「集中しなさい」の前に必要なこと――トランポリンと子どもの集中力
昨日、YouTubeチャンネル「アトム先生の幼児教育教室」にて「子どもの集中力アップにはトランポリンが有効」というテーマの動画を公開しました。
今回の動画も、私たちが大切にしている**「発達のピラミッド」**と深く関係する内容でした。
サムネイルを見て、
「集中力をつけたいのに、なぜトランポリン?」
と思った方もいらっしゃったかもしれません。
しかし、発達のピラミッドという視点から考えていくと、その理由が見えてきます。
集中力だけを直接伸ばそうとしない
子どもがなかなか集中してくれない。
椅子に座っても、すぐに立ち上がってしまう。
そんなとき、私たち大人はつい、
「静かにしなさい」
「ちゃんと座って」
「集中しなさい」
と言ってしまいがちです。
もちろん、ルールを伝えることは必要です。
しかし、何度言っても難しい場合には、単純に「集中する気がない」「言うことを聞かない」と考えるだけでは十分ではありません。
発達のピラミッドで考えると、集中力や学習といった力は、ピラミッドの上の方に位置しています。
その下には、身体を安定させたり、自分の身体の状態を感じたりするためのさまざまな感覚があります。
その代表的なものが、前庭覚や固有覚です。
前庭覚は、身体の傾きや動き、バランスなどを感じる感覚。
固有覚は、筋肉や関節からの情報によって、自分の身体がどのような状態にあるのかを感じる感覚です。
こうした身体の土台があって、その上に姿勢を保つことや、落ち着いて座ること、さらに集中して学習することが積み重なっていきます。
そう考えると、
「集中力を育てるために、まず身体を動かす」
というアトム先生の話も、決して不思議ではなくなります。
そこで登場するのが、トランポリンです。

なぜトランポリンなのか
トランポリンでは、跳ぶ、着地する、姿勢を立て直すという動きを繰り返します。
身体の上下運動やバランスの変化を感じながら、自分の身体をコントロールしなければなりません。
こうした運動を通して、前庭覚や固有覚などにさまざまな刺激が入ります。
つまり、いきなり「椅子に座って集中する」ことを求めるのではなく、その前に必要となる身体の感覚や使い方に働きかけていくのです。
前回の「発達のピラミッド」の動画を見ていただいた方には、
「だからトランポリンだったのか」
と、今回のサムネイルの謎も解けたのではないでしょうか。
トランポリンがなくても家庭でできる
もちろん、
「うちにはトランポリンなんてありません」
というご家庭も多いと思います。
動画の中では、アトム先生がその点についてもしっかり補足していました。
トランポリンがなくても、敷布団やクッションなどを利用して身体を動かす方法もあるということです。
大切なのは、「トランポリンという道具そのもの」ではありません。
子どもが身体を使い、必要な感覚を得られるような遊びや経験をつくることです。
特別な教材や高価な道具がなければできない教育ではなく、家庭にあるものでも工夫できる。
今回の動画は、そうした意味でも保護者の方が実践しやすい内容だったと思います。
「椅子に座る」にも力が必要
今回、特に印象的だったのが、
椅子に座るためにも「力」が必要である
という視点です。
私たち大人にとっては、椅子に座ることはあまりにも当たり前なので、
「どうして座っていられないの?」
と思ってしまいます。
しかし、安定して座り続けるためには、姿勢を維持し、自分の身体をコントロールし、周囲から入ってくる刺激の中から必要なものに注意を向ける必要があります。
子どもにとって「静かに座る」というのは、実はいくつもの力を同時に使う行動なのです。
その土台がまだ十分に整っていない子どもに、
「もっと長く座りなさい」
と繰り返しても、なかなかうまくいかないことがあります。
これは、発達のピラミッドの頂点だけを見て、そこだけを何とかしようとしている状態ともいえます。
「集中できない」という結果だけを見るのではなく、
なぜ集中することが難しいのか。
なぜ座っていることが難しいのか。
その一段下、さらにその下へと原因を探していく。
今回のアトム先生の視点は、とても面白く、説得力のあるものだったと思います。
〇前回の発達のピラミッドの動画→【今しかできない幼児教育】大事なのは「学習」ではなく「学習までの道のり」 勉強・受験につながる教育理論【発達のピラミッド】とは何か?
家庭でできる方法まで分かりやすく紹介
動画ではトランポリンだけでなく、子どもの集中力を育てる方法や、落ち着いて椅子に座れるようになるための関わり方についても紹介しています。
単に、
「運動させればいい」
「たくさん遊ばせればいい」
という話ではありません。
なぜその方法が必要なのかを発達の理論から説明したうえで、家庭では何ができるのかまで具体的に伝えています。
私は、ここが今回の動画の大きな魅力だと感じました。
理論だけでは、実際の子育てでどう使えばよいのか分かりません。
反対に、方法だけを知っても、「なぜそれをするのか」が分からなければ、本当にその子に必要なのか判断することが難しくなります。
理論を知り、そのうえで実践する。
今回の動画は、その両方がしっかりと含まれた内容だったと思います。
「できない子」ではなく、「何が必要な子なのか」
子どもが集中できないと、大人も心配になります。
「このままで学校の授業を受けられるのかな」
「勉強についていけるのかな」
と不安になることもあるでしょう。
そして、何度言ってもできないと、大人にも余裕がなくなります。
しかし、
「この子は集中力がない」
で終わらせるのではなく、
「集中するために、今この子にはどんな力が必要なのだろう」
と考えてみる。
それだけでも、子どもの見え方は少し変わるのではないでしょうか。
発達のピラミッドは、「できないこと」を責めるためのものではありません。
その子どもが今どの段階にいて、次にどのような経験を積むとよいのかを考えるためのものです。
今回の動画を通して、その考え方がより具体的に伝わったように感じています。
「集中してくれない」
「椅子に座ってくれない」
という悩みを持つ保護者の方には、ぜひ一度ご覧いただきたい動画です。
そして、動画を見て、
「うちの子の場合はどう考えたらいい?」
「こんなときはどんな遊びがいい?」
など、気になることがありましたら、ぜひYouTubeのコメント欄やお問い合わせからお聞かせください。
皆さまからいただく疑問や悩みも、これからの動画づくりに生かしていきたいと思います。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)