「他者視点」→「思いやり」→「幸福な人生」につながる
思いやりの根っこにあるもの
子どもに「優しい子に育ってほしい」と願う親は多いでしょう。
しかし、“思いやり”は生まれつき備わっているわけではなく、発達の中でゆっくりと育まれていく力です。
そして、研究によって「共感性のある人」「思いやりのある人」「他者のことを考えられる人」の方が、幸せな人生送れるという結果が出ています。
※こちらの記事も参考にしてみてください。
「共感性」を養う幼児教育 「思いやりのある子ども」は幸福度が高い
思いやりの芽を育てるには、「他者視点」──つまり、自分とは異なる他人の気持ちや考えを想像する力が欠かせません。
今回は、心理学者ロバート・セルマンの研究をもとに、子どもがどのように他者視点を獲得し、思いやりを身につけていくのかを分かりやすく解説します。
思いやりには「他者視点」が必要
思いやりは、単なる「やさしさ」ではありません。
「相手がどう感じているか」「何を望んでいるか」を想像し、その上で行動できることが本当の思いやりです。
この“相手の立場に立って考える力”が他者視点です。
他者視点を持てるようになると、次のような変化が見られます。
- 相手の気持ちを想像して言葉を選べる
- トラブルが起きたときに話し合いで解決できる
- 感情のすれ違いを減らせる
つまり、他者視点の発達は、社会性・感情コントロール・協調性といった非認知能力の基礎でもあります。
相手のことを考えられるということは、どうすれば喜ぶか、悲しむか考えられるわけですから、いい商品をつくったり、いいサービスを考えたり、売ったりできる能力にもつながるということです。他者視点を養うことは、思いやりを持てるというにとどまらず、実際の仕事にもつながる要素になっていきます。
「役割取得能力」とは
心理学では、この他者視点を取る力を**役割取得能力**と呼びます。
これは、他人の立場や考え方を理解し、自分の思考に取り入れる力のことです。
子どもは、初めは「自分の視点」しか持てません。
しかし発達とともに、徐々に「他人にも違う考えがある」と気づき、やがて「自分と相手の両方の視点を行き来できる」ようになります。
この発達過程を研究したのが、アメリカの心理学者ロバート・セルマンです。
セルマンのホリー課題とは?
セルマンは、子どもの役割取得能力を調べるために「ホリー課題」という実験を行いました。
ホリー課題の内容
ホリーは木登りが得意な女の子で、いつも高い木に登って遊んでいました。
ある日、木登りの最中にスカートを破ってしまい、父親に「もう木登りはしないように」と約束します。
ところが、友だちの子猫が木の上に登って降りられなくなってしまいます。
ホリーは猫を助けたいけれど、「登ったら約束を破ることになる」と迷います。
- ホリーはどうすると思う?
- お父さんはどう感じるだろう?
- ホリーの友だちはどう思うだろう?
- それぞれの気持ちはどう違う?
- どんな理由でそう思ったの?
