コールバーグの道徳性発達理論 子どもの道徳の育ち方
ハインツのジレンマから考える、子どもの「よい・わるい」の育ち方
子どもは、どうやって「していいこと」「してはいけないこと」を学んでいくのでしょうか。
ただ叱られたから覚えるのではなく、年齢とともに少しずつ、物事を考える理由そのものが変わっていきます。
今回は、心理学者コールバーグの道徳性発達理論をもとに、子どもの心の育ちをやさしく解説します。
有名なハインツのジレンマにもふれながら、幼児教育との関係、そして親が気をつけたい関わり方をお伝えします。
参考:ローレンス・コールバーグの道徳発達段階(ブリタニカ)
目次
- コールバーグの道徳性発達理論とは
- 子どもの道徳はどう育つのか
- ハインツのジレンマとは何か
- 幼児教育と道徳性の発達の関係
- 親が気をつけたい関わり方
- まとめ
1. コールバーグの道徳性発達理論とは
コールバーグは、子どもの道徳心は一気に育つのではなく、段階を追って発達していくと考えました。
ここで大事なのは、
「正しい答えを言えるか」ではなく、なぜそう考えたのか
という点です。
たとえば同じ「やってはいけない」という答えでも、
- 怒られるからダメ
- 友だちが悲しむからダメ
- みんなが安心して暮らすために必要だからダメ
では、考え方の深さが違います。
コールバーグは、この違いを3つの水準、6つの段階で説明しました。
コールバーグの発達段階をやさしく見ると
| 水準 | 段階 | 子どもの考え方の例 |
|---|---|---|
| 前慣習的水準 | 罰と服従 | 怒られるからやらない |
| 前慣習的水準 | 損得 | 自分に得ならやる |
| 慣習的水準 | よい子志向 | いい子だと思われたい |
| 慣習的水準 | 法と秩序 | ルールだから守る |
| 後慣習的水準 | 社会契約 | ルールは人のためにある |
| 後慣習的水準 | 普遍的倫理 | 人として何が正しいかで考える |
幼児期の子どもは、まだ前半の段階にいることが自然です。
ですから、「まだそんなことも分からないの?」と考える必要はありません。
むしろ、年齢に応じて少しずつ考える力を育てていくことが大切です。
※コールバーグはピアジェの発達理論を発展させています。
子どもは“小さな科学者” ピアジェの発達段階理論と幼児教育の関係

2. 子どもの道徳はどう育つのか
小さな子どもは、まず罰やごほうびを通して「よい・わるい」を理解します。
これは未熟だからではなく、発達上とても自然な姿です。
たとえば幼児なら、
「おもちゃを取ったら先生に注意された」
「順番を守ったら褒められた」
といった経験から行動を学びます。
けれど成長するにつれて、少しずつ
- 相手はどう感じるか
- みんなで生活するには何が必要か
- 本当に大事なことは何か
を考えられるようになります。
つまり、道徳性は単なる「しつけの結果」ではなく、
人との関わりの中で育つ思考の力でもあるのです。
3. ハインツのジレンマとは何か
コールバーグの理論を語るうえで有名なのが、ハインツのジレンマです。
ある女性が重い病気で、助かるかもしれない薬があります。
しかし、その薬はとても高額で、夫のハインツには買えません。
薬を作った薬剤師は値下げも後払いも断ります。
そこでハインツは、薬剤師の店に押し入って薬を盗むべきか、という問いです。
この話で大切なのは、
盗むべきか、盗んではいけないか、その答え自体ではありません。
コールバーグが見たかったのは、子どもや大人がどんな理由でそう判断するのかです。
たとえば、
「盗んだら捕まるからダメ」
なら、罰を中心に考えています。
「奥さんの命の方が大事だから盗む」
なら、より人の命や価値に目が向いています。
「法律は大切だけれど、人命を守ることの方がもっと大切ではないか」
と考えるなら、さらに深い道徳的思考に近づいています。
この話は、子どもに「正解」を言わせるためのものではありません。
人はどんな視点で善悪を考えるのかを見つめるための問いなのです。
4. 幼児教育と道徳性の発達の関係
