「イヤイヤ期」はなぜ起こるの?―心の発達に欠かせない大切な時期―

子どもが突然、「イヤ!」「ダメ!」「自分で!」と主張し始めた――。
よく子育ての際に話題になるイヤイヤ期です。どう向かい合えばいいかは皆さんよくご存じのことだと思いますが、改めて発達心理学の観点からおさらいし、具体的な、心の発達によい向き合い方をご紹介します。前半と後半に分けます。本日は「イヤイヤ期とはどんな時期なのか」ということを書きます。明日は予定が変わらなければ、向かい合い方を書きます。
改めて、多くの保護者がこの時期に直面し、「どう対応すればいいの?」と悩むのが“イヤイヤ期”です。
しかし実は、この時期こそが子どもの自我が芽生え、心が急速に成長する大切なステップです。
今回は、イヤイヤ期の正体とその心理的な背景、そしてこの時期がどれほど意味のある発達段階なのかを、幼児教育の視点から丁寧に見ていきましょう。
イヤイヤ期とは?―年齢と特徴行動―
イヤイヤ期とは、一般的に1歳半から3歳ごろに見られる、子どもがなんでも「イヤ!」と拒否する時期を指します。
「ごはんイヤ」「おふろイヤ」「抱っこイヤ」「でも一人じゃできない!」――まるで矛盾だらけのように見える行動が増えるのが特徴です。
行動の例としては:
- 着替えを嫌がる
- 食事を拒否する
- 親の言うことに反抗する
- 自分でやりたがるのに、うまくいかず泣き出す
これらは、単なる“わがまま”ではありません。
自我が芽生えた証拠であり、「自分」という存在を意識し始めたサインです。
イヤイヤ期はなぜ起こるのか?
この時期の子どもは、脳の前頭前野や感情を司る扁桃体が急速に発達し、
「自分の意思を持ちたい」という感覚が生まれます。
一方で、言葉や感情のコントロールはまだ未熟なため、
思いをうまく伝えられず、「イヤ!」という一言でしか表現できないのです。
つまり、イヤイヤ期は**「伝えたいのに伝えられない」もどかしさの爆発期**と言えます。
親から見れば反抗的に見えますが、子どもの内側では「自立したい」という健全な成長欲求がうごめいているのです。
発達心理学からひもとく「イヤイヤ期」の役割(hugkum)
イヤイヤ期を発達心理学視点で整理、子どもの成長の流れとの関連に着目した小学館のサイトの記事です。詳しく分かりやすく説明してくれています。
発達心理学から見るイヤイヤ期
発達心理学者エリク・エリクソンは、この時期を**「自律性 vs 恥・疑惑」の段階と呼びました。
ここで子どもは、「自分でできた!」という体験を積み重ねることで、自律性を育みます。
逆に、親が叱責や否定的な対応ばかりをすると、「どうせ自分にはできない」という恥の感情**を持ちやすくなります。
※エリクソンについての詳しい記事です。参考にしてください。
エリクソンの発達段階理論と発達心理学、幼児教育との関係
また、ピアジェの発達段階理論ではこの頃を前操作期と呼び、
「自分中心的な思考」が特徴とされます。
他者の立場を理解することがまだ難しく、自分の欲求を中心に世界を捉えています。
この“自己中心性”は決して悪いことではなく、「自分」という存在を確立する過程として極めて重要です。
※ピアジェの記事はこちらです。下は前操作期についての記事です。
子どもは“小さな科学者” ピアジェの発達段階理論と幼児教育の関係
ピアジェの発達段階理論「前操作期」:言葉と想像力が花開く時期とは

イヤイヤ期は心の発達に大切な時期
イヤイヤ期は、いわば心の筋トレ期間です。
「思い通りにならない経験」「我慢」「失敗」などを通して、
子どもは感情をコントロールする力(自己制御)を少しずつ身につけていきます。
また、保護者が「どうしたの?」「悲しかったね」と共感的に寄り添うことで、
子どもは「自分の気持ちは受け止めてもらえる」と学び、**安心感と信頼感(アタッチメント)**を深めます。
この信頼関係が、のちの社会性や非認知能力(思いやり・自己肯定感など)の土台となるのです。