この質問への答え方を通して、子どもの他者視点の発達段階がわかるのです。
※同じような実験で三つ山課題というものもあります。こちらも参考にしてみてください。
他者視点で物事を考えられる子どもへ

ホリー課題から見える「他者視点の発達」
セルマンは、子どもの回答を分析し、他者視点の発達を5段階に分類しました。
- 0段階:自己中心的役割取得(およそ3〜5歳)
自分と他人の考えを区別できず、「相手も自分と同じように感じている」と思い込みます。
例:「ぼくがうれしいから、ママもうれしいでしょ!」 - 1段階:主観的役割取得(およそ6〜7歳)
他人が自分と違う考えを持つことに気づきますが、「それは知っている情報が違うから」と説明します。
感情の違いまではまだ理解できません。 - 2段階:二人称相応的役割取得(およそ8〜11歳)
「相手は自分をどう見ているだろう?」と想像できるようになります。
相手の立場に立ち、視点を入れ替えて考えることができます。 - 3段階:三人称役割取得(およそ12〜14歳)
自分と相手の両方の考えを第三者の目線から比較できるようになります。
トラブルや意見の違いを、冷静に調整しようとする姿勢が見られます。 - 4段階:一般化された他者としての取得(およそ15歳以降)
社会全体のルールや価値観を踏まえて判断できる段階です。
「社会」「共同体」「国」「県」などという視点からも考えるようになります。
「社会ではこう考える」「こう行動するのが公平」といった客観的な思考が育ちます。
このように、役割取得能力は「自分中心」から始まり、やがて「社会的な視点」へと広がっていきます。思いやりや協調性は、この発達の積み重ねの上にしっかりと育っていくのです。
役割取得理論(Wikipedia)
相手の内面を想像できる児童期の重要性
このように、思いやりの根底には「他者の心を想像できる力」があります。
特に、児童期(小学生頃)にかけて役割取得能力が大きく伸びるため、この時期の関わり方がとても重要です。
- 「相手はどう思ったかな?」と問いかけてみる
- 本やアニメで登場人物の気持ちを一緒に考える
- 兄弟げんかの後、「相手の立場」から話を聞いてみる
こうした日常の積み重ねが、思いやりの根を育てていきます。
思いやりのある子どもは幸せになれる
研究でも、思いやりのある子どもほど友人関係が安定し、幸福度が高いことが分かっています。
思いやりは、単に「いい子」と言われるためのものではなく、自分自身の幸福感や生きる力を支える要素です。
他者の気持ちを理解しようとすることで、
人間関係のトラブルを減らし、共感や信頼を築けるようになります。
つまり「思いやり」は、人生の豊かさに直結する非認知能力なのです。
他者視点を育てるために家庭でできること
最後に、日常生活の中で他者視点を育てる具体的な方法を紹介します。
① 絵本や物語で感情を考える
読み聞かせの後に「この子はどう感じたと思う?」と尋ねるだけで、
登場人物の気持ちを想像する練習になります。
② 親が「気持ちの言語化」をする
「ママは悲しかったけど、あなたが手伝ってくれてうれしかったよ」
このように感情を言葉にすることで、子どもは“他人の感情が存在する”ことを学びます。
③ モデルとなる思いやり行動を見せる
子どもは大人の行動を見て学びます。
「ありがとう」「どうぞ」といった日常のやり取りこそ、最高の教材です。
④ 子どもの気持ちも尊重する
他者視点を学ぶには、まず「自分の気持ちも受け止めてもらえる経験」が必要です。
安心して気持ちを話せる家庭環境が、共感性の基盤になります。
※絵本教育に関してはこちらも参考にしてみてください。
『スイミー』と幼児教育 〜読み聞かせと会話で育つ非認知能力〜
思いやりは、“教えこむ”ものではなく、“感じて育つ”もの。
そのためには、他者視点を伸ばすような関わりが不可欠です。
子どもの日常の中に、「相手の立場を想像する」きっかけを少しずつ増やしていきましょう。
リコポ幼児教育では、こうした社会性・感情の発達を大切にした幼児教育を重視したベビーシッターサービスを行っています。
一人ひとりの発達段階に合わせ、思いやりと自立を育てる「子どもの資質に合わせた個別のプラン」をご提案しています。
今日のおさらいQ&A3問
Q1. 思いやりを育てるために大切な力は?
→「他者視点(役割取得能力)」です。相手の気持ちを想像できる力が、思いやりの基礎になります。
Q2. セルマンのホリー課題とは?
→木登りが好きな少女ホリーが、父の約束と困った猫の間で迷う課題。子どもの他者理解の段階を測る心理実験です。
Q3. 家庭で他者視点を育てる方法は?
→絵本で登場人物の気持ちを話す、感情を言葉で伝える、思いやり行動を大人が見せることが効果的です。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)