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模倣のレベルと機能 子どもは「まねる」ことで何を学んでいるのか

模倣のレベルと機能 子どもは「まねる」ことで何を学んでいるのか

子どもは、大人や友だちの行動をよく見ています。
そして、見たことをまねしながら、新しい行動を少しずつ身につけていきます。
ただし、一口に「模倣」といっても、そこにはいくつかのレベルがあります。

同じように見える「まね」でも、
ただ動きをまねているのか、
目的を分かってまねているのか、
手段と目的の両方を理解しているのか。

そこを丁寧に見ることで、子どもの学びがより深く見えてきます。

※前回の関連する間接的経験の記事です。間接的経験による学習 赤ちゃんは「見ること」からも学んでいる

目次

  1. 子どもの模倣は、ただのまねではない
  2. 模倣にも「理解のレベル」がある
  3. ミミック|動作だけをまねる
  4. 刺激強調|他者の行為を見て、対象に注目する
  5. エミュレーション|目的や結果を理解して、別の手段で達成する
  6. 真の模倣|手段と目的の両方を理解してまねる
  7. 子どもはだんだん「目的」もまねるようになる
  8. 育児や保育で大切にしたい視点
  9. まとめ:模倣は、子どもの学びを広げる力

子どもの模倣は、ただのまねではない

子どもが大人の動きをまねする姿は、日常の中でよく見られます。

手を振る。
拍手をする。
ぬいぐるみにご飯をあげる。
電話をするふりをする。
掃除をするまねをする。
絵本を読むふりをする。
保護者の口ぐせをまねる。

こうした姿を見ると、「かわいいな」と感じることが多いと思います。

でも、模倣はかわいいだけの行動ではありません。

子どもにとって模倣は、新しい行動を学ぶ大切な方法です。
自分で一つひとつ試行錯誤しなくても、他者の行動を見ることで、「こうすればいいのか」「こういう使い方があるのか」と学ぶことができます。

つまり、模倣は子どもの学習を広げる力を持っています。

※参考(PMC)乳児期の模倣研究では、赤ちゃんの模倣は一種類ではなく、行動の種類や発達時期によって異なる形で現れるとされています。乳幼児期における模倣の発達

子どもの間接的経験

模倣にも「理解のレベル」がある

ただし、子どもが何かをまねしているとき、それがすべて同じ意味を持つわけではありません。

たとえば、大人がコップで水を飲む姿を見て、子どもがコップを口に当てたとします。

このとき、子どもは何を理解しているのでしょうか。

ただ「口に当てる動き」をまねているだけかもしれません。
「コップは飲むためのもの」と少し分かっているのかもしれません。
「水を飲む」という目的まで理解しているのかもしれません。

