子どもは「結果」からも学んでいる。子どもの学習について
スキナーのオペラント条件付けを子育てに生かすヒント
前回は、パブロフの実験をもとに「古典的条件付け」について見てきました。
子どもは、ある音や場面と気持ちが結びつくことで、少しずつ学んでいく。そんな学習のしくみがあることがわかりました。
※前回の記事です。
子どもはどう学んでいくか。学習と条件付けについて
今回は、その続きとして、アメリカの心理学者スキナーと「オペラント条件付け」を取り上げます。
こちらは、行動したあとにどんな結果が起きるかによって、行動が増えたり減ったりする学習です。
子どもの生活に置きかえると、
「片づけをしたら褒められた」
「泣き続けたら要求が通った」
「自分でやってみたらうれしい反応が返ってきた」
といった毎日の積み重ねが、まさにこの学習につながっています。
今回は、スキナーの実験を具体的に見ながら、オペラント条件付けとは何か、パブロフとの違い、そして現代の子育てや幼児教育にどう関係するのかを、保護者向けにわかりやすく整理していきます。
目次
- 前回のパブロフとのつながり
- スキナーとはどんな人物か
- スキナーの有名な実験
- オペラント条件付けとは何か
- パブロフとスキナーの違い
- 現代の子育て・幼児教育との関係
- 親にとってこの条件づけは何を意味するのか
- まとめ
1. 前回のパブロフとのつながり
前回のパブロフでは、犬がベルの音と食べ物を結びつけ、やがてベルの音だけでよだれを出すようになる実験を見ました。
これは、刺激と反応の結びつきに注目した考え方でした。
今回のスキナーは、少し視点が違います。
注目するのは、行動のあとに起きる結果です。
たとえば子どもが、
- 片づけをしたら褒められた
- 泣いたら抱っこしてもらえた
- 自分で靴を履いたら「すごいね」と言ってもらえた
こうした経験をくり返すことで、「この行動をするとよいことが起きる」と学び、同じ行動をしやすくなります。
この仕組みを考えるのが、オペラント条件付けです。

2. スキナーとはどんな人物か
バラス・フレデリック・スキナーは、アメリカの心理学者で、行動主義心理学を代表する人物の一人です。
人の心の中を推測するよりも、実際に見える行動と、その前後にある環境との関係を丁寧に調べることを重視しました。
スキナーは、行動がどのように増えたり減ったりするのかを、実験によって細かく研究しました。
その中で有名なのが、いわゆる「スキナー箱」を使った実験です。
参考:BFスキナー(ブリタニカ)
3. スキナーの有名な実験
スキナーの実験では、ネズミやハトなどの動物が使われました。
ここでは、ネズミを使った代表的な例を見ていきます。
スキナー箱の実験
箱の中には、レバーがひとつついています。
最初、ネズミはその意味を知りません。箱の中をうろうろ歩き回ったり、たまたまレバーに触れたりします。
すると、レバーを押した瞬間にエサが出るようにしておきます。
ネズミは最初、偶然レバーを押しただけです。
けれど、「レバーを押すとエサが出る」ということが何度も起こると、しだいにネズミは自分からレバーを押す回数を増やしていくようになります。
つまり、
- 行動する
- よい結果が起こる
- その行動が増える
という流れが生まれるのです。
これが、オペラント条件付けの基本です。
もう少し具体的にいうと
この実験でネズミが学んだのは、
「レバーを見るとよだれが出る」ではありません。
そうではなく、
「レバーを押すという行動をすると、エサがもらえる」
ということです。
ここが、パブロフとの大きな違いです。
パブロフでは、ある刺激によって自然な反応が引き出されていました。
スキナーでは、自分で行動した結果として何が起きるかが重要なのです。
スモールステップで行動を育てる考え方
スキナーの研究では、最初から完璧な行動を求めるのではなく、少しずつ近い行動を強めていく方法も重視されました。
これを「シェイピング」と呼びます。
たとえばネズミにいきなり正確な動作を求めるのではなく、
- レバーの近くに行ったらエサ
- レバーに触れたらエサ
- レバーをしっかり押したらエサ
というように、段階的に行動を育てていくのです。
これは子育てでもとても大事な視点です。
子どもにいきなり完璧を求めるのではなく、「できた一歩」を見つけて育てていく考え方につながります。
参考:スキナーボックス(ブリタニカ)
4. オペラント条件付けとは何か
オペラント条件付けとは、
行動のあとに生じる結果によって、その行動が増えたり減ったりする学習のことです。
とくに大切なのは、「その結果が、その子にとってどう感じられるか」です。
大人が良いと思っていても、子どもにとってうれしくなければ行動は増えません。
逆に、大人は困ると思っている行動でも、子どもにとって何か得るものがあれば、その行動は続きやすくなります。
ここで基本を整理すると、次のようになります。
| 用語 | 意味 | 子育ての例 |
|---|---|---|
| 強化 | 行動が増えやすくなること | 自分で靴を履いたら褒められ、次もやろうとする |
| 罰 | 行動が減りやすくなること | 乱暴をしたら遊びを中断され、その行動が減る |
| 正の強化 | 心地よいものが加わって行動が増える | 片づけをしたら「助かったよ」と言われる |
| 負の強化 | 嫌なものがなくなって行動が増える | 宿題を終えたら気がかりがなくなり動きやすくなる |
ここで少しややこしいのが、「負の強化」は罰ではない、という点です。
負の強化は、嫌なものがなくなることで行動が増えることです。
名前は少し怖そうですが、意味は「減点」ではありません。
5. パブロフとスキナーの違い
この二人は、どちらも「学習」を考えた重要な人物ですが、見ているものが違います。
