「心を育てる」ことは「学習」につながる。心の成長と幼児期の重要性
心が育つプロセスとエリクソンの生涯発達理論
「子どもはどうやって心を育てていくのだろうか?」
この問いに深く答えてくれるのが、心理学者エリク・エリクソンの「心理社会的発達理論(生涯発達)」です。
エリクソンは、「人の成長は乳児期だけで終わらず、青年期も、成人期も、老年期でさえも続いていく」と考えました。
つまり、**人間は“生涯を通して成長できる存在”**だということです。
本記事では、
- エリクソンとはどんな人物か
- ピアジェとの違い
- エリクソンの生涯発達の考え方
- 8つの心理社会的段階の内容
- 幼児期の子育てにどう生かせるか
を分かりやすく丁寧にまとめます。
幼児教育に取り組むご家庭にとって、特に「乳児期・幼児期の心の育て方が生涯に影響する」という理解はとても重要です。
ぜひ参考にしていただければと思います。
エリクソンとは
エリク・エリクソン(1902–1994)は、発達心理学者であり精神分析家です。
フロイトの理論をベースにしながらも、人の成長を「社会」との関わりで捉えるという独自の視点で理論を発展させました。
◆ エリクソンの大きな功績
- 発達を“生涯”で捉えた最初の心理学者の一人
- 心理的発達と社会的要因を結びつけた
- 自我(アイデンティティ)の発達に焦点を当てた
- 乳幼児期〜老年期までの8段階モデルを構築した
この「社会との関わり」や「自我の成長」という観点は、近年注目されている**非認知能力(共感性・自己調整・協働・粘り強さなど)**とも深くつながっています。
※あらためて非認知能力についてはこちらをご覧ください。
「非認知能力]とは。改めて非認知能力をまとめます
エリクソンとピアジェの違い
発達心理学では、ピアジェと並んで必ず名前が挙がるのがエリクソンです。
しかし、この2人の理論は扱う領域が大きく違います。
◆ ピアジェ
- 発達の中心は「認知(知能・思考)」
- 年齢段階に応じた思考の発達を説明
- 感覚運動期・前操作期・具体的操作期などの“思考の枠組み”を示した
◆ エリクソン
- 発達の中心は「心理」「社会性」「自我」
- 信頼・自律性・自発性・勤勉性など心のテーマに焦点
- 一つ一つの段階には“乗り越えるべき課題”がある
✔ 違いを一言でいうと
- ピアジェは「考える力の発達」
- エリクソンは「心と社会性の発達」
どちらも重要ですが、子育て・幼児教育において親が日常的に活かしやすいのはエリクソンの理論です。
※ピアジェに関してはこちらをご覧ください。
子どもは“小さな科学者” ピアジェの発達段階理論と幼児教育の関係

エリクソンの生涯発達とは
エリクソンは、人の成長を以下のように考えました。
- 成長には“段階ごとに特有の心理テーマ”がある
- そのテーマをうまく乗り越えることで自我が強くなる
- 各段階での積み重ねが次の段階の土台になる
- 老年期まで成長は続く
この「段階ごとの課題」がエリクソンのいう「心理社会的危機」です。
危機とは“危険”という意味ではなく、発達のチャンスという意味です。
エリクソンの8つの心理社会的発達段階
それでは、各段階を年齢・テーマごとに説明します。
◆ 1. 乳児期(0〜1歳)
テーマ:基本的信頼 vs 不信
- 養育者が応答的・安定的に関わることで「世界は安全だ」と学ぶ
- 抱っこ・声かけ・一貫性ある対応が極めて重要
- 信頼感が育つと、のちの自立や探究心の基盤に
◆ 2. 幼児前期(1〜3歳)
テーマ:自律性 vs 恥・疑惑
- イヤイヤ期の時期
- 自分でやりたいという気持ちが強まる
- 失敗しても責められず、安全に“挑戦”できる環境が必要
- 過干渉や否定が強いと「恥の感覚」が育つ
