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子どもは見て学ぶ バンデューラの観察学習との関係

子どもは見て学ぶ バンデューラの観察学習との関係

子どもは、言葉で教えられたことだけで育つわけではありません。
大人やきょうだい、周囲の子どもの姿を見ながら、少しずつ行動や考え方を身につけていきます。
今回は、バンデューラの社会的学習理論をもとに、「観察学習とは何か」「家庭でどんなことに気をつけたいのか」をわかりやすく整理します。


目次

  1. バンデューラとはどんな人か
  2. 社会的学習理論とは何か
  3. 観察学習とは何か
  4. 観察学習が起こる流れ
  5. 子どもに起こりやすい観察学習の具体例
  6. この理論から見えてくる、大人が気をつけたいこと
  7. 完璧でなくても大丈夫。大人の姿は少しずつ伝わる

1. バンデューラとはどんな人か

アルバート・バンデューラは、カナダ出身の心理学者で、人がどのように学ぶのかを研究した人物です。
特に有名なのが、「人は自分で経験するだけでなく、他人を見ても学ぶ」 という考え方です。

これまでの心理学では、「褒められたからその行動を続ける」「叱られたからやめる」といった、直接の経験が重視されることが多くありました。
しかしバンデューラは、人は見て学ぶ存在でもある と考えました。

子育てや幼児教育において、この視点はとても大切です。
なぜなら、子どもは毎日、大人の言葉だけでなく、表情や態度、ふるまいそのものから学んでいるからです。


2. 社会的学習理論とは何か

社会的学習理論とは、人の学びは、まわりの人との関わりの中で生まれる という考え方です。

子どもは、自分で何かをしてみて覚えるだけではありません。
親、先生、きょうだい、友だちなどの行動を見て、「こうするんだな」「これはやってはいけないんだな」と学んでいきます。

つまり学習は、次のようなものだけで成り立つわけではありません。

  • 自分が褒められた経験
  • 自分が叱られた経験
  • 自分で試して成功した経験

それに加えて、

  • 誰かが褒められるのを見る
  • 誰かが叱られるのを見る
  • 誰かのやり方を見る

こうしたことも、学びにつながります。

たとえば、兄が「ありがとう」と言って褒められているのを見た子が、自分も同じように言うようになる。
これは、まさに社会的学習理論で説明できる姿です。

※参考:社会的学習理論(wikipedia)


3. 観察学習とは何か

社会的学習理論の中心にあるのが、観察学習 です。

観察学習とは、他人の行動と、その結果を見ることで学ぶこと をいいます。

たとえば子どもは、

  • お母さんが丁寧にあいさつする様子を見て、あいさつを覚える
  • お父さんがイライラして物を強く置く様子を見て、怒り方を覚える
  • 先生が友だちに優しく声をかける様子を見て、関わり方を覚える

このように、良いことも、あまり望ましくないことも、見て学んでいきます。

ここで大切なのは、子どもは「教えられたこと」よりも、「繰り返し見たこと」から強く学ぶ場合がある ということです。

「やさしくしようね」と言われることも大事です。
けれど、それ以上に、日々の生活の中で大人がどうふるまっているかは、子どもにとって大きな教材になります。


4. 観察学習が起こる流れ

バンデューラは、観察学習が起こるためには、いくつかの段階があると考えました。
少し専門的に見えますが、内容はとてもわかりやすいです。

段階内容子どもの姿の例
注意相手の行動に目を向けるお母さんの話し方をじっと見ている
保持見たことを覚えておく「こう言っていたな」と頭に残る
再生実際にまねしてやってみる自分も同じ言い方をしてみる
動機づけやってみようと思える褒められそう、楽しそうと思う

この流れを見ると、ただ目に入っただけでは学習にならないこともわかります。
子どもが「見たい」と思える相手であること、覚えやすい形で伝わること、やってみたくなる雰囲気があることが大切です。

ここで重要なのが、代理強化 という考え方です。
これは、他の人が褒められたり叱られたりするのを見て、自分の行動が変わることです。

たとえば、友だちが片づけをして先生に褒められたのを見て、「自分もやってみよう」と思う。
反対に、乱暴な言い方をして注意されている子を見て、「あれはやめよう」と感じる。
これも観察学習のひとつです。


