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間接的経験による学習 赤ちゃんは「見ること」からも学んでいる

間接的経験による学習 赤ちゃんは「見ること」からも学んでいる

子どもは、自分で試した経験から多くを学びます。
しかし、それだけではありません。
他者の行動を見たり、聞いたりすることからも、子どもは新しい行動や世界のしくみを学んでいます。

目次

  1. 間接的経験とは何か
  2. 子どもは他者を観察して学んでいる
  3. 自分で試すことと、見て学ぶこと
  4. 模倣は「学んでいるか」を見る大切な手がかり
  5. 学習には記憶の痕跡も関わる
  6. レイチェル・バーらの人形を使った模倣実験
  7. 育児や保育で大切にしたいこと
  8. まとめ:子どもは見て、覚えて、まねながら育っていく

間接的経験とは何か

前回の記事では、子どもが日々の経験を通して、規則性や因果関係を学んでいることをお伝えしました。

今回は、その中でも間接的経験による学習について考えていきます。

間接的経験とは、子ども自身が直接体験するのではなく、他者の経験や行動を見たり聞いたりすることで得る経験のことです。

たとえば、

大人が積み木を積むのを見る。
友だちがおもちゃを使う様子を見る。
保護者がスプーンを使う姿を見る。
きょうだいが靴を履く様子を見る。
大人が「熱いから触らないよ」と話すのを聞く。
友だちが転んで痛そうにする姿を見る。

こうした経験も、子どもにとっては大切な学びです。

自分で失敗しなくても、他者の姿を見ることで「こうすると、こうなるのか」と気づくことがあります。
自分でまだできないことでも、誰かがやっている様子を見ることで「こうやるのか」と知ることがあります。

※子どもの経験に関してはこちらもご覧ください。子どもの経験と学習 子どもは何を学んでいるのか


子どもは他者を観察して学んでいる

子どもは、大人が思っている以上に周りをよく見ています。

保護者の表情。
手の動き。
声の調子。
ものの扱い方。
友だちの遊び方。
大人同士のやり取り。

そうしたものを観察しながら、少しずつ行動を学んでいきます。

たとえば、赤ちゃんがバイバイをするようになるとき。
最初から意味を理解して手を振っているわけではないかもしれません。
大人が手を振る。
何度も見る。
まねして手を動かす。
大人が喜ぶ。
その繰り返しの中で、少しずつ「バイバイ」という行動が身についていきます。

これは、間接的経験による学習の分かりやすい例です。

子どもは、見て、まねて、反応を受け取りながら、新しい行動を獲得していきます。

子どもの学びの過程

自分で試すことと、見て学ぶこと

子どもにとって、自分自身の試行錯誤はとても大切です。

積み木を積んでみる。
崩れる。
もう一度やってみる。
高く積むにはどうしたらよいか考える。

こうした直接的経験は、子どもの理解を深めます。

一方で、他者の行動を観察することにも大きな意味があります。

自分で一つひとつ試すだけでは、時間がかかります。
しかし、他者の行動を見ることで、子どもはより多くの新しい行動に出会うことができます。

たとえば、

大人がスプーンでご飯をすくうのを見る。
友だちがブロックをつなげるのを見る。
保護者が片づける様子を見る。
きょうだいが靴を履く姿を見る。
先生が絵本をめくる動きを見る。

こうした観察を通して、子どもは「自分もやってみよう」と感じます。

つまり、直接経験は深く学ぶ力を育て、間接的経験は学びの幅を広げる力を持っています。

どちらも、子どもの成長には欠かせません。


模倣は「学んでいるか」を見る大切な手がかり

赤ちゃんが学習しているかどうかを見るとき、分かりやすい手がかりの一つが模倣です。

模倣とは、他者の行動を見て、それをまねることです。

大人が手を振ると、赤ちゃんも手を振る。
大人が拍手すると、赤ちゃんも拍手する。
大人が人形を動かすと、赤ちゃんも同じように動かそうとする。
大人が「あー」と声を出すと、赤ちゃんも声を返そうとする。