◆ 3. 幼児期(3〜6歳)
テーマ:自発性 vs 罪悪感
- ごっこ遊び・創造的な遊びが増える
- 「やってみたい!」という自発性が爆発する時期
- 否定が強いと「自分が行動することは悪いことだ」と感じてしまう
◆ 4. 児童期(6〜12歳)
テーマ:勤勉性 vs 劣等感
- 学校生活が中心となり“できる・できない”が生まれる
- 努力する力、粘り強さ、達成感が育つ
- 他者比較に敏感になり、適切なサポートが重要
◆ 5. 青年期(12〜18歳)
テーマ:自我同一性(アイデンティティ)vs 同一性拡散
- 「自分は何者か?」を探す時期
- 進路、人間関係、価値観などが大きく揺れる
- 支える大人との対話が重要
◆ 6. 若年成人期(20代)
テーマ:親密性 vs 孤立
- 深い人間関係・パートナーシップを築く段階
- 自我が確立されているほど、健全な関係が結びやすい
◆ 7. 壮年期(30〜60代)
テーマ:生殖性 vs 停滞
- 子育て・仕事・社会貢献など、次世代への関わりが中心
- 他者への働きかけが“生きがい”を生む
◆ 8. 老年期(60歳以降)
テーマ:統合 vs 絶望
- 自分の人生を振り返り、受容・安定を得る段階
- 良い人生だったという感覚(統合)が幸福度を高める
エリクソンの心理社会的発達段階(Simply Psychology)
エリクソンの理論から分かること・意義
エリクソン理論から見えてくることは「心の発達は積み重ねである」ということです。
◆ 心が育つには段階ごとの“テーマ”がある
- 乳児期の信頼があってこそ
- 幼児期の自律・自発性が育ち
- 学齢期の勤勉性につながり
- 青年期のアイデンティティが安定する
つまり、0〜6歳の育ちがその後の人生の“心の土台”になるということです。
◆ 幼児教育との関係
幼児期は、
- 自律性
- 自発性
- 信頼感
- 探究心
- 情緒の安定
など、人としてのコア部分が大きく育つ重要な時期です。
リコポ幼児教育で大切にしている
「共感的な関わり」「挑戦できる環境」「失敗を肯定する姿勢」「ZPDへの働きかけ」
は、まさにエリクソンの理論と強く結びつき、また発達のピラミッドや、学習にもつながっていきます。
幼児期に大切な感覚統合と発達ピラミッド〜小中学受験にも役立つ力〜
◆ 保護者の方へ
もし、
- 自信がつかない
- 劣等感が強い
- 自分でやりたがらない
- 感情が不安定
などの不安があれば、ひとりで抱え込む必要はありません。
心の発達には、家庭・教育・専門家のつながりが大きな力になります。
いつでもお気軽にご相談いただければ、丁寧にサポートいたします。
今日のおさらいQ&A3問
Q1. エリクソンの生涯発達理論とはどんな考え方ですか?
→心の発達は子ども時代だけでなく、青年期・成人期・老年期まで“生涯を通して続く”という理論です。各時期には乗り越えるべきテーマ(信頼・自律・勤勉性など)があり、その積み重ねが自我の成長につながります。
Q2. ピアジェとの一番大きな違いは何ですか?
→ピアジェは「思考・認知の発達」を中心に説明したのに対し、エリクソンは「心理・社会性・自我の発達」を扱います。子育ての実践では、行動の背景となる心のテーマを理解するエリクソンの方が応用しやすい面があります。
Q3. 幼児期の子育てで特に大事なポイントは?
→乳児期の“信頼”、幼児前期の“自律”、幼児期の“自発性”が一生の土台になります。失敗しても責めない環境、挑戦できる余白、共感的な関わりが重要です。困ったときは、専門家と一緒に考えることで負担が軽くなります。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)