同じような動作に見えても、理解の深さは違います。

子どもの模倣を見るときには、
「同じ動きをしたか」だけでなく、
「何を分かってまねしているのか」
を見ることが大切です。


ミミック 動作だけをまねる

まず分かりやすいのが、ミミックです。

ミミックとは、簡単に言えば、動作そのものをまねることです。

大人が手を振る。
子どもも手を振る。

大人が拍手する。
子どもも拍手する。

大人が「あー」と声を出す。
子どもも「あー」と声を出そうとする。

このような姿です。

この段階では、子どもがその行動の意味や目的を十分に理解しているとは限りません。

たとえば、「バイバイ」の意味を完全に理解していなくても、大人が手を振るのを見て、同じように手を動かすことがあります。

それでも、ミミックには大切な意味があります。

子どもが他者に注意を向け、動きを見て、自分の体で再現しようとしているからです。

これは、人と関わりながら学ぶ力の始まりです。


刺激強調 他者の行為を見て、対象に注目する

次に、刺激強調という考え方があります。

少し難しい言葉ですが、簡単に言えば、
他者の行動を見ることで、ある物や場所に注意が向きやすくなることです。

たとえば、大人が積み木を手に取って遊んでいるとします。

それを見た子どもが、
「その積み木、面白そう」
と感じて、同じ積み木を手に取る。

この場合、子どもは大人の動作を正確にまねているとは限りません。
でも、大人の行動を見たことで、積み木に注目し、自分でも試そうとしています。

これが刺激強調です。

刺激強調の大切な点は、子どもの探索が広がることです。

何も見なければ気づかなかった物に気づく。
大人が使っていることで興味を持つ。
友だちが遊んでいることで、自分もやってみたくなる。

このように、他者の行動は、子どもが新しいものに出会うきっかけになります。

自分だけで試行錯誤するよりも、他者の行為を見ることで、より早く新しい行動にたどり着くことがあります。


エミュレーション 目的や結果を理解して、別の手段で達成する

次に、エミュレーションです。

エミュレーションとは、他者の行動を見て、
その目的や結果を理解し、自分なりの方法で同じ結果を目指すことです。

たとえば、大人が棒を使って少し遠くのおもちゃを引き寄せたとします。

子どもはそれを見て、
「なるほど、あのおもちゃを近くに持ってくればいいんだ」
と理解します。

でも、子どもは棒を使わずに、手を伸ばしたり、別の道具を使ったりして、おもちゃを取ろうとするかもしれません。

この場合、子どもは大人の動作をそのまままねているわけではありません。

しかし、目的や結果は理解しています。

つまり、エミュレーションでは、
「何をしたか」よりも、
「何を達成しようとしたか」
に注目しているのです。

これは、とても大切な学びです。

子どもが目的を理解し、自分なりの方法を考えるからです。
ただ動作を写すだけでなく、結果に向かって工夫する力につながります。


真の模倣 手段と目的の両方を理解してまねる

最後に、真の模倣です。

真の模倣とは、観察した行動の手段と目的の両方を理解し、同じように行動することです。

たとえば、大人が箱のふたを開け、中からおもちゃを取り出したとします。

子どもがそれを見て、

「ふたを開ける」
「中のおもちゃを取り出す」

という手段と目的の両方を理解し、同じように行動する。

これが真の模倣に近い姿です。

ここでは、子どもは単に手の動きをまねているだけではありません。

「なぜその動作をするのか」
「何を達成するための行動なのか」
「どの手順が必要なのか」

をある程度理解していると考えられます。

真の模倣は、子どもが他者の行動を深く学ぶ力と関係しています。

道具の使い方。
生活習慣。
遊び方。
人との関わり方。

こうしたことを身につけるうえで、真の模倣は重要な役割を持っています。


子どもはだんだん「目的」もまねるようになる

子どもの模倣は、最初から完成しているわけではありません。

はじめは、動きそのものに注目することが多いかもしれません。

大人が手を振った。
自分も手を振る。

大人が拍手した。
自分も拍手する。

しかし成長とともに、子どもは少しずつ行動の目的にも注目するようになります。

「これは何のためにしているのか」
「この動きのあとに何が起きるのか」
「どうすれば同じ結果になるのか」

を感じ取りながら、まね方も変わっていきます。

たとえば、最初はスプーンを持つ動作だけをまねていた子が、やがて「食べ物をすくって口に運ぶ」という目的まで理解していきます。

最初は掃除機を動かすまねだけをしていた子が、やがて「床をきれいにする」という目的に近づいていきます。

このように、子どもの模倣は、動作から目的へと少しずつ深まっていきます。


育児や保育で大切にしたい視点

子どもの模倣を考えるとき、大人が大切にしたいのは、
「ちゃんと同じようにできたか」だけで判断しないことです。

子どもが大人と同じ動きをしていないからといって、学んでいないとは限りません。

対象に興味を持っただけかもしれません。
目的を理解して、別の方法を試しているのかもしれません。
動作の一部だけをまねているのかもしれません。
手段と目的の両方を少しずつ理解し始めているのかもしれません。

大切なのは、子どものまね方を見ることです。

何に注目しているのか。
動きだけをまねているのか。
目的に気づいているのか。
別の方法で同じ結果を目指しているのか。
大人の行動を見て、自分の行動をどう変えているのか。

こうした視点を持つと、子どもの模倣はとても豊かな学びとして見えてきます。


大人ができる関わり方

子どもの模倣を育てるために、特別なことをする必要はありません。

大切なのは、日常の中で「見せる」「一緒にやる」「待つ」ことです。

たとえば、

片づけを一緒にする。
スプーンの使い方をゆっくり見せる。
積み木の積み方を見せる。
靴を履く手順を見せる。
人形のお世話をして見せる。
「こうすると開くね」と結果を言葉にする。
子どもが自分なりに試す時間を待つ。

このような関わりが、子どもの模倣を支えます。

ここで大切なのは、すぐに正解を求めすぎないことです。

子どもは、最初は動きだけをまねるかもしれません。
別の方法で同じ結果を出そうとするかもしれません。
少しずつ、手段と目的の関係を理解していくかもしれません。

その過程を見守ることが大切です。

子どもの模倣は、まだ練習中のコピー機のようなものです。
少しずれたり、反転したり、途中までだったりします。
でも、その中でちゃんと学びは動いています。


まとめ:模倣は、子どもの学びを広げる力

子どもは、他者の行動を見て学びます。

ただし、模倣にはさまざまなレベルがあります。

動作だけをまねるミミック。
他者の行動を見て対象に注目する刺激強調。
目的や結果を理解し、別の手段で達成しようとするエミュレーション。
手段と目的の両方を理解して、同じ行動を示す真の模倣。

これらは、子どもの学びを考えるうえで大切な視点です。

同じ「まね」に見えても、子どもが何を理解しているかは違います。

だからこそ、大人は子どもの行動をよく見て、
「この子は何をまねているのかな」
「何に気づいたのかな」
「目的まで分かっているのかな」
と考えることが大切です。

模倣は、子どもが世界を学ぶための大切な力です。

子どもは、見て、試して、まねて、工夫しながら、少しずつ新しい行動を身につけていきます。


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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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