※子どもとのアタッチメントについての記事です。
教育におけるアタッチメントとは? 大切にしたい心の安全基地
「伝えられないもどかしさ」と「反抗の意味」
子どもにとって“反抗”は攻撃ではなく、自己主張の練習です。
自分の気持ちをぶつけながら、相手との関係性を確かめています。
例えば:
- 「ママがやるのイヤ!」 → 自分の力を試したい
- 「同じ服がいい!」 → 自己選択をしたい
- 「泣けばわかってもらえる?」 → 表現手段を模索している
つまり、「イヤ!」という言葉の裏には、「自分を認めてほしい」というサインが隠れているのです。
この時期に子どもの感情を丁寧に言語化してあげる(例:「○○したかったんだね」など)ことで、
情緒の発達は飛躍的に促されます。詳細は明日書きます。
イヤイヤ期は「自立」の基礎づくり
イヤイヤ期を乗り越えることは、単なる“しつけ”ではなく、自立の始まりです。
「できないことを経験する」ことが、「挑戦する力」「やり抜く力(GRIT)」へとつながります。
また、失敗しても立ち直る過程を親が見守ることで、
子どもは「自分の力で立ち上がれる」という感覚=自己効力感を養います。
これは将来的な学習意欲や社会的適応力にも直結する、極めて重要な発達基盤です。
イヤイヤ期は、「反抗期」ではなく「成長期」。
子どもが「自分でやってみたい」という自立への第一歩を踏み出す時期です。
保護者が「困った」ではなく「今、成長しているんだ」と視点を変えることで、イヤイヤ期は親子にとってかけがえのない絆づくりの時間になります。
リコポでは、イヤイヤ期の相談を365日サポート
リコポでは、「イヤイヤ期」はもちろん、「集中力をあげるのにはどうしたらいいか」など子育てに悩む保護者の方のために、LINEやメールで365日いつでも相談できる体制を整えています。
「こんな時どう対応すればいいの?」「叱りすぎたかもしれない…」
そんな小さな不安も、スタッフが理論と経験に基づき、丁寧にお応えします。
教育プランの作成ではお子さま一人ひとりの発達段階を見極め、「今のイヤイヤはどんな心のサインなのか」を分析したうえで、遊びや日常の中でできる関わり方を一緒に考えます。
幼児教育重視のベビーシッター 子育て・教育相談も重視します
次回は、【第2回】として「イヤイヤ期への具体的な対応方法と親の関わり方」について詳しく解説します。
Q&A(まとめ)
Q1. 「イヤイヤ期」って、結局“わがまま”なんでしょうか?
イヤイヤ期は「自分の意志で動きたい」という自我の芽生えによる自然な発達現象です。
子どもはまだ言葉や感情のコントロールが未発達のため、「イヤ!」という言葉でしか気持ちを伝えられません。
つまり、これは“反抗”ではなく“自己主張の練習”。
この時期に「自分の気持ちをわかってもらえた」という体験を積むことで、自己肯定感や信頼感が育まれます。
Q2. イヤイヤ期がない子もいますが、それは問題ですか?
イヤイヤの表れ方には個人差があります。
強く主張するタイプもいれば、静かに感情を溜め込むタイプの子もいます。
大切なのは「自分でやってみたい」「選びたい」という気持ちを表現できているかどうか。
もし言葉や行動での表現が少ない場合でも、絵本を選ぶ・スプーンを持つなど、小さな自己主張を見逃さずに受け止めてあげることが大切です。
Q3. 親がイライラしてしまう時、どうすればいいですか?
A. まずは「子どもが成長している証拠」と捉えることが第一歩です。
毎日の「イヤイヤ」は確かに疲れますが、それは子どもが“自分で考えよう”とする意欲の現れ。
親がすべてを抑え込むよりも、「どうしたかったの?」と気持ちを言葉にしてあげると、
子どもは「伝える」力を育てていきます。
また、リコポでは会員の方には365日LINE・メールでの相談を受け付けています。
「つい怒ってしまった」「どう対応すればいいか分からない」など、気軽にご相談ください。
専門知識を持つスタッフが、親子それぞれの気持ちに寄り添います。