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いじめ問題を“心の構造”から考える:ジョイナー理論が示す危険信号

いじめ問題を“心の構造”から考える:ジョイナー理論が示す危険信号

いじめ問題は、いつの時代も社会の大きな課題です。
前回の記事で、私はいじめに関して【「いじめをなくすこと」「自殺を防ぐこと(子どもを守ること)」】を分けて考えるべき。
「いじめ自体をなくすことはかなり難しいが、自殺を防ぐ、子どもの心身を守ることはできる」と思っています。】
と書きました。
※前回の記事「16歳未満SNS全面禁止」に関して 日本社会といじめ


私は残念ながら人間は「いけにえ」を作ってしまう、悲しく、業の深い生物と思っています。

石器時代の人骨の中の一部には、頭蓋骨がへこんでいるものがあるそうです。
その人骨の跡は事故ではなく、明らかに人為的に暴行されたものでコミュニティの中に数体は発見されるようです。それはおそらく弱い固体、もしくは目をつけられた個体が集団のいけにえとして目を付けられ、暴行されたものとのことです。
いけにえ、村八分の文化は世界中、歴史上いくらでも見受けられます。
現在でも学校、部活、会社、警察、自衛隊など子どもだけでなく、大人の社会でもいじめは問題になることがあります。
あるいは、自分の何の利害関係のない有名人のスキャンダルに対して一斉に糾弾するという、昔と形を変えたいけにえ文化も存在しています。

私自身もいじめの対象になったり、実際あまりに理不尽な理由でいじめの対象になっている人もこの目で見てきました。

いじめ(いけにえ)が存在することは、理性的であるべき人間社会にとってきわめて野蛮なものですが、どんなに文明が発展してもなくならない。悲しいことに。

ゆえに私は数千年もいじめをなくせない人間が、いまさらいじめ(いけにえ)を「ゼロ」にするのは難しいと思っています(ただ、努力や想い、大人の責任ある行動で減らすことはできるとも思っています)。

だらこそ「いじめ自体をなくすことはかなり難しいが、自殺を防ぐ、子どもの心身を守ることはできる」がまず必要なのです。


いじめにおいてはまずは最悪の事態から子どもを守らなければなりません。
そのために今回はまず子どもがいじめによって、自身の心を追い込んでしまう過程に目を向けたいと思います。

  • なぜ同じようないじめを経験しても、深く傷つく子と、比較的立ち直れる子がいるのか
  • なぜいじめが終わったあとも、心の苦しさが長く残る子がいるのか

この違いを理解するためには、「行為としてのいじめ」だけでなく、
子どもの心の中で何が起きているのかに目を向ける必要があります。

本記事では、心理学者トーマス・ジョイナーが提唱した理論を手がかりに、
いじめが子どもの心に与える影響を「心の構造」という視点から考えていきます。
さらに、その理解
と幼児期の教育や家庭での関わりに深くつながっている点を分かりやすく整理します。

【目次】
・いじめは「出来事」ではなく「体験」として残る
・ジョイナー理論とは何か
・自殺衝動を生む「2つの心理状態」
・なぜ「3条件」とも言われるのか
・いじめが心の条件を整えてしまうとき
・幼児期の教育が果たす予防的な役割
・家庭でできる、心の土台づくり