5. 子どもに起こりやすい観察学習の具体例

観察学習は、特別な場面だけで起こるものではありません。
毎日の生活の中に、たくさんあります。


あいさつのしかたを学ぶ

家庭で大人が自然に「おはよう」「ありがとう」「ごめんね」を使っていると、子どももその言葉を使いやすくなります。
反対に、大人があまりあいさつをしない家庭では、子どももその機会をつかみにくくなります。


怒り方を学ぶ

大人がイライラしたときに、怒鳴る、強い口調になる、物に当たる。
そうした姿も、子どもはよく見ています。
「怒ること」そのものではなく、怒ったときにどう表現するか を学んでいくのです。


人への思いやりを学ぶ

困っている人に声をかける、順番を譲る、相手の話を最後まで聞く。
こうした姿を見て、子どもは「人と関わるとはこういうことか」と少しずつ理解していきます。


スマホやテレビとの付き合い方を学ぶ

大人が「見すぎはよくないよ」と言いながら、ずっとスマホを見ていると、子どもは言葉より行動の方を受け取りやすくなります。
メディアとの距離感も、家庭の中で観察学習されやすいテーマです。


失敗したときの向き合い方を学ぶ

うまくいかなかったときに、「失敗しちゃった。でも、やり直そう」と大人が落ち着いて言えると、子どもも失敗を必要以上に怖がりにくくなります。
失敗への向き合い方まで、子どもは見て学びます。

※関連記事です。
 「子どもの努力をほめる」その一言が未来を変える


6. この理論から見えてくる、大人が気をつけたいこと

ここまで読むと、「ちゃんとしないといけない」と不安になる方もいるかもしれません。
でも、まずお伝えしたいのは、完璧な親である必要はない ということです。

大切なのは、立派に見せることではなく、子どもに見せたい姿を少しずつ増やしていくこと です。


言葉だけでなく、行動でも伝える

子どもは「話の内容」だけでなく、「その人がどうふるまっているか」を見ています。
「やさしくしようね」と言うなら、大人同士もやさしい言葉を使う。
「順番を守ろうね」と言うなら、大人も急いでいても譲る。
その積み重ねが、子どもの理解を深めます。


見せたくない姿をゼロにできなくても、その後が大事

疲れている日もあります。
つい強い口調になることもあります。
そんなときは、何もなかったことにせず、あとで「さっきは大きな声で言ってしまったね。ごめんね」と伝えることが大切です。

実はこれも、子どもにとって大切な学びです。
人は失敗しても、関係を修復できる
その姿を見せることも、立派な観察学習になります。


子どもに見せたいモデルを意識する

家庭では親が一番近いモデルですが、それだけではありません。
先生、祖父母、きょうだい、絵本の登場人物、映像の人物なども、子どもにとっては大きな手本になります。

だからこそ、「誰をよく見ているか」「どんな場面に多く触れているか」を意識することも大事です。
環境づくりは、しつけの前にできる支援でもあります。


褒め方にも気を配る

観察学習は、何を褒めるかによっても影響を受けます。
乱暴でも目立てば注目される、強く言えば通る。
そうした学びが積み重なると、望ましくない行動が強まることがあります。

一方で、やさしい声かけ、順番を守る姿、最後まで話を聞く姿をきちんと認めると、子どもは「そういう行動には意味がある」と感じやすくなります。

※関連記事です。
 「完璧じゃなくていい」─“悩める親”こそ、子どもに寄り添える人


7. 完璧でなくても大丈夫。大人の姿は少しずつ伝わる

バンデューラの社会的学習理論と観察学習は、子育てに大きなヒントを与えてくれます。

子どもは、言われたことだけでなく、見たことからも育っていきます。
だからこそ、家庭で交わされる言葉、困ったときの態度、人との関わり方は、どれも小さな教材になります。

ただし、それは「常に正しくいなければならない」という意味ではありません。
むしろ大切なのは、失敗したあとにどう立て直すか、相手とどう向き合うかを見せることです。

子どもは、大人の完璧さを見て育つのではなく、
人が人とどう関わるかを見ながら育っていく のです。

今日から急に全部変える必要はありません。
まずは、子どもに見せたい一つの姿を意識するところからで十分です。
その一歩が、子どもの学びにつながっていきます。

ほどよい母親


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