントや重点的に対策しなければならないこともあります。これはまた記事にします。)
今回のケースにおいて、上記の記事の【2. 日本特有の社会構造──「SNSを禁止すると別の問題が起きる」】がとても重要だと思っています。
・・・とこれについてゆっくり語ろうと思ったのですが、あまりに長くなり過ぎました。
本当は前編後編で終わるつもりだったのですが、まだまだお伝えしたいことがあります。
ということで、3回に分けます。申し訳ございません。
次回は【2. 日本特有の社会構造──「SNSを禁止すると別の問題が起きる」】ここの重要性と、私の考えをお伝えして、オーストラリアSNS規制に関しての最後の記事にします。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)