いじめは「出来事」ではなく「体験」として残る

大人はつい、いじめを「起きた出来事」として捉えがちです。
いつ、誰が、どんなことをしたのか。
事実関係を整理し、指導し、再発を防ぐ。これは非常に重要です。

しかし、子どもにとってのいじめは、
単なる出来事ではなく、自分自身の価値や存在を揺るがす体験として心に刻まれます。

  • 仲間に入れてもらえない
  • 無視される
  • 笑われる

こうした経験は、「嫌だった」という感情だけで終わらず、
「自分はどういう存在なのか」という問いへとつながっていきます。

この“心の中の変化”を理解するために役立つのが、ジョイナー理論です。


ジョイナー理論とは何か

ジョイナー理論は正式には
**対人関係理論**と呼ばれます。

名前に「自殺」という言葉が含まれるため、
少し身構えてしまう方もいるかもしれません。

ですが、この理論の本質は
**「人が追い詰められていく心のプロセスを説明する仮説」**です。

教育や子育ての文脈では、
「どうすれば子どもがその状態に陥らずにすむのか」
を考えるための、非常に示唆に富んだ理論です。


自殺衝動を生む「2つの心理状態」

ジョイナーはまず、
**自殺衝動(=生き続けたい気持ちが極端に弱まる状態)**が生じるためには、
2つの心理状態が同時に存在する必要があると説明しました。

① 帰属感の阻害

これは簡単に言えば、
「自分の居場所がない」という感覚です。

  • 誰ともつながっていない気がする
  • どこにいても安心できない
  • 自分だけが浮いているように感じる

重要なのは、実際に一人かどうかではありません。
家族がいても、クラスにいても、
「つながっている感じがしない」と心が感じていれば、この状態は成立します。

いじめは、この帰属感を大きく揺さぶります。
仲間外れ、無視、陰口は、
子どもに「ここにいていい存在ではないのかもしれない」という感覚を与えます。


② 知覚された負担感

もう一つの心理状態が、
「自分は周囲の迷惑になっている」という思いです。

  • 心配をかけてしまう自分が悪い
  • 相談すると家族を困らせる
  • 自分がいなければ楽になるのではないか

これも事実かどうかは関係ありません。
本人がそう感じてしまうこと自体が問題なのです。

特に真面目で、周囲を気遣える子ほど、
「迷惑をかけないようにしなければ」という思いから、
この負担感を強めてしまうことがあります。


「3条件」とも言われる

「ジョイナー理論は3条件ではないのか?」
という疑問も持つ人がいるかもしれません。
確かに、ジョイナー理論は3つの要素で語られることがあります。


③ 獲得された自殺実行能力

3つ目の要素は、
**自殺実行能力**と呼ばれます。

これは、

  • 痛みや恐怖への慣れ
  • 危険な体験の積み重ね

などによって、
本来人に備わっている「死へのブレーキ」が弱まる状態を指します。

自殺の対人関係理論(PMC)※自殺衝動がどのような心理状態の組み合わせで生じるのか、3要素の構造と背景を学術的に説明しています。


重要な整理

ここで非常に大切なのは、
役割の違いを正確に理解することです。

  • ① 帰属感の阻害
  • ② 負担感

この2つがそろった状態が、**自殺衝動(欲求)**を生む

  • ③ 獲得された自殺実行能力

これは「行動に移れるかどうか」を説明する要素

つまり、
自殺衝動そのものは2つの心理状態で説明され、
3つ目は行動のリスクを説明する条件
なのです。

教育やいじめ問題を考える上では、
①と②の段階で止めることが、何より重要になります。


いじめが心の条件を整えてしまうとき

いじめが長期化・固定化すると、
子どもの心の中で次のような構造ができあがりやすくなります。

  • 「自分はここにいていい存在ではない」
  • 「自分は周囲に迷惑をかけている」

この2つが重なると、
子どもは生きる意味そのものを見失いやすくなります

これは決して「心が弱い」からではありません。
環境が、そう感じさせてしまった結果です。


幼児期の教育が果たす予防的な役割

ここで重要になるのが、幼児期の教育と家庭での関わりです。

帰属感も、負担感も、
実は幼児期の日常的な経験の積み重ねによって形づくられていきます。

帰属感を育てる関わり

  • できなくても受け入れられる
  • 比べられずに認められる
  • そのままで一緒にいられる

負担感を下げる関わり

  • 「いてくれて助かるよ」
  • 「一緒に考えよう」
  • 「あなたの存在が大切だよ」

こうした経験は、
将来困難に直面したときに、
「助けを求めてもいい」「自分は不要ではない」
と思える心の土台になります。

※アタッチメント(愛着)の考えにもつながります。
 【愛着】の発達について 親子関係の“安心の土台”をどうつくるか?

子どもの愛着形成について

家庭でできる、心の土台づくり

特別な教育をする必要はありません。

  • 結果よりも存在を認める
  • 感情を受け止める
  • 失敗しても関係が切れない安心感を伝える

これらはすべて、
**いじめ問題の“予防教育”**として大きな意味を持ちます。

幼児期からの関わりは、
子どもが将来、どんな困難に出会っても
「ここにいていい」と思える心を育てます。

それは、目に見えにくいけれど、
何よりも強い“生きる力”です。


まとめ:いじめ問題を“構造”で考える意味

いじめ対策は、起きてからの対応だけでは十分ではありません。

子どもの心の中で、

  • 帰属感が保たれているか
  • 自分を負担だと感じていないか

この構造に目を向けることで、
初めて本質的な予防と支援が可能になります。


今日のおさらいQ&A3問

Q1.ジョイナー理論で言われる「自殺衝動」は3条件で生まれるのですか?

→いいえ。自殺衝動そのものは「2つの心理状態」で説明されます。
ジョイナー理論では、
①「自分の居場所がない」という帰属感の喪失
②「自分は周囲の迷惑だ」という負担感
この2つが同時に強くなることで、自殺衝動が生じると考えられています。
3つ目の条件は「行動に移れるかどうか」を説明する要素であり、衝動の原因そのものではありません。


Q2.いじめを受けても、必ず心に深い影響が残るのでしょうか?

→必ずしもそうではありません。影響の大きさには「心の土台」が関係します。
同じようないじめを経験しても、
・安心できる居場所がある
・自分の存在価値を感じられている
こうした心の土台がある子は、回復しやすい傾向があります。
問題は、いじめによって孤立感や負担感が長期間固定化されることです。


Q3.幼児期の関わりは、いじめ問題の予防に本当に関係がありますか?

→はい。幼児期の経験は、将来の心の耐久力に大きく影響します。
幼児期に
・「できなくても受け入れてもらえる」
・「いてくれるだけで大切だと言われる」
という経験を積むことで、帰属感と自己価値感が育ちます。
これは、将来いじめや困難に直面したときに、
「助けを求めてもいい」「自分は不要ではない」と思える力につながります。


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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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