算数が好きな子を育てるために(前編)
― 幼児期に大切な「数の感覚」と「身体感覚」
以前私も中学受験に向かう子どもたちを指導していましたが、中学受験を控える家庭では、「算数が苦手で困っている」という声を本当によく耳にしました。
計算はできても文章題になると混乱する。図形問題になると手が止まる。
こうした「算数が苦手」という悩みの根っこは、実はずっと前――幼児期の“数に慣れる”経験の不足にあることが多いと痛感した経験があります(これは国語の読解問題もそうですが)。
今回は、算数が得意・好きになるために、幼児期からできる大切な土台づくりについてお伝えします。
☆ちなみに今回の記事も鈴木アトム先生にタイトルの相談をしたうえで執筆しています。
※後半の記事はこちらになります(11/13)。
算数が好きな子を育てるために(後編)
算数が苦手な子にありがちなこと
算数が苦手なお子さまには、次のような特徴がよく見られます。
- 数字や図形に対して抵抗感をもっている
- 数を「記号」としてしか見ておらず、**量感覚(大きい・小さい・多い・少ない)**が弱い
- 「数える」「比較する」「並べる」「分ける」といった感覚的な経験が少ない
つまり、「数字の学習」が始まる前段階である感覚的な土台づくりが足りていないのです。
とにかく、小4から始まる「割合」は本当に子どもたちにとっての鬼門でした。〇割、%、小数、分数の感覚が身につかない子が本当に多い。人数の平均を答えなさいの問題に対して、「1,5人」「2/3人」などあり得ない回答をする子も結構いました。この子たちには数字(数学)的感覚が身についていないことを痛感しました。
※ちなみに私は主に文系を教えていましたが、たまに理系も見ていました。
机の上で数字を書いたり読んだりするだけでは、抽象的すぎて幼児にはピンときません。
数字や図形に親しむ前に、まずは身体を通して“数”を感じる経験が不可欠です。
幼児期に「数」に触れることの大切さ
「算数」は数字や記号の学問に見えますが、根本には感覚的な世界の理解があります。
たとえば「2個」と「3個」の違いは、見たり触ったりして初めて実感できます。
この“実感”を通して、「多い・少ない」「大きい・小さい」「長い・短い」といった量の比較ができるようになるのです。
幼児期に大切なのは、「算数の勉強」ではなく算数の芽を育てること。
たとえば――
- 一緒に洗濯物をたたみながら「これはパパの、これはママの」と分類する
- 買い物で「りんごを3個買おう」と数を数える
- おやつを分けるとき「半分こ」「同じ数ずつね」と等分を意識する
こうした何気ない生活の中に、「算数の種」はたくさん隠れています。
大切なのは、親がその“種”に気づいて育ててあげることなのです。
発達のピラミッドで考える「算数の土台」
算数の力を育てるには、いきなり数字や図形を教えるのではなく、まず発達のピラミッドの下段から積み上げることが大切です。
このピラミッドは、子どもの発達を「感覚」「運動」「認知」「思考」といった層に分けて考える理論です。
※発達のピラミッドに関してはこちらをご覧ください。
幼児期に大切な感覚統合と発達ピラミッド〜小中学受験にも役立つ力〜
① 固有感覚 ― 力加減・体の位置を感じる
固有感覚とは、「自分の体がどれくらいの力で動いているか」を感じ取る感覚。
たとえば「引く・押す」「持ち上げる」「振る」などの動きを通して、力加減の大小や量感を体で理解していきます。
この経験が「重い・軽い」「大きい・小さい」「多い・少ない」といった比較の感覚につながります。
つまり、算数で必要な“大小関係”や“数の順序”の基礎は、まず体の感覚から始まるのです。
おすすめの遊び:
- 重い荷物を一緒に運ぶ
- 紐で物を引っ張る・押す遊び
- ブロックを積む・崩す
これらはすべて、算数の第一歩である「量感」を体で学ぶ行為です。
※こちらも参考にしてください。
幼児教育は学びの土台づくり 基礎感覚・身体調整・高次機能を育む

② 前庭感覚 ― バランスや回転の感覚
前庭感覚は、体の傾きや回転、スピードなどを感じる感覚です。
実はこの前庭感覚は、図形や空間認識と深く関わっています。
たとえば、くるくる回る遊びを楽しむことで「回転」「角度」「方向」を感じ取ることができます。
これは後の「図形の回転問題」「展開図」などの理解に直結します。
小学校受験(いわゆる“小受”)でも、図形や模様の回転は頻出テーマです。
おすすめの遊び:
- くるくる回る・ブランコに乗る・平均台を歩く
- バランスボールに乗る
- パズルや積み木で図形をつくる
これらの活動が、のちに空間把握力を育てます。
③ 触覚 ― “数える”体験の入口
触覚は「触って感じる」感覚であり、算数の理解を助けるとても重要な入り口です。
実際にものを触って数えたり、同じ形や大きさを比べたりすることで、分配・組み合わせ・順序といった算数の基礎概念を自然に身につけます。
たとえば:
- おはじきを触って「1、2、3」と数える
- 積み木を2人で交互に積む(順序の理解)
- お菓子を等分する(分配の理解)
触覚を通した体験は、ただの数唱ではなく「数量の理解」へと発展します。
※発達のピラミッド土台にあたる感覚統合についてはこちらをご覧ください。
五感で育てる知性 幼児の感覚統合はすべての学習の土台になる
※感覚統合についての詳しい外部サイトによる説明です。
(参考までにhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK559155/?)