こうした行動は、単なる偶然ではなく、赤ちゃんが他者の行動を見て、それを自分の行動として再現しようとしている姿と考えられます。

もちろん、赤ちゃんの模倣は大人のように正確ではありません。
手の動きが少し違ったり、タイミングがずれたり、途中までしかできなかったりします。

それでも、「見た行動を自分でもやってみようとする」こと自体が大切です。

模倣は、赤ちゃんが他者から学んでいることを示す重要なサインです。


学習には記憶の痕跡も関わる

模倣を考えるときに、もう一つ大切なのが記憶です。

見た直後にまねをすることもあります。
しかし、少し時間がたってからまねをすることもあります。

たとえば、午前中に大人が人形を動かす様子を見た子どもが、午後になって同じように人形を動かす。
昨日見た遊び方を、今日になってやってみる。
数日前に見た手遊びを、ふとした場面でまねする。

このような姿は、見た経験が子どもの中に残っていることを示しています。

つまり、学習しているかどうかを見るには、すぐにまねをするかだけでなく、時間がたっても記憶の痕跡が見られるかも大切です。

子どもは、見たことをその場で終わらせているわけではありません。
経験を記憶し、後から行動として表すことがあります。

これを考えると、日々の大人の関わりや行動が、子どもの中に少しずつ残っていくことが分かります。


レイチェル・バーらの人形を使った模倣実験

赤ちゃんの間接的経験や模倣を考えるうえで、バーらの研究は参考になります。

レイチェル・バーらは、6〜24か月の子どもたちを対象に、人形を使った模倣の実験を行いました。

実験では、大人が人形を使って一連の動作を見せます。

たとえば、人形の手についているものを外す。
それを振って音を鳴らす。
もう一度戻す。

子どもたちは、その様子を見ます。
その後、同じ人形を渡されたときに、子どもが大人の動きをまねるかどうかを調べます。

ここで重要なのは、子どもが自分で最初から試行錯誤したわけではないということです。

まず、大人の行動を見ます。
その行動を記憶します。
そして、自分でも同じようにやってみようとします。

これは、子どもが他者の経験を観察し、それを自分の行動に取り入れていることを考える手がかりになります。

さらに、時間を置いた後にもまねが見られる場合、その子どもは見た行動をある程度記憶していたと考えられます。

つまり、模倣は「見て終わり」ではありません。
見る、覚える、再現するという学習の流れが含まれているのです。

※参考(Reserch Gate)研究では、6〜24か月の乳児を対象に、人形を使った動作を見せたあと、子どもがその行動を再現するかが調べられました。模倣は、赤ちゃんが他者の行動を観察し、記憶し、後から再現していることを考える手がかりになります。Developmental changes in deferred imitation by 6- to 24-month-old infants


育児や保育で大切にしたいこと

間接的経験による学習を考えると、育児や保育で大切にしたいことが見えてきます。

それは、子どもの前で大人がどのように行動するかです。

子どもに「片づけなさい」と言うだけでなく、大人が一緒に片づける姿を見せる。
「ありがとうと言おうね」と言うだけでなく、大人が日常の中でありがとうを伝える。
「やさしくしてね」と言うだけでなく、大人がやさしく関わる姿を見せる。
「食べようね」と言うだけでなく、大人も楽しく食事をする姿を見せる。

子どもは、言葉だけでなく、行動を見て学んでいます。

もちろん、大人がいつも完璧である必要はありません。
疲れている日もあります。
余裕がない日もあります。
うまくできない日もあります。

それでも、子どもは日々の中で、大人の姿から多くを受け取っています。

だからこそ、子どもに身につけてほしい行動は、大人が一緒にやって見せることが大切です。


まとめ:子どもは見て、覚えて、まねながら育っていく

子どもの学びには、自分で体験する直接的経験だけでなく、他者を見たり聞いたりして学ぶ間接的経験があります。

子どもは、大人や友だちの行動を観察しながら、新しい行動を知ります。
そして、その行動をまねすることで、自分の行動として取り入れていきます。

模倣は、子どもが他者から学んでいることを示す大切な手がかりです。

さらに、時間がたってからまねをする姿が見られる場合、その経験が子どもの中に記憶として残っていたと考えることもできます。

子どもは、見て、覚えて、まねながら育っています。

だからこそ、大人の行動は、子どもにとって大切な学びの材料です。

子どもに何かを伝えたいとき、言葉で教えるだけでなく、見せること。
一緒にやってみること。
できたときに受け止めること。

その積み重ねが、子どもの学びを支えていきます。


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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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