| 観点 | パブロフ | スキナー |
|---|---|---|
| 注目したこと | 刺激と反応の結びつき | 行動と結果の結びつき |
| 有名な実験 | ベルと食べ物で犬がよだれを出す | レバーを押すとエサが出るネズミ |
| 学習の中心 | ある刺激で反応が起こるようになる | 行動の結果で行動が増減する |
| 子育てでのイメージ | 音や場面と気持ちが結びつく | 褒められる・通る・止められることで行動が変わる |
わかりやすく言えば、
パブロフは「何と何が結びつくか」を見ました。
スキナーは「何をすると、どんな結果になるか」を見ました。
どちらも、子どもの学習を理解するうえで大切です。
6. 現代の子育て・幼児教育との関係
オペラント条件付けは、家庭でも園でも、とても身近に起きています。
良い行動は、見つけてもらえると育ちやすい
子どもが自分でやってみたことに対して、
- 「できたね」
- 「自分でやろうとしたんだね」
- 「助かったよ」
といった反応が返ってくると、その行動は続きやすくなります。
ここで大切なのは、結果だけでなく、行動そのものや努力の過程を見ることです。
たとえば、全部きれいに片づけられなくても、「ひとつ運べた」「やってみようとした」ことを受け止めると、次の行動につながりやすくなります。
困った行動も、結果によって強まることがある
一方で、親として困る行動も、知らないうちに強化してしまうことがあります。
たとえば、子どもがスーパーで泣いてお菓子を欲しがったとします。
毎回、泣き止ませるためにお菓子を渡していると、子どもは
「泣くとお菓子がもらえる」
と学ぶかもしれません。
この場合、親は困っているのに、結果としては「泣く」という行動を強めてしまっている可能性があります。
もちろん、現実の子育ては実験室のようにはいきません。
疲れている日も、人前で焦る日もあります。
それでも、「この行動のあとに、何が起きているかな」と考える視点を持つだけで、見え方がずいぶん変わります。
幼児教育では「できた」経験の積み重ねが大事
幼児教育の場でも、オペラント条件付けの考え方はよく生きています。
特に大切なのは、子どもが自分から動いたときに、その行動が育つような関わりをすることです。
- 座れたら認める
- あいさつできたら笑顔で返す
- 順番を待てたらしっかり言葉にして伝える
- 挑戦したら結果だけでなく姿勢を認める
こうした関わりは、子どもの「やってみよう」を育てます。
※関連記事です。
【子どものやる気を引き出す方法】「動機づけ」の正体と育て方
7. 親にとってこの条件づけは何を意味するのか
オペラント条件付けが教えてくれるのは、
子どもの行動は、気合いや性格だけで決まるのではなく、その行動のあとに何が起きているかによっても変わる
ということです。
これは、親にとってとても大きな意味があります。
1. 褒めることは「甘やかし」ではない
適切なタイミングで行動を認めることは、甘やかしではありません。
子どもに「こうするとよいんだ」と伝える、大切な学習の手がかりです。
ただし、何でも大げさに褒めればよいわけではありません。
大切なのは、その子が実際にした行動を具体的に見ることです。
たとえば、
- 「えらいね」だけで終わるより
- 「自分で靴をそろえたね」
- 「最後まで座って食べられたね」
のように伝えるほうが、子どもは何がよかったのかを理解しやすくなります。
2. 叱るだけでは、望ましい行動は育ちにくい
困った行動を減らしたいとき、大人はつい「やめなさい」に意識が向きます。
もちろん危険な場面では必要です。
ただ、それだけでは「ではどうしたらよいか」がわからないことも多いです。
たとえば、走り回る子に「走らない!」と言うだけでなく、
「ここでは歩こうね」
「お母さんの横を歩けたね」
と、望ましい行動を示して強めることが大切です。
3. 子どもは「注目」でも学ぶ
子どもにとって、親の注目はとても大きな意味を持ちます。
そのため、よい行動のときには気づかれず、困った行動のときだけ強く反応されると、結果的に困った行動のほうが目立ちやすくなることがあります。
だからこそ、静かに遊べたとき、待てたとき、自分でやろうとしたときなど、
問題が起きていない時間の行動にも目を向けることが大切です。
4. いきなり完璧を求めない
スキナーの実験から学べることの一つは、行動は一歩ずつ育つということです。
トイレ、食事、あいさつ、片づけ、着替え。
どれも最初から完璧にできるわけではありません。
「今日はここまでできた」
「昨日より一歩進んだ」
という見方が、子どもの学びを支えます。
8. まとめ
前回のパブロフでは、刺激と反応の結びつきによる学習を見ました。
今回のスキナーでは、行動のあとに起こる結果によって、行動そのものが変わっていく学習を見てきました。
オペラント条件付けは、特別な実験室の中だけの話ではありません。
家庭でも、園でも、毎日の生活の中で起きています。
子どもは、
- どんな行動をすると
- どんな反応が返ってきて
- その結果どう感じたか
を通して、少しずつ行動を形づくっていきます。
だからこそ、親や大人の関わり方はとても大切です。
困った行動をただ止めるだけでなく、育てたい行動を見つけて認めること。
完璧ではなく、一歩を支えること。
その積み重ねが、子どもの安心感や意欲、自分でやってみる力につながっていきます。
前回のパブロフが「結びつき」を教えてくれたとすれば、今回のスキナーは「結果の大切さ」を教えてくれます。
子どもの行動を見るときに、ぜひ
「この子は何を学んでいるのだろう」
という視点を持ってみてください。
見えてくるものが、きっと少し変わってくるはずです。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)