遊びと生活の中で“学び”をつくる
幼児期における算数の学びは、「ドリル(ペーパー)」よりも「日常の中の経験」にあります。
親子で一緒に家事や遊びをすることが、実は最良の算数教育になるのです。
たとえば:
- 洗濯物を「誰の」「どんな種類」と分ける(分類・集合)
- ボールの大きさを比べる(比較)
- おやつを等分する(分配)
- おもちゃを順番に並べる(順序)
こうした“遊びながらの学び”が、算数の抽象的な理解を支える土台になります。
私たちリコポ幼児教育では、このような発達ピラミッドに基づいたアプローチを教育プランに組み込み、自然に算数の感覚を身につけていけるよう支援しています。
☆リコポ幼児教育の取り組み
私たちは、子ども一人ひとりの発達段階・資質・興味を丁寧に見ながら、
保護者の方と一緒に「算数が好きな子」を育てるための最適な教育プランを作成します。
「数を覚えさせる」よりも、「数を感じる・体験する」。
その順序を守り、「意識された」幼児教育を行なうことで算数への苦手意識を持たず、自然に“好き”に変わっていきます。
そして、これが「算数が好きな子=得意な子」を育てていきます。
小学、中学受験を目指される方もぜひその旨をお伝えください。
抽象思考を支える“土台”を築く
「数」や「図形」は抽象的な概念です。
子どもたちは、まず“具体的なもの”に触れながら、それを少しずつ頭の中で整理・抽象化していきます。
この過程を支えるのが、先に述べた身体感覚(固有感覚・前庭感覚・触覚)です。
机の上での学びに入る前に、体験を通して抽象思考の基礎をつくること。
この順序を大切にすることで、数字や図形に苦手意識を持たず、むしろ「面白い!」と感じるようになります。
まさにこの「面白い」という感覚が大事で、これが算数好きに繋がっていきます。
次回予告:4歳からの「中段」ステップへ
次回(後編)は、発達ピラミッドの中段――認知や言語が発達してきた4歳ごろからの取り組み方について。
中学受験の算数にもつながる“空間認知”や“論理的思考”をどう育てるかをお伝えします。お楽しみに!
今日のおさらいQ&A3問
Q1.算数が苦手な子に共通して見られる特徴は?
→数字や図形に抵抗があり、「量感覚」や「比較の感覚」が育っていないことが多く、数を単なる記号として捉えてしまう傾向があります。
Q2.幼児期に“数”へ親しませるために大切なことは?
→生活の中で自然に数を感じる経験を積むこと。おやつを等分したり、洗濯物を分けたりといった日常の中に学びのチャンスがあります。
Q3.発達ピラミッドのどの感覚が算数の土台になる?
固有感覚(力加減や体の位置)、前庭感覚(バランス・回転)、触覚(触って数える体験)の3つが、抽象的な数や図形の理解を支えます。
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幼児教育は「今しかできない」貴重な教育です。
今しかできない「幼児教育」──リコポ幼児教育が選ばれる理由
ご家庭に合った最適なサポート方法を、ゆっくり一緒に考えていきましょう。
執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)
監修:鈴木アトム(子育て・教育アドバイザー)