ここで大事なのは、幼児期の子どもにいきなり難しい倫理を求めないことです。
幼児教育で目指したいのは、立派な答えを言える子にすることではなく、
少しずつ相手や周囲を考えられる土台を育てることです。
たとえば幼児期には、次のような経験が道徳性の土台になります。
気持ちを言葉にする経験
「いやだったね」
「貸してって言われてどう思った?」
こうした言葉がけは、子どもが自分や相手の気持ちに気づく助けになります。
順番やルールを体験する経験
遊びの中で待つ、譲る、守る。
こうした小さな積み重ねが、「みんなで暮らす」感覚につながります。
理由を考える経験
「ダメだからダメ」だけで終わらせず、
「どうしていけなかったと思う?」
と一緒に考えることが、思考の深まりを育てます。
幼児教育は、知識を早く教えるだけのものではありません。
人と関わりながら、自分で考える力を育てることもまた、とても大切な教育です。
5. 親が気をつけたい関わり方
コールバーグの理論を知ると、親として少し気が楽になる面があります。
なぜなら、幼い子どもが最初から深い道徳判断をできないのは、ある意味当然だからです。
だからこそ、親が気をつけたいのは、子どもに無理に“大人の正解”を言わせようとしすぎないことです。
叱るだけで終わらせない
もちろん、危険なことや人を傷つけることは止める必要があります。
ただ、そのあとに少しだけでも
「どうしていけなかったかな」
「相手はどう思ったかな」
と考える時間を持てると、学びが深まります。
罰ばかりを中心にしない
罰だけで動く子は、「見つからなければいい」と考えやすくなります。
それよりも、
「どうして大切なのか」
「なぜ相手を思いやる必要があるのか」
を少しずつ伝える方が、道徳心は育ちやすくなります。
すぐに“いい子”“悪い子”で決めつけない
子どもの行動には、まだ言葉にならない気持ちや未熟さが隠れていることがあります。
その場の行動だけで決めつけるより、
なぜそうしたのかを一緒に見ていく姿勢が大切です。
親自身が理由を言葉にする
子どもは大人の姿をよく見ています。
「人が困るからやめようね」
「順番を守るとみんなが気持ちいいね」
と、親が普段から理由を言葉にしていると、子どもも少しずつ学んでいきます。
6. まとめ
コールバーグの道徳性発達理論は、
子どもの「よい・わるい」の理解が、発達とともに少しずつ深まっていくことを教えてくれます。
最初は「怒られるからやらない」でもかまいません。
そこから少しずつ、
- 相手の気持ち
- みんなのルール
- 本当に大切なこと
へと考えが育っていけばよいのです。
ハインツのジレンマが示しているのも、正解の暗記ではなく、
なぜそう考えるのかという心の育ちです。
幼児教育の中で大切なのは、立派な答えを急がせることではありません。
遊びや日常のやりとりの中で、子どもが人の気持ちや理由を少しずつ考えられるように支えていくことです。
子どもの道徳心は、ある日突然完成するものではありません。
毎日の関わりの中で、ゆっくり育っていくものです。
親が焦らず寄り添うこと自体が、子どもの大切な学びになっていきます。
今日のおさらいQ&A3問
Q1. コールバーグの道徳性発達理論とは何ですか?
A. 子どもが「よいこと・わるいこと」をどう考えるかは、年齢や経験とともに段階的に発達していく、という理論です。大切なのは、答えそのものより「なぜそう考えたのか」という理由です。
Q2. ハインツのジレンマは、子どもに何を考えさせる話ですか?
A. 「薬を盗むのはよいか、わるいか」という正解当てではなく、命・法律・相手への思いなどをどう考えるかを見るための話です。子どもの道徳的な考え方の深まりを知る手がかりになります。
Q3. 幼児期の家庭では、どんな関わりが大切ですか?
A. 「ダメでしょ」で終わらせず、「どうしてかな?」「相手はどう感じたかな?」と一緒に考えることです。気持ちを言葉にし、理由を考える経験が、道徳性の土台を育てます。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)