子どもの言語化について 「言葉にできない」は成長の途中
行動化から言語化へ、子どもの心が育つ道筋
子どもは生まれてすぐ言葉を使えるわけではありません。
行動で気持ちを表す段階(行動化)を経て、少しずつ言葉で表す段階(言語化)へと進んでいきます。
この「行動化から言語化への移行」は、感情コントロール・集中力・学習力、そして将来のレジリエンス(立ち直る力)にも深く関係しています。
本記事では、
- 子どもの「行動化」と「言語化」とは何か
- 言葉が果たす3つの重要な役割
- 抑制力と言葉の関係
- なぜ幼児期の教育が言語化にとって重要なのか
を、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。
〈目次〉
・子どもは「行動化」から「言語化」へ進む
・行動化とは何か
・言語化とは何か
・言葉の3つの働き
・抑制力とは何か
・抑制力と言葉が集中力・学習力を育てる
・言語化のために重要な幼児教育
子どもは「行動化」から「言語化」へ進む
乳幼児期の子どもは、まだ自分の感情や考えを言葉で整理する力が十分に育っていません。
そのため、感情がそのまま行動として表に出るという特徴があります。
これは「わざと」「しつけが足りない」という話ではなく、脳の発達段階として必然です。
人の脳は、
- 感情を生み出す部分
- 行動を抑える部分
- 言葉で考える部分
が、同時に完成するわけではありません。
特に「考えてから行動を止める」「言葉で自分を落ち着かせる」力は、幼児期から学童期にかけてゆっくり育っていきます。
だからこそ、子どもはまず
行動 → ことば → 自己コントロール
という順番で成長していくのです。
行動化とは何か
― 言葉の代わりに「体」で伝える段階 ―
行動化とは、言葉で表現できない感情や欲求を、行動で表している状態を指します。
たとえば、こんな場面です。
・おもちゃを取られて、叩いてしまう
・思い通りにならず、床に寝転んで泣く
・注意されると、物を投げる
・不安になると、急に走り回る
大人から見ると「困った行動」に見えるかもしれませんが、
子どもの内側ではこうした気持ちが渦巻いています。
「悔しい」
「不安」
「どうしていいか分からない」
「助けてほしい」
言葉がまだ追いつかないため、体が先に反応してしまう。
それが行動化です。
重要なのは、
行動化は「問題」ではなく、言語化へ向かう途中段階だということです。
言語化とは何か
― 気持ちや考えを言葉で扱えるようになること ―
言語化とは、
自分の感情・考え・欲求を、言葉で表現し、整理できるようになることです。
たとえば、
「取られて、悲しかった」
「まだ使いたかった」
「嫌だった」
「どうしたらいいか分からなかった」
このように言葉にできるようになると、行動は自然と変わっていきます。
叩く代わりに「やめて」と言える
泣き叫ぶ代わりに「手伝って」と言える
言語化は、感情を消す力ではありません。
感情を「扱える」ようにする力です。
言葉の働き①
コミュニケーションの道具としての言葉
言葉は、他者とつながるための道具です。
行動しか使えない時期、子どもは誤解されやすくなります。
しかし言葉が増えると、
「分かってもらえた」
「伝わった」
という成功体験を積み重ねられます。
この経験が、
「言葉で伝えるほうがうまくいく」
という学びにつながっていきます。
言葉の働き②
思考の道具としての言葉
言葉は、考えるための道具でもあります。
「どうして嫌だったんだろう」
「次はどうしよう」
こうした内側の対話(自己内対話)は、言葉があって初めて可能になります。
考える力は、生まれつき完成しているものではなく、
言語を通して育つ力です。
※関連する記事です。
「自分と会話できる子」は強い—幼児期に育てたい“自己内対話能力”
言葉の働き③
行動をコントロールするための言葉
「落ち着こう」
「順番を待とう」
「今は我慢」
こうした言葉を自分に向けて使えるようになることが、行動のコントロールにつながります。
これは次に説明する「抑制力」と深く関係しています。
抑制力とは何か
― 行動を一度立ち止まれる力 ―
抑制力とは、
衝動的な行動を一瞬止め、別の選択ができる力です。
重要なのは、抑制力は「我慢強さ」ではないという点です。
抑制力の土台には、言葉による思考があります。
言葉がないと、
感情 → 行動
が直結してしまいます。
言葉があると、
感情 → 言葉 → 行動
というワンクッションが生まれます。
言語発達と行動(感情・自己調整)について(PMC)
抑制力と言葉の力が、集中力・学習力を育てる
集中力とは、
「やりたい衝動」や「気が散る刺激」を抑え、
今やるべきことに意識を向け続ける力です。
これも、抑制力と言語化の力が土台になります。
さらに、
- 分からないことを言葉で質問できる
- 失敗を言葉で振り返れる
こうした力は、学習力やレジリエンス(立ち直る力)にも直結します。
うまくいかなかったとき、
「もうダメ」ではなく
「次はこうしよう」と言葉で整理できる子は、再挑戦できます。
行動の奥にある気持ちを、
大人が一緒に言葉にしてあげること。
それが、抑制力・集中力・学習力、そしてレジリエンスへとつながっていきます。
※レジリエンスについての記事です
レジリエンス─折れても、また立ち上がれる子に

言語化のために重要な幼児教育
言語化は、自然に任せれば必ず十分に育つものではありません。
環境と関わりがとても重要です。
・大人が子どもの気持ちを言葉にして返す
・結果ではなく、過程や気持ちを言語化する
・正解を急がず、考える時間を待つ
こうした関わりの積み重ねが、
「行動で表す子」から
「言葉で考え、選べる子」へと成長を支えます。
幼児教育の役割は、
知識を詰め込むことではなく、言葉と思考の土台を育てることです。
言葉は、子どもが自分の人生をハンドリングするためのハンドルです。
そのハンドルを、幼児期から少しずつ一緒に育てていきましょう。
☆言葉が増えると、親の説得力も増えます。大人にとっても、なかなか便利な力です。
今日のおさらいQ&A3問
Q1.子どもがすぐ叩いたり癇癪を起こしたりします。しつけが足りないのでしょうか?
→多くの場合、しつけ不足ではありません。子どもはまず「行動化」で気持ちを表し、言葉が育つにつれて「言語化」へ進みます。言葉がまだ追いつかない時期は、感情がそのまま行動に出やすいのが自然な発達です。行動の奥にある気持ちを、大人が言葉にしてあげることが大切です。
Q2.言語化が進むと、なぜ集中力や学習力が高まるのですか?
→言葉は考えるための道具であり、行動をコントロールする力(抑制力)の土台になります。気持ちや考えを言葉で整理できるようになると、衝動を一度止めて「今何をするか」を考えられるようになり、集中力や学び続ける力につながっていきます。
Q3.家庭でできる、言語化を育てる関わり方はありますか?
→あります。特別な教材よりも、「悔しかったんだね」「まだ使いたかったんだね」と、子どもの気持ちを言葉にして返す関わりが効果的です。正しい答えを急がず、気持ちや過程を言葉にする経験を重ねることが、行動を言葉に変える力を育てます。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)